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ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第123回 秋の味覚クリ:続・クリの渋皮剥皮性

  




サイト案内




□□■ 果物&健康NEWS Vol.123 ■□□
   ■   2006年10月13日(金)   ■


みなさん、こんにちは!
今週は、「秋の味覚クリ」の特集です。
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毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp
果樹農業は未来を拓く! Do! our BEST.


:::■ メニュー ■::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ◇ 品種紹介:簡単に渋皮むけるクリ品種「ぽろたん」
 ◇ 今週のレシピ:クリ
 ◇ 続・クリの渋皮剥皮性
 ◇ くだもの健康豆知識:クリご飯
 ◇ 文学の中の果物:奥の細道(松尾芭蕉)
 ◇ 文献紹介:フルーツジュースは体重と関連しない
 ◇ 果物の歌:里の秋
 ◇ 読者から
 ◇ テレビ番組のお知らせ
 ◇ イベントのお知らせ
 ◆ お友達、同僚の方々に御紹介下さい
 ◇ 編集部より



□ 品種紹介:簡単に渋皮むけるクリ品種「ぽろたん」

 渋皮がぽろっとむける新品種「ぽろたん」が農研機構果樹研究所で育成されました。クリの実を加熱したあと、渋皮がポロンと簡単にむけることから、「ぽろたん」と名付けられました。甘栗のように渋皮がむきやすいニホングリの新品種の育成は画期的な成果です。

 ただし、これから苗木として販売されるので、実がなるまでに少し時間がかかります。クリご飯や菓子の具など秋の味覚を手軽に楽しめるようになるまでは、早くて5-8年後となります。

 渋皮が簡単にむける画期的なニホングリ新品種「ぽろたん」のプレスリリースは下記のサイトにあります。
http://www.fruit.affrc.go.jp/announcements/kisya/
h18-10-04/porotan.pdf





□ 今週のレシピ:クリ

○ 高温の食用油に浸漬する効率的なクリの渋皮剥皮法

 加熱したコーンオイル中にクリ果実を短時間浸漬処理する渋皮剥皮法が開発されました。この方法は従来の剥皮法と比較して短時間の処理で剥皮ができるため様々な分野への利用が可能です。

下記のサイトに剥皮法が記載されています。
http://www.fruit.affrc.go.jp/seika/2001/nifts01-05.html

下記のサイトで剥皮できたクリの写真を見ることができます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/seika/2001/images/nifts01053.jpg




□ 続・クリの渋皮剥皮性

○読者より:クリの渋皮剥皮性(果物&健康NEWS vol.29 )の続編を期待しています。(大阪:S)

 メルマガのご愛読ありがとうございます。前回紹介したニホングリの渋皮が何故剥けないかのメカニズムをもう一度簡単に概説します。

 未熟なニホングリの渋皮剥皮性はチュウゴクグリと同じで簡単に剥皮することが出来ます。しかし、収穫期が近づいてくると渋皮でポリフェノールの生合成が盛んになり、渋皮の細胞内にポリフェノールが蓄積していきます。このポリフェノールが渋皮と果肉を接着する物質カスタヘジョンです。そして、収穫期になると渋皮から水分が急速に失われるのに伴って渋皮細胞が崩壊するため、接着物質カスタヘジョンが細胞の外へ出て渋皮と果肉を接着します。ニホングリは接着物質カスタヘジョンが多いため渋皮剥皮性が困難となり、チュウゴクグリは少ないため剥皮が容易となります。

 *

 今回は、渋皮と果肉の接着に関する別の面白い現象を紹介します。チュウゴクグリの雌花にチュウゴクグリの花粉を交配すると渋皮は簡単に剥皮できるのは皆さんのご存じの通りです。ところが、ニホングリの花粉を交配すると渋皮剥皮性がやや困難になります。

 一方、ニホングリの雌花にニホングリの花粉を交配すると、もちろん渋皮の剥皮は極めて困難ですが、チュウゴクグリの花粉を交配すると渋皮剥皮性がやや改善されます。

 渋皮剥皮の容易さの順番は、1)チュウゴクグリ×チュウゴクグリ、2)チュウゴクグリ×ニホングリ、3)ニホングリ×チュウゴクグリ、4)ニホングリ×ニホングリです。

 この現象が不思議な理由を述べる前に渋皮の組織について説明します。私たちが食べる部分(果肉:胚)は両親の遺伝子を半分づつ受け継いだ子供ですが、渋皮は母親そのもの、つまり渋皮の遺伝子は母親の遺伝子そのものなのです。普通、母親の細胞内の生合成系は、父親の影響は受けません。

 ところが、花粉(父親)の影響は、渋皮(母親)のポリフェノール(カスタヘジョン)の生合成に影響を与えることが分かりした。渋皮中に含まれているカスタヘジョンの量を少ない順に並べると、1)チュウゴクグリ×チュウゴクグリ、2)チュウゴクグリ×ニホングリ、3)ニホングリ×チュウゴクグリ、4)ニホングリ×ニホングリとなりました。

 カスタヘジョンの少ない順と剥皮の容易な順が同じになりました。この実験もカスタヘジョンが接着物質であることの証拠の一つです。また、花粉(父親)がニホングリだと渋皮のポリフェノール生合成が活発になりカスタヘジョンが多くなりますが、チュウゴクグリだと抑制されることも示しています。



 渋皮(母親)のポリフェノールの生合成に花粉(父親)の影響が現れる現象をメタキセニアといいます。メタキセニア現象は1928年にSwingleによって発見されました(文献1)。彼は、ナツメヤシの果実の果形や熟期、種子の大きさを調査し、花粉の影響がこうした形質に現れることを示しました。

 その後、メタキセニア現象の存在を支持する論文と認めない論文とが発表され論争となりました。この論争に決着がつかなかったのは、果形や重量など気候変動などの影響を受けやすい形質を対象にしていたためでした。今回、クリの渋皮の剥皮性に花粉親の影響が現れることを物質レベルで証明できたことからこの論争に決着がついたのではないかと考えています。



 新品種「ぽろたん」の場合はどうでしょうか。まだ、詳細な分析が行われていないので分かりませんが、渋皮のポリフェノール生合成に関与する遺伝子に変異が起きて、接着物質が少なくなったか、化学構造が変化して接着性が失われたかなどと推論しています。

【文献】
1) Swingle, W. T.: Metaxenia in the date plam. Possibly a hormone action by the embryo or endosperm. J. Hered. 19: 257-268. (1928)

果物&健康NEWS第29号「クリの渋皮剥皮性」
http://www.kudamononet.com/Kudamono&Kenko/
back_number/K&K_No29.html





□ くだもの健康豆知識:クリご飯

 ゆでたクリには、ビタミンB群が豊富に含まれています。200g中に、ビタミンB1は0.34mg、ビタミンB2は0.16mg、ビタミンB6は0.52mg、ナイアシンは2.0mg、葉酸は152μgです。さらに、ビタミンCも52mg含まれています。

 ご飯は炭水化物源として優れていますがビタミンB群が不足しているので、白米だけの食生活では脚気となることがあります。そのため、ビタミンB群を豊富に含むクリとご飯を組み合わせたクリご飯は、美味しいだけでなく、栄養的にも優れた食べ方です。




□ 文学の中の果物:奥の細道(松尾芭蕉)

 此宿の傍に、大なる栗の木陰をたのみて、世をいとふ僧有。橡(とち)ひろふ太山(みやま)もかくやと閑(しずか)に覚られてものに書付侍る。其詞、
 栗といふ文字は西の木と書て西方浄土(さいほうじょうど)に便ありと、行基菩薩の一生杖にも柱にも此木を用給ふとかや。

 世の人の 見付ぬ花や 軒の栗

 − 奥の細道:須賀川(松尾芭蕉)より

<訳>
 庵の傍らに大きな栗の木陰を頼んで、世を忍ぶ僧がいた。橡(とち)をひろう山での暮らしもかくやと偲ばれて、次のように書き付けた。
 栗という字は西の木と書いて、西方浄土を意味すると、かの行基菩薩が生涯、杖にも柱にもこの木をお使いになられたそうである。

 この庵には世間の人が気にも止めない地味な栗の花が咲いている

松尾芭蕉(まつお ばしょう:1644年(寛永21年)-1694年(元禄7年))は、江戸時代前期の俳諧師。蕉風と呼ばれる芸術性の高い句風を確立し、俳聖と称せられている。

**

 与謝蕪村が上記の情景を描いた「奥の細道画巻-可伸庵」は下記のサイトで鑑賞できます。(注:可伸は蕉風門下の僧侶)
http://www.bashouan.com/psBashouNe03.htm

与謝蕪村(よさ ぶそん、よさの ぶそん:1716年(享保元年)- 1784年(天明3年))は、江戸時代中期の俳人、画家。




□ 文献紹介:フルーツジュースは体重と関連しない

 アメリカ・疾病管理予防センター(CDC)が就学前の子供たちを調査した結果、100%フルーツジュースを飲むことと過体重との関連性は見られなかったと発表しました。

 就学前の2-5歳の子供たち1,572人を対象に1999年から2002 年にかけて調査を行った結果、子供たちは100%フルーツジュースを1日当たり4.70 oz (139cc)飲用していました。そこで、100%フルーツジュースと小児用BMI判定基準を用いて過体重との関係を調べたところ、統計的な関連性は見られませんでした。

 以上のことから、研究者らは、就学前の子供たちの果物摂取量を増やすのに100%フルーツジュースは適切な役割を果たすことができると述べています。

【文献】
O'Connor, T. M. et al.: Beverage Intake Among Preschool Children and Its Effect on Weight Status. Pediatrics 118: e1010-e1018. (2006) [doi: 10.1542/peds.2005-2348]




□ 果物の歌:里の秋

 斎藤信夫作詞、海沼実作曲の「里の秋」は、秋を唄った代表的な童謡です。戦争が終わった昭和20年の12月24日に、NHKラジオで川田正子さんが初めてこの曲を歌ったとき、その静かで優しい澄んだ歌声にリクエストが殺到したといいます。

 「ああ母さんと ただ二人
  栗の実 煮てます いろりばた」(一番)

 「ああ父さんの あの笑顔
  栗の実 食べては 想いだす」(二番)

 歌詞と演奏は下記のサイトです。クリックすると演奏が始まりますので、演奏がじゃまな人は消音してからクリックしてください。
http://bunbun.boo.jp/okera/saso/satonoaki.htm




□ 読者から

 いつも拝読させていただいております。メルマガ登録させていただき、4ヶ月になりますが、毎回のメルマガをいつも本当に楽しみにしております。

 2年前に、フルーツのよさをお医者さんに教えていただき、毎朝必ず果物を食べています。また、果物の勉強会と称して、食事会などを1ヶ月に1度程度、知人たちと行っております。フルーツを毎朝食べると、体調がよくなる方が多いので、びっくりしています。

 回りの友人に、便秘や膀胱炎の予防に、プラムやクランベリーなどを食べてる方が多いので、プラムやクランベリー(ベリー類全般)も是非、特集していただきたいです。
 これからも宜しくお願いいたします。(東京:N)




□ テレビ番組のお知らせ

NHK「ためしてガッテン」
 − 甘さ6倍!栗・感動の新調理術 −

   10月18日(水)PM8:00-8:43

 栗のビタミンCはグレープフルーツ並み、食物繊維はさつまいも以上という健康食材! 縄文時代には主食として栽培されてきた。ところが、「殻をむくのが面倒」、「思ったほど甘くない」と、中国産の甘栗にすっかり押され気味。調べてみると、ほんの少しの工夫で甘さがメロン並みにアップし、殻も渋皮も指で簡単にむけちゃう方法を発見!(農研機構果樹研究所も番組の取材に協力しています)




□イベントのお知らせ

 @おいしく食べて健康に!
 −くだもの学習会−


 果物は、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素を多く含み、生活習慣病の予防や健康増進のために欠かすことのできないものです。

 本学集会は、おいしい果物の選び方などをはじめ、果物のもつ栄養素や優れた機能性、バランスのとれた食生活について理解を深めていただき、毎日の食生活に果物を取り入れていただくことを目的に開催します。

  日時・場所:平成18年10月31日(火)
      【午前の部】 9:10〜12:00
            京都市中央卸売市場 第一市場
      【午後の部】13:30〜16:15
            京都リサーチパーク 東地区1号館
            4階「サイエンスホール」
  申込締切日:平成18年10月24日(火)

 ※内容等の詳細に関しては、下記のプレスリリースをご覧下さい。
 http://www.kinki.maff.go.jp/kyouyou/press/1810/
181002engeitokusan1.pdf


 Aからだリセット!ベジフルチャージ
 −朝からはじめる 野菜とくだもの−


 現在の日本人に増加している生活習慣病は、食事などの生活習慣の変化が主要な要因の一つといわれています。

 生活習慣病の予防には、ご飯、肉、魚と一緒にたっぷりの野菜と果物を摂取し、栄養バランスの良い食生活をすることが効果的だといわれています。 
 そこで、野菜・果物を摂取することの健康上の重要性や摂取の目安などの紹介と、野菜・果物中心の朝食お習慣化を促すことにより、朝食を欠食しがちな若い世代を中心に野菜・果物の摂取拡大をめざします。

  日時:平成18年11月2日(木)13:30〜16:00
  場所:山陽新聞社「さん太ホール」
  申込締切日:平成18年10月20日(金)

 ※内容等の詳細に関しては、下記のプレスリリースをご覧下さい。
 http://www.chushi.maff.go.jp/press/1809/060911_a.htm




■ お友達、同僚の方々に御紹介下さい

 お友達 、同僚の方々に「果物&健康NEWS」を御紹介下さい。下記のサイトで仮登録が出来ますのでURLをお知らせ下さい。必須項目はご本人のメールアドレスだけです。
 http://www.kudamononet.com/kkr/registory.html



☆ 編集部より ☆

 日増しに秋も深り、果物の収穫の便りが沢山聞かれるようになりました。寂しさを感じたりする季節でもありますが、美味しい果物を食べて元気で進みたいと思います。
 最近、「“編集部より”読んでますよ」とよく言われますが、実は私も愛読者の1人です。(tnk)


 久々にお酒と果物の相性を御報告したいと思います。まず、焼酎お湯割り(当然梅干し入り!)と果物の相性です。バッチリだと思ったのは、カキとブドウです。これはかなりイケますので、皆様、是非お試し下さい。ナシも最後に試したのですが、かなり酔っぱらってしまい、良く覚えていません。また、改めて報告します。
 それにしても...落合ドラゴンズ 万歳! 今年こそ日本一だあああ!(uru)


 週末は、5、6ヶ所のスーパーを回るのが楽しみです。どこのスーパーも入り口の近くは農産物コーナーで奥は畜産、水産コーナーです、何故でしょう?その逆のお店って見たことないです。誰かその理由を分かりますか?(sk)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

 無断転載はお断りします。 リンクは自由です。

 詳しくは、著作権、リンクについて に記載しています。

 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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