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  ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第185回 ビタミンC発見の歴史

  


□□■ 果物&健康NEWS Vol.185 ■□□
  ■  2008年2月22日(金) ■

みなさん、こんにちは!
特集は「ビタミンC発見の歴史」です。
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毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp
果樹農業は未来を拓く! Do! our BEST.

:::■ メニュー ■::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ◇ くだもの健康豆知識:マンゴー
 ◇ 今週のレシピ:マンゴー
 ◇ キッズQ:リンゴのべたべたはなに?
 ◇ 品種紹介:マンゴー「アーウィン」
 ◇ 文献紹介:90歳以上長生きする秘訣
 ◇ 文献紹介:葉酸が認知症リスクに関連
 ◇ 果物花便り:都立庭園(梅の季節の催し)
 ◇ 文学の中の果物:台湾の姿態(豊島与志雄)
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:マンダリン

 マンダリンはカンキツ属の中で、果皮がはぎやすい果実をもつ一群の総称で、「ミカン類」と同義です。

 マンダリンには、ウンシュウミカン、紀州ミカン、コウジ、シィクワシャ、クネンボ、島ミカンなどがあります。原生地はインド北東部のアッサム周辺地域と考えられています。

 マンダリンの名称は、中国清朝の「官吏(マンダリン)」の服と果実の色が同じであることに由来するといわれています。

 マンダリンの耐寒性は、カンキツ類の中で、カラタチ、キンカン、ユズについで強く、その中でもウンシュウミカンは強い部類に入ります。




□ 今週のレシピ:カンキツ

○ きんかんのシロップ煮

材料
 きんかん 12個、グラニュー糖 80g

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://sugar.lin.go.jp/recipe0512/rcp3.htm

○ ゆず風味のくず湯

材料・分量(4人分)◆
 ゆず 1個、レモン汁 1/2個分、くず粉 20gなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://sugar.lin.go.jp/recipe0602/rcp2.htm




□ ビタミンCの発見の歴史

 ビタミンCといえば果物ですが、ビタミンCが不足すると壊血病になります。大航海時代船員たちは塩漬けの肉や小麦粉で作ったビスケットが常食であったため、ビタミンCが欠乏し、壊血病になり多くの船員が亡くなりました。

 18世紀の中頃、1747年にイギリス海軍の船医Lindが、壊血病予防にはレモンやオレンジが有効であることを明らかにし、1953年にその著書の中で発表しました。

 レモンやオレンジのどの成分が関与するかが分かってきたのは20世紀に入ってからです。1907年Holstらは、モルモットがヒトと同様にレモンやオレンジを与えないと壊血病になることを発見しました。この成果は、その後の壊血病因子の研究を飛躍的に進展させました。ビタミンCを生体内で合成できないのは、ヒトやサル、モルモットなどに限られています。

 1912年、欠乏症について研究していたFunkによりミネラルではない健康に不可欠な栄養素としてビタミンの概念が提唱されました。その後、1918年オレンジに壊血病予防因子が存在することが分かり、1920年にビタミンCと命名されました。

 1928年、Szent-Gyorgyiはウシの副腎から単離した成分をアスコルビン酸と命名しました。アスコルビン酸は窒素を含まず、ビタミンの概念の基礎となるアミンではなかったため、自分が単離した成分がビタミンCとは気づきませんでした。1932年kingはレモンから壊血病予防因子、ビタミンCを結晶化することに成功しました。そして、直ぐに、ビタミンCとアスコルビン酸が同じものであることが分かりました。1933-1934年にHaworthらによりビタミンCの構造が決定され、化学合成されました。そして、1937年にSzent-Gyorgyiにはノーベル医学生理学賞が、Haworthにはノーベル化学賞が授与されました。

 その後、コラーゲンの生合成にビタミンCが関与しており、コラーゲン生合成に重要なステップであるプロリンの水酸化反応にビタミンCが必須であることが分かりました。最近では、ビタミンCと生活習慣病との関係が研究されており、我が国の三大疾病の一つである脳卒中の予防にビタミンCが有効との研究が明らかになっています。

 新潟県新発田市に住む880人の男性と1241人の女性を対象に、血液中のビタミンCと脳卒中との関係が調査されました(文献1)。その結果、血中のビタミンCの濃度に従って全集団を4分割し、ビタミンCの濃度が高い集団は、低い集団に対して脳卒中のリスクが41%低下することが分かりました。また、脳梗塞に対しては49%、脳出血に対しては55%低下しました。

 イギリスで196,713人の男女(40-79歳)を対象に、血液中のビタミンCと脳卒中との関係について平均9.5年間追跡調査が行われました(文献2)。その結果、血中のビタミンC濃度に従って全集団を四分割して、ビタミンCが多い集団と少ない集団を比較すると、ビタミンCの濃度が高いと脳卒中のリスクが42%低くなることが分かり、日本で行われた研究結果とよく一致しました。

 ビタミンCが脳卒中に有効な理由として、血管拡張機能のある酸化窒素(NO)を不活化する活性酸素を除去するためではないかと考えられています。調理や加工せずに生で食べられる果物はビタミンCの供給源として優れています。

【文献】
1) Yokoyama, T. et al.: Serum vitamin C concentration was inversely associated with subsequent 20-year incidence of stroke in a Japanese rural community. The Shibata study. Stroke, 31: 2287-2294. (2000)

2) Myint, P.K. et al.: Plasma vitamin C concentrations predict risk of incident stroke over 10 y in 20 649 participants of the European Prospective Investigation into Cancer Norfolk prospective population study. Am. J. Clin. Nutr., 87: 64-69. (2008)




□ 品種紹介:カンキツ・コウジ

 コウジ(柑子)は、タチバナの血を引く自然雑種で、古くから我が国にあるカンキツで「三代実録」(901)に記載があります。「延喜式」(927)には駿河、遠江、相模、因幡、阿波などから朝廷へ献上されたとの記載があります。

 コウジは長い間、我が国唯一の生食用カンキツとして重要な作物でした。室町時代に導入されたクネンボ、江戸時代に普及した紀州ミカンとともに江戸時代の重要な生食用ミカンでした。

 コウジの写真は今日のフォトにあります。




□ 文献紹介;生活習慣病や老化に関与する新しい制御機構の発見

 体内でおきる酸化的損傷は、アルツハイマー症や心疾患、脳卒中などの疾病の要因ですが、アメリカ・ウイスコンシン大学の研究チームは、こうした酸化的損傷プロセスに関与する新しい制御機構を発見したと報告しました。

 Star-PAPと名付けられた新しいプロセスのキー酵素は、m-RNAの発現を制御する複合体の一部として機能します。細胞の核DNAから読み出された遺伝子情報はm-RNAによって運ばれますが、Star-PAPはm-RNAの末端で結合し、酸化ストレスからm-RNAを保護し、m-RNAの分子安定性を高め、その結果としてタンパク質への翻訳を助けます。

 Star-PAP酵素は細胞内で比較的少ない酵素やタンパク質の生成に関与し、こうした酵素やタンパク質を酸化的損傷から保護します。また、Star-PAPは、酸化ストレスから細胞を保護するヘムオキシゲナーゼ-1の遺伝子発現も制御しています。

 この発見は、生活習慣病の予防や老化の抑制につながる成果として注目されています。

【文献】
Mellman, D. L. et al.: A PtdIns4,5P2-regulated nuclear poly(A) polymerase controls expression of select mRNAs. Nature, Online 21 Feb. (2008) [doi: 10.1038/nature06666]




□ 果物花便り:第112回水戸の梅まつり(偕楽園)

 第112回水戸の梅まつりが,茨城県水戸市の偕楽園及び弘道館公園を会場に平成20年2月20日から3月31日まで開催されます。偕楽園は金沢の兼六園、岡山の後楽園とならぶ「日本三公園」のひとつで、天保13年(1842年)に水戸藩第九代藩主徳川斉昭によって造園されました。WEBサイトには梅図鑑も用意されています。

水戸偕楽園のサイトは下記です。
http://www.koen.pref.ibaraki.jp/park/kairakuen01.html




□ 文学の中の果物:地獄變(芥川龍之介)

 所が或日の事、前に申しました良秀の娘が、御文を結んだ寒紅梅の枝を持つて、長い御廊下を通りかゝりますと、遠くの遣戸(やりど)の向うから、例の小猿の良秀が、大方足でも挫(くじ)いたのでございませう、何時ものやうに柱へ駆け上る元気もなく、跛を引き/\、一散に、逃げて參るのでございます。しかもその後からは楚(すばえ)をふり上げた若殿樣が「柑子盜人(かうじぬすびと)め、待て。待て。」と仰有りながら、追ひかけていらつしやるのではごさいませんか。良秀の娘はこれを見ますと、ちよいとの間ためらつたやうでございますが、丁度その時逃げて來た猿が、袴の裾にすがりながら、哀れな聲を出して蹄き立てました――と、急に可哀さうだと思ふ心が、抑へ切れなくなつたのでございませう。片手に梅の枝をかざした儘片手に紫匂(むらさきにほひ)の袿(うちぎ)の袖を輕さうにはらりと開きますと、やさしくその猿を抱き上げて、若殿樣の御前に小腰をかゞめながら「恐れながら畜生でございます。どうか御勘辨遊ばしまし。」と、涼しい聲で申し上げました。



【用語】楚(すばえ)
 1.木の枝や幹からまっすぐ伸び出た、若く細い小枝。2.刑罰に用いるむち。



芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
 1892年(明治25年)3月1日-1927年(昭和2年)7月24日)。号は澄江堂主人、俳号は我鬼。作品の多くは短編で、「芋粥」「藪の中」「地獄変」「歯車」などがあり、「今昔物語集」、「宇治拾遺物語」などの古典から題材をとったものが多くある。




□ 今週の果物

 リンゴ(「ふじ」、「ジョナゴールド」、「王林」)や、終盤にさしかかったみかんが堅調です。また、いよかん、清見、デコポン、ポンカン、はっさく、きんかん、日向夏、土佐文旦も豊富に出回り人気です。新しいカンキツであるはるみやせとかが評判です。
 イチゴは色々な品種(「あまおう」、「とちおとめ」、「紅ほっぺ」、「さがほのか」、「とよのか」、)が楽しめます。キウイフルーツも好評です。

生鮮食料品のマーケット・レポート(2月20日発行)は下記のサイトです。
http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/
market2008-02-2/market2008-02-2.htm




□ 今日のフォト

 カンキツには様々な品種や系統があり、形も大きさも色も異なります。そうしたカンキツをテーブルの上に並べてみたのが上の写真です。

 下の写真で一番大きいのはブンタンの「Bali」で、インドネシアのバリ島を探索して、導入された系統です。次に大きいのが「晩白柚」で、「清見」、「コウジ」の順です。

 「コウジ」の果皮色は、中国清朝の官吏の服の色と同じといわれています。室町時代までは生食用の唯一のカンキツでした。とても小さく、種もあり、現在なら見向きもされないかも知れません。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News33.html
  (掲載は次号まで)





☆ 編集部より ☆

 2月26日が創刊記念日です。来週号から「果物&健康NEWS」も5年目に入ります。先日、「このメルマガ読むようになってから果物を食べるようになったよ。」と声をかけられ、うれしくなりました。今後ともご愛顧よろしくお願いいたします。たのしいお便りをお待ちしています。(tnk)

 先週買ってきた柚子ハチミツにはまっています。お湯割りにしてもよし、梅酒に加えてもよし、パンに塗ってもよし。柚子ハチミツは癒しの味です。(KT)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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