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  ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第170回
 プロフェッショナル・インタビュー:山口正己さん

  




□□■ 果物&健康NEWS Vol.170 ■□□
   ■   2007年10月22日(月)  ■


みなさん、こんにちは!
特集は「プロフェッショナル・インタビュー:山口正己さん」です。
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科学な生活情報メールマガジン
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 ◇ くだもの健康豆知識:果物と血糖値
 ◇ 品種紹介:モモ「ひめこなつ」
 ◇ プロフェッショナル・インタビュー:山口正己さん
 ◇ 今週のレシピ:モモ
 ◇ 文献紹介:高炭水化物食は思考速度向上に有効
 ◇ 文献紹介:ブドウに含まれているレスベラトロールが糖尿病に有効
 ◇ 果物の小話:モモの雑学2
 ◇ 読者から:果物お値打ち時期の紹介
 ◇ 今週の果物
 ◇ 家庭菜園でのモモ栽培
 ◇ 食育シンポ:毎日果物200グラムの健康効果
 ◇ 今日のフォト
 ◆ 広告(おかあさん編)
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:果物と血糖値

 血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことをいいます。食物を摂取すると血糖値が上がりますが、インスリンの分泌が少なかったり、働きが悪いと慢性的に高血糖となり、糖尿病と診断されます。

 昔は、デンプンなど多糖類に比べ、果糖など単糖類は、血糖値を上げやすいとされていましたが、最近の研究から多糖類か単糖類かの違いよりも、食物の種類と関係することが分かりました。例えば精製白パンよりも食物繊維の多いパンの方が血糖値を上げません。

 かつて果物は、単糖類を含むため血糖値を上げると考えられていましたが、今は逆で血糖値を上げにくい食物に分類されています。それは、食物繊維などが多く含まれているためです。



□ 品種紹介:モモ「ひめこなつ」

 農研機構果樹研究所から極早生で食味良好な黄肉モモ新品種「ひめこなつ」が発表されました。この品種は、開花から収穫までの日数が60日前後と、従来の早生品種に較べて10日以上短く、5月下旬から6月始めに収穫することが可能です。
 本品種は、露地モモの出荷時期の大幅な前進化と早生モモの品質
安定化に役立つと期待されています。

「ひめこなつ」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/announcements/
kisya/H19/10_03/himekonatu.html





□ プロフェッショナル・インタビュー:山口正己さん

 皆さんこんにちは。
 今日は、モモの新品種「ひめこなつ」を育成した農研機構果樹研究所ナシ・クリ・核果類研究チームの山口正己上席研究員に品種育成の秘話などをお聞きしたいと思います。
 山口さんは、モモやウメ、サクランボなどの育種の専門家で、多くの品種を育成されています。

【編集部】
 まず最初に、新しい品種を見つけるコツはあるのでしょうか。
【山口さん】
 どういう新しい品種を作るのか、どういうタイプのモモを作ろうとしているのかなど、目標をはっきりと決めることが大切です。選ぶ時は、まず優れている点に注目します。その次に、致命的な欠点はないか調べます。選抜はかなりシビアです。
【編集部】
 育種調査の最盛期には、1日にどのくらいモモを食べるのですか。
【山口さん】
 だいたい100品種・系統を食べています。
【編集部】
 やはりすごい量を食べるのですね。
 育種研究のおもしろさや楽しさは何ですか。
【山口さん】
 目標通りのモモに出会ったときです。一口かじって、ねらい通りだとうれしくなります。とくにお祝いをするわけではありませんが、人知れず微笑んでしまいます。
【編集部】
 育種研究のつらいところを教えてください。
【山口さん】
 新しい品種が出ない。品種がでても普及しない。そんな時はかなり落ち込みます。育種目標は正しいのか、交配親の組み合わせは大丈夫か、テーマを絞らなくてはいけないのか、などと考え込んでしまいます。そんな時はつらいですね。
【編集部】
 そんなつらい時の解消法はありますか。
【山口さん】
 お酒を飲んだり、ほ場で木を眺めたりすると気が晴れることがあ
ります。
【編集部】
 育種研究で、やりがいを感じるのはどんな時ですか。
【山口さん】
 生産者が「良い品種だね」といってくれたときや、スーパーなどで買い物客が「この品種は美味しいのよね」と話しているのを小耳に挟んだ時などです。そんな時はうれしいですねぇ。
【編集部】
 育種のプロとアマの違いはどこにあるのでしょうか。
【山口さん】
 どんな品種が育成可能なのか、見込みのある育種目標がたてられ
るかなどがプロの仕事です。
 育種研究は、果樹の新しい特性を切り開くことだと思います。そのため、研究には長い時間がかかります。その長い期間、最初の志しを持続できるかどうかがとても大切です。
【編集部】
 それが、プロフェッショナルということですね。
 プロになるまでには何年位かかりますか。
【山口さん】
 既存の品種の味の違いや、栽培特性などを覚え、育種選抜の中で比較できるようになるまでで、人にもよりますが5年以上はかかるのではないでしょうか。
【編集部】
 山口さんにとって、研究とはなんですか。
【山口さん】
 めしの種、生き甲斐ですかね。
【編集部】
 「生き甲斐」。それが、研究の醍醐味ですね。
 「農学栄えて農業滅ぶ」という言葉がありますが、農学研究とはなんですか。
【山口さん】
 ある面では、その言葉は当たっていると思います。農業研究では、食料と向かい合っていかなくてはいけません。農家と消費者のためにという目的をはっきり持つことが大切です。農学が生物学になってはいけないと思います。
【編集部】
 そうだと思います。
 話はがらっと変わりますが、毎日果物をどれくらい食べています
か。
【山口さん】
 季節によって食べる量は異なりますが、最低でも毎日200グラムは食べています。
【編集部】
 一番好きな果物は何ですか。
【山口さん】
 仕事関係のモモなど核果類を除くと、カキですね。渋柿でも甘柿でも、硬いのも柔らかいのもどちらも好きです。今の季節なら渋を抜いた「平核無」を食べてます。
【編集部】
 子供の時から科学が好きだったのですか。
【山口さん】
 科学は好きでしたね。本の付録などの工作や科学実験をやっていました。
【編集部】
 感動した本などがあれば教えて下さい。
【山口さん】
 ロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」です。生き方に影響を与えた本です。音楽ならビートルズですね。いつも聞いています。
【編集部】
 研究者を目指す若い人たちに、アドバイスをお願いします。
【山口さん】
 自分で考える習慣を身につけることが大切だと思います。そして、高校生や大学生になって進路を選ぶとき、自分のやりたいことをがんばってみることが大切だと思います。
【編集部】
 今日は長時間ありがとうございました。育種の苦労がよく分かりました。

山口さんのフォトは下記です。
http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/
snapshot_yamaguchi.html
(掲載は次号まで)

【編集部】インタビューを終えて
 ロマンスグレーがよく似合う紳士、山口正己さんは、いつも穏やか誰にでも声をかけてくれる優しい人ですが、秘めた志が垣間見えました。また、研究は「生き甲斐」ではあるけれど、やっぱりつらいことも沢山あるのだとよく分かりました。




□ 今週のレシピ:モモ

○ 桃缶のスクランブル
あつあつの簡単デザート

材料 (4人分)
 桃缶(白と黄) 500g(2缶)、アーモンドパウダー 30gなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.daiwa-can.co.jp/cooking/recipe034.html

○ 桃のヨーグルトゼリー
  ヨーグルトたっぷりのモモゼリー

材料
 桃缶 1缶、ヨーグルト(無糖タイプ) 500g、牛乳 半カップなど。

作り方は下記のサイトです。
http://www.daiwa-can.co.jp/cooking/boshu_noph011.html




□ 文献紹介:高炭水化物食は思考速度向上に有効

 低炭水化物・高脂肪食と高炭水化物・低脂肪食を比較した結果、減量に関して両者に違いはありませんでしたが、思考速度では高炭水化物・低脂肪食が有効であると、オーストラリア・アデレード大学の研究チームが発表しました。

 93人の太り過ぎか肥満の人(平均50歳)を対象に、低炭水化物・高脂肪食(炭水化物4%、脂肪61%、タンパク質35%)と、高炭水化物・低脂肪食(炭水化物46%、脂肪30%、タンパク質24%)の減量効果と認知能力(知性・論理思考テスト)について比較を行いました。

 その結果、どちらの食事でも体重が大幅に減少し、違いはありませんでした。しかし、認知能力である思考速度では、高炭水化物・低脂肪食が優れていることが分かりました。

【文献】
Halyburton, A. K. et al.: Low- and high-carbohydrate weight-loss diets have similar effects on mood but not cognitive performance. Amer. J. Clinic. Nutr., 86: 580-587. (2007)




□ 文献紹介:ブドウに含まれているレスベラトロールが糖尿病に有効

 ブドウに含まれているレスベラトロールが糖尿病に対しても有効と、アメリカ・ハーバード・メディカル・スクールの研究者が報告しています。

 糖尿病モデルマウスを用いた実験で、レスベラトロールがSIRT1と呼ばれる酵素を活性化することが分かりました。この酵素はインスリンの活性を低下させるPTP1Bと呼ばれる酵素の活性を抑制します。実験の結果、レスベラトロールを投与した糖尿病モデルマウスのインシュリン感度が改善しました。こうした結果から、レスベラトロールは糖尿病の病態改善薬として有力な候補であると、研究者らは考えています。

【文献】
Zabolotny, J. M. and Kim, Y-B.: Silencing Insulin Resistance through SIRT1. Cell Metabo., 6: 247-249. (2007)




□ 果物の小話:モモの雑学 2

古代の中国の人は、モモを神秘的、霊力のある果物と信じていたようです。この霊力にあやかってか、中国には桜桃、扁桃(アーモンド)、胡桃のように桃の字を付けた果樹が多くあります。中国ではモモに関して何故このような思想が発達したかについて、興味が湧きます。その1つに次のような考えがあります。

古代における人間の営みの中で、最も神秘的なことは妊娠という現象ではなかったかと想像されます。モモは、妊娠の兆しを示す"つわり"を癒す特効を持つ果物と思われていたようです。そして、つわりと結びつくモモが、胎児の生命と深い関係があると考えたのは当然かも知れません。このようなことから、モモを神秘的、霊力のあるものと考えるようになったというものです。

「桃」という字の「兆」は"きざし"の意で、母となる妊娠の兆しを示した時に、つわりを癒すために食べる果実を成らす「木」の意です。なお、モモは生長が速く、結果年齢に達するのも早く、かつ多くの果実をつける旺盛な生命力も神秘的、霊力があるという形へと発展していったのかも知れません。

 陶淵明(365〜427)の『桃花源記』に、モモの咲き乱れる林の奥の洞穴をくぐって行くと、秦の戦乱を避けた人々が住む別天地(桃源郷)があったという話もモモが異世界との通路となるというモモが持つ神秘的な思想を反映したものでしょう。   (間苧谷)




□ 読者から:果物お値打ち時期の紹介

 毎回、果物&健康NEWSを楽しみにしております。編集に当たられる方は、本来業務の外にこのNEWSを作成されておられるのでしょうね。本当にご苦労さまです。

 さて、私も団塊の世代で子供の頃には、庭にある柿、びわ、ゆすらうめ、秋には、桑畑を巡り、桑の実を食べ、口の周りも紫色に染めて、空腹を満たしていました。あれから半世紀、いまやトロピカルフルーツや各地で採れた果物がスーパーに溢れています。庭からは、果物の木が無くなり、畑からは桑が無くなりました。

 果物200グラム運動で、果物を食べようとしていますが、やはり買ってまで食べるというのは少し抵抗があります。そこで、今週はこの果物が値打ちですよとか、この果物はダイエットにいいですよとかの健康に良い(殆どの果物は、健康にいいのですよね) ものを市場(?) に代わって、宣伝していただけると幸甚です。

 前にも掲載がありましたが、果物の値ごろ感は人によって相違するでしょうが、やはり安い果物(それが旬の果物なのでしょう) を購入したいと思います。横着なことですが、一考できればと存知ます。    (三重県:藤田)

【編集部より】
 メールありがとうございました。「果物&健康NEWS」では、季節の果物を取り上げるようにしています。ただ、マーケットと完全に一致しているわけではありませんでした。
 そこで、農林水産省統計部が発行している「生鮮食料品のマーケット・レポート」をもとに旬の果物情報を掲載していきます。次の記事「今週の果物」を参照ください。




□ 今週の果物

 旬のリンゴ(「サンつがる」)、ミカン(極早生)、ナシ(「豊水」)、カキ(「平核無」)、ブドウ(「巨峰」)、クリなどがお勧めです。

「生鮮食料品のマーケット・レポート(10月11日発行)」は下記のサイトでご覧いただけます。
http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/
market2007-10-1/market2007-10-1.htm





□ 家庭菜園でのモモ栽培

 家庭菜園でモモを作るとしたらどんな品種が良いかや、注意点、アドバイスを農研機構果樹研究所の山口正己さんにお聞きしました。

【山口さん】
 モモは、家庭菜園で作るには難しい果樹です。モモは病害虫に弱いので、根気よくこまめに木を観察していないと果実が収穫できないこともあります。そのため、家庭菜園でモモを栽培するなら早生品種が良いと思います。

 早生品種なら病害虫にかかる前に収穫できるからです。これから植える品種を選ぶなら「ちよひめ」がお薦めです。また、「縮葉病対策」、「袋かけ」、「実を成らせ過ぎない」が、モモ栽培の大切な三つの要素です。

品種紹介:モモ「ちよひめ」

 モモ「ちよひめ」は、「高陽白桃(こうようはくとう)」と「さおとめ」を交配してでた品種で、満開から72〜73日で収穫される極早生の白肉品種です。果肉は白色で、粘核、溶質でしまり、日持ち性は比較的良好です。果汁多く、糖度は11〜12%、酸味は少なく、この時期のモモとしては外観が美しく、食味も優れています。200gを超える果実も収穫できます。

「ちよひめ」の果実の写真は下記のサイトで見ることが出来ます。
http://fruit.naro.affrc.go.jp/kajunoheya/ikuseihinsyu/
data/hinsyu/cu-chiyohime.html





□ 食育シンポ:毎日果物200グラムの健康効果

 「果物は太る」「果物は糖尿病に悪い」などと誤解していませんか? 果物は、ビタミン等の栄養素や優れた機能性を有し、健康増進や生活習慣病を予防していく上で、毎日の食生活に欠かすことのできない食品です。「食事バランスガイド」では、1日分の適量を2つ(SV)(おおよそ200グラム)としています。果物を取り入れたバランスのよい食生活のためのヒントとして下さい。

 同志社女子大学のホームカミングデー2007のイベントとして開催しますので、どなたでも参加できます。

【内容】
毎日果物200グラムの健康効果
 農研機構果樹研究所健康機能性研究チーム上席研究員 田中敬一氏
果物(みかん)の来歴、品種、選び方、食べ方の紹介
 日本園芸農業協同組合連合会大阪事務所所長 紀平哲哉氏
展示(パネル・パンフレット)
 毎日くだもの200グラム運動/果物の栄養素や機能性成分/
 果物の上手な食べ方・選び方/近畿の果樹農業/
 食事バランスガイドなど食育関連パネル・パンフレット

日時:2007年11月18日(日曜日) 14:00〜15:10
場所:同志社女子大学京田辺キャンパス(京都府京田辺市興戸)
募集人数:200名  参加費:無料
申し込み締め切り:11月12日(月)必着
主催:農林水産省近畿農政局、同志社女子大学生活科学部食物栄養
   科学科、食育シンポジウム協議会

詳細は下記のサイトに掲載されています(申し込みもできます)。
http://www.kinki.maff.go.jp/kinki/pubric/bosyu/kudamono.htm

同志社女子大学「ホームカミングデー2007」のサイトは下記です。
http://www.dwc.doshisha.ac.jp/c_html/home.html




□ 今日のフォト

 果実の収穫が終わると、防鳥網の撤収が始まります。一人では出来ないので、皆で協力して行います。上の写真は、ナシの木に掛けられていた防鳥網の撤収作業で、下の写真は、モモの畑の撤収作業です。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News19.html
  (掲載は次号まで)




■ 広告(おかあさん編)

(おかあさん)
 美味しい? よかった。 もっと食べていいのよ。

(ナレーション)
 食事バランスガイドでは毎日くだもの2つ



☆ 編集部より ☆

 プロフェッショナル・インタビューはいかがでしたか。山口正己さんには、もっと沢山お聞きしたのですが、スペースの関係でだいぶ割愛させてただきました。「育種と流通、消費者との関係」は掲載したかったのですが残念です。また機会を見て、研究者の心意気をお伝えしたいと思います。(tnk)

 最近スーパーに行くようになりました。店頭に売られているみかんが徐々に色も黄色に、形も大きくなっていきます。みかんの生長を見ているみたいです。(TK)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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