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  ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第167回
 食事バランスガイドと果物200グラム

  
 

□□■ 果物&健康NEWS Vol.167 ■□□
   ■   2007年9月28日(金)  ■


みなさん、こんにちは!
特集は「食事バランスガイドと果物200グラム」です。
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毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp
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最新、最先端の情報を伝える科学な生活メールマガジン!

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 ◇ くだもの健康豆知識:リンゴと満腹感
 ◇ 今週のレシピ:リンゴ
 ◇ 食事バランスガイドと果物200グラム
 ◇ 品種紹介:リンゴ「ひめかみ」
 ◇ 文献紹介:低GIの食事で子供の摂取カロリーが減少
 ◇ 文献紹介:地中海式食事でアルツハイマー病患者の死亡率低下
 ◇ 「果物からはじめる健康生活」セミナー参加者募集案内
 ◇ 読者から:甘栗について
 ◇ 果物おもしろ記録:リンゴ収穫の世界記録
 ◇ 文学の中の果物:美しき月夜(宮本百合子)
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 栄養師、看護師、医師をめざす学生の皆様へ
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:リンゴと満腹感

 リンゴは、水分や食物繊維が多く、低カロリーで、かつ、ボリュームが大きいので満腹感が得られます。そのため、空腹感に耐えることなく楽しみながらダイエットするのに効果的です。

 アメリカ・デラウエア大学の学生を対象に、食品(リンゴ、ジャガイモ、パン、チャパティなど)と、摂取後の満腹感について調査が行われました。その結果、リンゴを食べた学生の食後の満腹感は高く、かつ、満腹感が最も持続しました。

 こうしたことから、アメリカの代表的な医療機関であるメイヨ・クリニックでは、健康的にダイエットするためにリンゴの摂取を勧めています。




□ 今週のレシピ:リンゴ

○ フルーツカレー
  程よい辛さとフルーツの甘さが絶妙とのことです。

材料 (4人分)
 リンゴ 1個、バナナ 1本、キウイフルーツ 1個、たまねぎ 大1個、牛ひき肉 300g、にんじん 1/2本など。

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.tepore.com/cooking/recipe/500079/index.htm

○ アップルクッキー
  見た目も味も素朴なクッキーとのことです。

材料(直径3cm・12個分)
 リンゴ 中1/2個(果肉部120g)、レモン汁 大さじ1杯、薄力粉 100g、卵黄 1個、無塩バター 50g、バニラオイル 少々など。

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.tepore.com/cooking/recipe/300051/index.htm




□ 「食事バランスガイド」と「毎日くだもの200グラム運動」

 最近、「食事バランスガイド」と「毎日くだもの200グラム運動」との関係について聞かれます。そこで、両者の関係について考えてみたいと思います。

 食生活の乱れにより栄養バランスに偏りが生じた結果、生活習慣病が増加している状況に対応するため、平成12年に「食生活指針が作成されました。その中で、果物は、野菜と同様に毎日の食生活に欠かせない食品として位置づけられました。「野菜、果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて」、その実践では「たっぷり野菜と毎日の果物でビタミン、ミネラル、食物繊維をとりましょう」とされました。

 しかしながら、この「食生活指針」を受けて作成された県版には果物は記載されませんでした。例えば、ある県の「健康作り10か条」では、「おいしく、楽しく、きちんと食べよう。野菜、乳製品、豆類などが組み合わされた食事は生活習慣病予防に大切です。」とされ、2010年までの目標として「野菜類を1日350g以上(うち緑黄色野菜を1日120g以上)」とあり、果物の摂取目標はありませんでした(各県ともほとんど同様)。

 その理由として当時の専門家は、果物は果糖を含むため高脂血症の原因となると考えていることが分かりました。代表的な新聞の健康欄に「冠動脈疾患を発症しないためにも、中性脂肪を減らすには、1)脂質をとりすぎない、2)糖質(果糖など)をとりすぎない、3)アルコールを飲みすぎない、4)果物を食べすぎない、5)適度な運動をする。」と掲載されていました。この2)と4)から、「果物を食べると中性脂肪が増える」と読み取れます。

 そこで、原著とよばれる科学論文を詳細に検討した結果、果物に対する通説には種々の誤解があることが分かりました。そのため、こうした科学的根拠をもとに、田中らは生活習慣病予防のための果物の摂取目標として200グラムが妥当であるとして提案を行いました(文献1)。

 果物に含まれている果糖など糖類の有害説は、アメリカ食品医薬局(FDA)や、国連食糧農業機関(FAO)・世界保健機関(WHO)によって否定され、我が国でも田中らのヒト介入研究によって誤りが確認されました(文献2)。

 FDAは、「食品から供給される甘くて栄養になる糖類(果糖など)には、一般に言われている疾病(肥満、糖尿病、冠動脈心臓病、高血圧など)について、糖が直接的な原因であるという明確な証拠はない。」と述べています。また、FAO・WHOは、「糖類の摂取は肥満を促進する」という考えは誤りであり、生活習慣病に直接結びつくことはない。」と発表しています。

 こうした科学的証拠と「毎日くだもの200グラム運動」により、国民の健康増進を図るために平成17年に作成された「食事バランスガイド」で、初めて果物の摂取目標が決められました。その中で果物は、1日に2つ(200g)摂ることが推奨されています。しかし、農林水産省が実施した「食事バランスガイド」の実践では、果物は最も不足しており、7割以上の人が適量に達していませんでした。他のデータも果物の摂取不足が最も深刻であることが示されています。

 以上のように、「食事バランスガイド」と「毎日くだもの200グラム運動」とは矛盾するものではなく、相互に補強しあう関係にあります。

【文献】
1) 田中敬一.健康のために果物を200グラム.間苧谷徹編著:果物の真実.pp9-14. 化学工業日報社 (2000)
2) 間苧谷徹・田中敬一.くだもののはたらき,pp81-82. 日園連.(2003)




□ 品種紹介:リンゴ「ひめかみ」

 「ひめかみ」は、「ふじ」と「紅玉(こうぎょく)」を交配して出来た品種です。成熟期は盛岡で9月下旬で、果実の大きさは300g前後です。肉質はち密で、果汁が多く、糖度14%、リンゴ酸0.5%内外で、芳香があります。蜜入りが多く、甘酸適和で、食味が良いのが特徴です。日持ち性は室温で4〜5週間、冷蔵で2ヵ月以上です。
 品種名は育成地(岩手県盛岡市)から遠望できる姫神山にちなんで名付けられました。

「ひめかみ」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/kajunoheya/
ikuseihinsyu/data/hinsyu/cu-himekami.html





□ 文献紹介:低GIの食事で子供の摂取カロリーが減少

 朝食にグリセミック・インデックス(GI)値が低い食事をしている子供は、高いGI値の食事をしている子どもより摂取カロリーが低いことが分かったと、イギリス・オックスフォードブルックス大学の研究チームが発表しました。

 イギリスの子供38人(8-11歳)を対象に調査した結果、朝食に低GI値の食事をしていると、高GI値の食事をした子供より摂取カロリーが平均して60キロカロリーほど少なく、かつ、満腹感を得ていたことが分かりました。

 両者の摂取したカロリーの差は少ないように思えるかも知れませんが、長期間を考えると肥満のリスクを下げると研究者らは考えています。そのため、肥満対策としてこの方法は「簡単で実用的な方法」であると述べています。



 グリセミックインデックスとは、食品を食べた後の血糖値の上昇の程度を示す指標です。白パンやじゃがいもなどは、GI値が高い食品で、果物や大豆など食物繊維の多い食品はGI値が低い食品です。

【文献】
Jeya, C. et al.: Effects of long-term intervention with low- and high-glycaemic-index breakfasts on food intake in children aged 8-11 years. Brit. J. Nutr,, 98: 636-640. (2007) [doi: 10.1017/S0007114507727459]




□ 文献紹介:地中海式食事でアルツハイマー病患者の死亡率低下

 西欧式食事に比べ、地中海式食事をしているアルツハイマー病患者の死亡率は低いと、アメリカ・コロンビア大学などの研究チームが発表しました。

 研究では、192人のアルツハイマー病の患者を対象に平均4.5年間の追跡調査を行いました。その結果、地中海式食事を摂取していた患者は、伝統的な西欧式食事を摂取していた患者に比べ76%死亡率が低いことが分かりました。また、地中海式食事をしている人は、果物と野菜の摂取が多く、飽和脂肪酸と肉の摂取量が少ないことも分かりました。以上のことから、地中海式食事は、アルツハイマー病の患者が長生きするのを助けると研究者は述べています。

 この研究グループは、この論文の前に、地中海式食事でアルツハイマー病に罹患するリスクが下がることを明らかにしています。そして現在、地中海式食事がアルツハイマー病患者の認知機能の低下を抑制するかどうかについて詳細な研究が続けられています。今後の成果が期待されます。



 地中海式食事とは、果物、野菜、マメ類、穀類、魚、不飽和脂肪酸を多く摂取し、飽和脂肪酸、乳製品、肉類の摂取が少ない食事のことです。

【文献】
Scarmeas, N. et al: Mediterranean diet and Alzheimer disease mortality. Neur., 69: 1084-1093, (2007)




□ 「果物からはじめる健康生活」セミナー参加者募集案内

 色鮮やかな種々の果物が店頭を飾る秋、美味しさだけでない「食」としての果物について考える食育シンポジウム「果物からはじめる健康生活」の参加者を募集しています。参加費は無料ですので皆様のおいでをお待ちしています。申し込み締め切りは10月4日です。

第1部 基調講演 北川博敏氏(香川短期大学名誉学長)
第2部 パネルディスカッション
 コーディネーター 好本恵氏(アナウンサー)
 パネリスト 北川博敏氏(香川短期大学名誉学長)
       武見ゆかり氏(女子栄養大学大学院教授)
       田中敬一氏(農研機構果樹研究所上席研究員)
       益子直美氏(スポーツキャスター)

場所:ヤクルトホール(東京都港区東新橋1-1-19)
日時:10月11日(木曜日)13:00〜15:00(開場12:30)
参加費:無料
申し込み締め切り:10月4日
主催:食育シンポジウム委員会・中央果実基金

詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://www.kudamono200.or.jp/19events/191011_sinpo.html

インターネットでの申し込みは下記のサイトから出来ます。
http://www.smet.jp/kudamono




□ 読者から:甘栗について

 農水省関係のたくさんのメルマガの中でも、「果物&健康NEWS」は「食料需給インフォメーション」とともに普段の暮らしに役立つ情報が沢山載っているので、読んでいて面白いです。

 そこで季節の果物、栗を使った加工食品「甘栗」について質問があります。甘栗の原料はほとんどが中国産のようですが、綺麗に渋皮が剥けていて、しかもあの甘さには感心します。市販品の原材料を見ると「栗」しか表示されていません。加工段階で何も使わずともあの甘さ、美味しさが出たり、渋皮が綺麗に剥けたりするのでしょうか、不思議です。

 どうやって製造するのか知りたいです。丹沢や筑波などの国産栗を使って甘栗が作れるといいのになーと思います。甘栗用の国産品種ってあるのでしょうか。(新潟県:栗大好き人)

【編集部より】
 経済的に利用されているクリには、ニホングリ、チュウゴクグリ、ヨーロッパグリ、アメリカグリがあります。このうち、ニホングリの渋皮は最も剥けにくく、チュウゴクグリは最も剥皮が容易です。

 ニホングリが剥けにくい理由は、渋皮に接着物質であるカスタヘジョン(ポリフェノールの一種)が成熟に伴い増加し、最終的に渋皮と果肉を接着してしまうためです。

 チュウゴクグリの剥皮が容易なのは、渋皮と果肉を接着する物質が少ないためです。そのため、焼グリの原料にはチュウゴクグリを用います。「丹沢」や「筑波」などニホングリは、焼グリにしても渋皮は剥けません。

 しかし、最近、ニホングリでも渋皮が簡単に剥ける「ぽろたん」という品種が育成されたので、ニホングリの焼き栗を食べられる日も近いと思います。




□ 果物おもしろ記録:リンゴ収穫の世界記録

 カナダでリンゴ収穫の世界記録が作られました。ケベック州モントリオールから南東100kmにあるDunhamに住むリンゴ収穫のベテラン、Claude Breton氏は、8時間で8,000ポンド(3600kg)のリンゴを収穫しました。個数にすると30,341個とのことです。

Breton氏は、17才からリンゴの収穫の仕事を始め、50才になるのを機会にリンゴ収穫の世界記録に挑戦しました。熟練した作業で1回に4個のリンゴを収穫できるとのことです。

Breton氏の収穫する姿は下記のサイトで見ることが出来ます。
http://www.sherbrookerecord.com/index.php?
option=com_content&task=view&id=1546&Itemid=27





□ 文学の中の果物:美しき月夜(宮本百合子)

 静かな晩である。
 空気は柔かく湿って、熟しかけた林檎(りんご)からは甘酸い、酸性のかおりが快く、重く眠たい夜気の中に放散し、薄茶色の煙のような玉蜀黍(とうもろこし)の穂が澄みわたった宙に、ひっそりと影を泛べている。到るところに陰翳(いんえい)の錯綜があった。夏と秋の混り合った穏やかなどことなく淋しい景物が、今パット咲いた銀色の大花輪のような月光の下で、微かに震えながら擁(だ)き合っている。どこにも動くものがなかった。どこにもものを云う声が聴えなかった。その沈黙が一層聞えない囁きの優しさと、見えない魂の団欒(だんらん)を想わせるような夜のうちを、彼等は確かりと腕を組合いながら、幸福に家路に向っていたのである。



宮本百合子
(みやもと ゆりこ、1899年2月13日-1951年1月21日)
 旧姓は中条、本名はユリ。東京生まれ。小説家、評論家。日本女子大学英文科中退。1916(大正5)年(17歳)に「貧しき人々の群」を「中央公論」に発表、代表作は「伸子」。




□ 今日のフォト

 写真はクリの圃場から見た中秋の名月です。東の空から上がった月は人のいない果樹研究所の圃場をゆっくりと照らしていきます。 満月は豊饒をあらわしているとのこと、クリ、ナシ、リンゴ、ブドウ、カキ、ミカンなどなど、果物の秋です。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News16.html
  (写真掲載は次号まで)




□ 栄養師、看護師、医師をめざす学生の皆様へ

 「果物&健康NEWS」は、医学、栄養学、生化学の最先端・最新の文献を分かりやすく紹介しています。また、文献検索の方法など、研究に役立つ情報も掲載しています。ぜひ、本メールマガジンを講読ください。

登録サイトは下記です。(携帯WEBメール、PCメールで全文受信可)
http://www.kudamononet.com/kkr/registory.html
ご友人に、この登録サイトをご紹介ください。




☆ 編集部より ☆

 「果物からはじめる健康生活」セミナーはヤクルトホールで開催されます。会場は500人以上収容できるので、多くの方の参加をお待ちしています。当日はパネリストとして参加しますが、果物にまつわる様々な誤解を解きたいと考えています。(tnk)


 今回の167号で「果物&健康NEWS」の担当を終了することとなりました。2年間お世話になりました。次号からは後任のtが担当しますので今後も当メルマガをよろしくお願いします。(sk)


 「朝と晩が涼しくなってきて、だんだん秋を感じる今日この頃ですが、スーパーの店頭にも秋らしい果物が並ぶようになりました。いちじくの次に大好きな柿が並んでいるのを見て、先日この秋初めて柿を購入しました。ちょっと青かったのでおいしいかな、と心配したのですが食べてみるとシャキッとして甘くておいしかったです。柿もいろいろ種類があって、母は固めの柿が好きらしいのですが、私は固いのも、どろっとするくらい柔らかいのも大好きです。読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、いろいろありますが、やっぱり「食欲の秋」が一番好きです。(AA)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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