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第179回 高GI食とインスリン抵抗性

  




□□■ 果物&健康NEWS Vol.179 ■□□
   ■ 2007年12月25日(金) ■


みなさん、こんにちは!
特集は「高GI食とインスリン抵抗性」です。
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:::■ メニュー ■::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ◇ くだもの健康豆知識:ダイダイ
 ◇ 今週のレシピ:お正月の果物
 ◇ 高GI食とインスリン抵抗性
 ◇ 品種紹介:カンキツ「ブーケ」
 ◇ 果物の小話;クリの雑学−その1
 ◇ 読者から:食育セミナー(名古屋)に参加して
 ◇ お正月とダイダイ
 ◇ 文学の中の果物:海郷風物記(木下杢太郎)
 ◆ 広告(お正月準備編)
 ◇ やさい・くだもの健康食生活セミナー
   「子どもの健康と野菜・果物の役割」
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:ダイダイ

 ダイダイは、インド東北部のアッサムを中心とした地域が原産地です。日本へは、中国から伝来しました。

 「古事記」、「日本書紀」に、垂仁天皇の命により田道間守(たじまもり)が「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」を持ち帰ったと記されています。「非時香菓」は、常に結実して、香気が優れている果実の意味でダイダイの特性に合致することなどから、田中長三カ博士はダイダイであるとしています。ただし、これにはコミカン説やタチバナ説などの異説があります。

 原産地から西方に伝搬したのがサワーオレンジです。サワーオレンジの果実はマーマーレード、花は香水の原料、樹は街路樹に利用されています。




□ 今週のレシピ:お正月の果物

○ りんご栗きんとん

材料(大人4人分)
 ゆで栗(正味) 50g、りんご缶詰(正味) 100g(汁をきっておく)、さつまいも(正味) 200g(皮をむき、1cm幅に切っておく)、きび砂糖 大さじ1杯弱、りんご缶汁 80ccなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.city.abiko.chiba.jp/index.cfm/10,340,46,html

○ 仙台雑煮

材料(4人分)
 大根 300g、凍み豆腐 2個、糸こんにゃく 50g、腹子(鮭の卵) 大さじ4杯、餅 8切、ゆず 1個など

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.gas.city.sendai.jp/cooking/cook_26/cook_26.html

○ 白菜漬け(ゆずの皮入)

材料
 白菜 1株(2.5キログラム)、ゆずの皮 1個分、昆布の細切り 10センチ分、赤唐辛子 1〜2本など

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.city.koga.fukuoka.jp/cityhall/work/
sangyoshinko/agriculture/003.php#hakusai





□ 高GI食とインスリン抵抗性

 グリセミック・インデックス(GI)値の高い食品は、すぐに体内で消化・吸収され、脂肪に変換されることがマウスの実験から明らかとなりました(文献1)。アメリカ、ボストン子供病院が実施した研究では、摂取カロリーを同じにして、炭水化物としてGI値の低いアミロース(※1)を多く与えたマウスとGI値の高いアミロペクチン(※1)を与えたマウスを比較しました。実験途中では体重、体脂肪、血糖値、インスリン分泌量などを測定し、最後に肝臓における脂肪量を測定しました。

 実験の結果、25週間後に、両群のマウスの体重はほぼ同じでしたが、アミロペクチン(高GI食)を与えられたマウスは、通常の2倍の脂肪が、体内・血液および肝臓に蓄積していました。さらに、アミロペクチンを摂取したマウスではインシュリンの分泌量が増加していました。

 研究者らは、アミロペクチンは、素早く消化・吸収されるため、インスリンを多く分泌する要因となり、結果として体内に脂肪が蓄積したと述べています。また、このことは糖尿病発症と関係するインスリン抵抗性の最初のサインではないかと研究者らは考えています。さらに、この研究の興味深い点は、高GI食を多く摂取すると、体脂肪(主に中性脂肪)が高くなることを示したことです。

 食品のGI値は、その食品が体内にどの位早く消化・吸収され、血糖値を上昇させるかを示す指標です。高GI食物は血糖値を上昇させるとともにインスリンの分泌量も増加します。高GI値の食品には、精白パン、ポテトチップス、シリアルなどがあり、中等度のGI値の食品には、茹でたポテト、全粒パンなど、GI値の低い食品にはライ麦パン、全麦パン、果物などがあります。

 人を対象にグリセミック・インデックス(GI)と糖尿病との関係を調べたアメリカ・ボストン大学の研究結果では、高GI値の高い炭水化物を摂取していた人は2型糖尿病(※2)のリスクが高まり、GI値を下げる食物繊維を多く摂取するとリスクが下がると報告しています(文献2)。

 研究では、アメリカに住む黒人女性99,000人を対象に8年間追跡調査を行いました。その結果、GI値の高い炭水化物を摂取している人は、そうでない人と比べて2型糖尿病のリスクが23%高くなりました。一方、食物繊維を多く摂取している人は、少ない人と比べてリスクが18%低くなることが分かりました。特に、BMI値が25以下の人は、高GI食で2型糖尿病のリスクが91%高くなり、食物繊維を多く摂取しているとリスクが59%減少することが分かりました。

 以上の結果から、研究者らは、白パンから全粒小麦パン(2切れで食物繊維を3.8g含む)やレーズンブラン(食物繊維を5-8g含む)などに代えることを推奨しています。

 以上2つの研究から、高GI食は、インスリン抵抗性など2型糖尿病のリスクを高めことが分かりました。従って、GI値の低い食物繊維の多い穀類や果物の摂取は、インスリン抵抗性のリスクを下げると考えられます。

【用語解説】
アミロースとアミロペクチン(※1)
 アミロースもアミロペクチンもデンプンです。アミロースはグルコースが直鎖状に結合した構造をしていますが、アミロペクチンは枝分かれが多い構造をしています。
 デンプン分解酵素アミラーゼは、末端部分から一分子ずつグルコースを切り離します。そのため、末端部分が多数存在するアミロペクチンは、アミラーゼによって素早く分解されます。一方、アミロースは直鎖構造なので分解が遅くなります。

2型糖尿病(※2)
 2型糖尿病とは、身体が作り出すインスリン量が十分ではないか、作られたインスリンが十分に働かないことに起因して発症する生活習慣病です。我が国では2型糖尿病が最も一般的な糖尿病で約90%以上はこのタイプです。

【文献】
1.Scribner, K. B. et al; Hepatic Steatosis and Increased Adiposity in Mice Consuming Rapidly vs. Slowly Absorbed Carbohydrate. Obesity 15: 2190-2199. (2007)

2. Krishnan, S. et al.: Glycemic Index, Glycemic Load, and Cereal Fiber Intake and Risk of Type 2 Diabetes in US Black Women. Arch. Intern. Med., 167: 2304-2309. (2007)




□ 品種紹介:カンキツ「ブーケ」

 ブーケ(Bouquet)、異名ブーケドフルール(Bouquet de Fleurs)、はサワーオレンジ(sour orange)の一品種です。花は房咲性が強く、着果数が多いのが特徴です。果実重は130g程度、果皮は濃橙色です。しかし、果実は酸味が強く、苦いため通常は食べません。
 ヨーロッパでは、花から香水となるネロリ油や橙花水を採るために栽培されています。樹がコンパクトで花が多く香りを楽しめ、果実も美しいので庭木に適しています。

「ブーケ」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.citrusvariety.ucr.edu/citrus/bouquet.html




□ 果物の小話;クリの雑学−その1

 クリはブナ科クリ属の落葉樹で、その中で経済栽培されているのはニホングリ、チュウゴクグリ、ヨーロッパグリ、アメリカグリの4種です。最初は、ニホングリについて紹介します。

 ニホングリは、北海道中部から九州南部、朝鮮半島南部に自生しているシバグリを基本種として、改良されたものです。縄文時代の遺跡からクリの遺物が出土しており、古くから食用にされていたものと思われます。持統天皇(在位690〜697)の時代に、クリの栽培を奨励したことが『日本書紀』に記されています。また、淳仁天皇(在位758〜764)の天平宝字3年(759)には、カンキツ、ナツメ、ナシ、カキ、クリを5果に定めて道端に植えるよう勅令が出ています。

 栽培の歴史は丹波地方(現京都府、一部兵庫県)で最も古く、平安初期の宮中の行事や制度を記した『延喜式』(927)に丹波のクリの名が出てきます。丹波グリとは、品種名ではなく、丹波地方でとれる大粒のクリを称しました。当時、クリの繁殖は種子で行うのが一般的ですが、種子繁殖を行うと、同じ形質のクリが得られません。一方、接ぎ木技術は中国から仏教の伝来とともにもたらされ、平安時代の宮廷園芸に既に利用されていたといわれています。宮中や社寺とのつながりが強かった丹波地方では、クリの繁殖に接ぎ木が行われ、大粒系クリの形質を長く維持できたと推定されています。

 『延喜式』によれば、平安時代には保存しやすいように蒸して粉にした平栗子(ひらぐり)や、乾燥したクリをつき鬼皮と渋皮を除いた搗(かち)栗子(ぐり)などの加工品も作られていました。戦国時代には、搗(かち)は“勝”に通じるとして、武士が出陣する時に縁起をかついで供されました。  (間苧谷)




□ 読者から:食育セミナー(名古屋)に参加して

 愛知県に住んでいるHと申します。過日、私も果物セミナー(名古屋、椙山女子大)に参加いたしました。帰ってからお礼メールを打ち出したのですが、疲れて途中で寝てしまい、出さず仕舞でした。今回のメルマガに投稿が載っていたので早速打っています。いろいろと勉強になる話がいっぱいで、果物の試食もあってとっても有意義な会でした。

 以前からこのメルマガでは果物情報が詳しいので楽しく読ませて頂いていましたが、田中先生に実際にお話を伺うことが出来て光栄でした。鈴木先生の講演も大変興味深かったのですが会場がやや騒がしかったのが本当に残念です。学校現場での栄養教諭のご活躍も伺い、感心しました。

 これからもこういった機会を見つけて参加をしたいと思いました。本当に有難うございました。(愛知:H)

【編集部】
 食育セミナーへの参加、ありがとうございました。今度は、メルマガ読んでますよと声をかけてください。こうして果物の輪が広がっていくと良いですね。




□ お正月とダイダイ

 ダイダイは、新旧「代々」の果実が見られることから縁起物としてお正月のお飾りに用いられています。

 室町時代後期に「代々(ダイダイ)」の名称が普及したと考えられています。ダイダイの果実は成熟しても落下しにくく、新旧の果実が同一樹に見ることが出来ることから「代々」との名称が生まれたといわれています。

 ただし、「回青橙(ダイダイ、ザダイダイ)」の台座(ヘタ部)が肥厚し、二重に重なっているように見えるためともいわれています。




□ 文学の中の果物:海郷風物記(木下杢太郎)

 今日の午過ぎ、またぶらぶらと海岸を漫歩したのである。すると正月の事であるからして、船は何れも陸に揚げてあつて、胴の間には竹、松、橙を飾り、艫には幟を立ててある。小さい船のは、白か赤かの布である。少し高い所から見ると、殊に赤い旗は、土耳古玉のやうに眞青な海面の前に、強くにゆつと浮び出て、いかにも鮮かである。自然といふ印象派畫工(アンプレツシヨニス卜)の目もさむるやうな此筆觸の手際には實際感心せしめられるのである。



木下 杢太郎(きのした もくたろう)
 静岡県伊東市生れ。本名太田正雄(1885年8月1日〜1945年10月15日)、詩人、劇作家、医学者。東大医学部卒。北原白秋らとパンの会を結成した。代表作に「南蛮寺門前」などがある。




■ 広告(お正月準備編)

太郎ちゃん 玄関とタンスの上の鏡餅にみかん載せておいてね。
はぁ〜い。みかんがひとぉつ、みかんがふたぁつ、と。

(食事バランスガイドでは毎日みかん2つ)



□ やさい・くだもの健康食生活セミナー
  「子どもの健康と野菜・果物の役割」


 「やさい&くだものでスクスク健康家族」をテーマに、フジテレビ商品研究所食品料理研究室長山内寿子さんの講演やベジフルティーチャー原響子(元NHK名古屋キャスター)さんのトークショーにより、子どもの健康に野菜・果物が果たす役割や気軽に楽しく食べる方法など食事バランスガイドを活用した健全な食生活実現のためのセミナーを開催いたします。お気軽にご参加ください。

1)日時 1/29(火):14:00〜16:00
2)場所 さいたま新都心合同庁舎2号館 5階大研修室5A
3)内容 第1部「育ち盛りの子どもの健康に果物が果たす役割」
     第2部「体に大切な野菜の上手な食べ方について」
 詳しくはこちら:http://www.kanto.maff.go.jp/V_F2008.htm




□ 今週の果物

 ミカン、リンゴ(「ふじ」、「王林」)、カキ(「富有」)、イチゴ(「とちおとめ」、「あまおう」、「さがほのか」。「ひのしずく」)、が人気です。キウイフルーツ、デコポン、干し柿(市田柿、ころ柿)も好評です。

生鮮食料品のマーケット・レポート(12月20日発行)は下記のサイトです(この号には、昨年と今年のミカンの卸売価格や販売数量などの図表が掲載されています)。
http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/
data/market2007-12-2/market2007-12-2.htm





□ 今日のフォト

 果樹研究所のナシもクリも収穫が終わりましたが、冬の短い日の光の中でカキ「舎谷柿」の実が、葉の落ちた枝に残っています。「舎谷柿」は、完全渋柿でカラスやムクドリも食べません。青い空と柿色の対比は日本の冬の景色です。もうすぐお正月です。

柿の実の あまきもありぬ 柿の実の
   渋きもありぬ 渋きぞうまき      (正岡子規)

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News28.html
  (掲載は次号まで)




☆ 編集部より ☆

 皆様のご支援により今年もメルマガを順調に配信できました。ありがとうございました。良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。(tnk)

 皆様からの投稿に励まされ、今年も滞りなくメルマガを配信することができました。来年も引き続きご声援よろしくお願いします!(KT)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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