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  ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第193回
 エネルギー密度の低い果物で肥満解消

  


■□ 果物&健康NEWS Vol.193
□■  2008年4月21日(月)


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「エネルギー密度の低い果物で肥満解消」です。
新鮮、おいしい、メルマガをゆっくりとお楽しみください。
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 ◇ くだもの健康豆知識:「清見」と「ポンカン」の子供達
 ◇ 今週のレシピ:カンキツ「不知火(デコポン)」
 ◇ エネルギー密度の低い果物で肥満解消
 ◇ 品種紹介:カンキツ「陽香」
 ◇ 文献紹介:血圧とLDLコレステロールの低下で心疾患予防
 ◇ 果物の小話:リンゴ雑学−その3
 ◇ 読者から:白米のグリセミックインデックスについて
 ◇ 読者から:「清見」、「はるみ」の情報
 ◇ 文学の中の果物:ジャン・クリストフ(ロマン・ローラン)
 ◇ 今週の果物
 ◇ ウメの旬はいつ頃
 ◇ 今日のフォト
 ◆ 「果物&健康NEWS」登録依頼パンフレット
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:「清見」と「ポンカン」の子供達

 カンキツでは、早熟でオレンジやポンカンのような香りをもち、皮が剥けやすく、日本の風土にあうマンダリン品種の育成が行われています。

 皮が剥けやすいウンシュウミカン「宮川早生」と香りの良いスイートオレンジ「トロビタオレンジ」から「清見」が生まれました。この「清見」とポンカンを親として生まれた子供達に、「不知火(デコポン)」、「はるみ」、「陽香」などがあります。

 「はるみ」の花粉親の「ポンカンF-2432」は、第2次世界大戦前に台湾から導入された品種です。「不知火」と「陽香」の花粉親は「中野3号ポンカン」です。

 どの品種も皮が剥けやすく、香りがあり、果汁がたっぷりで美味しいと評判です。




□ 今週のレシピ:カンキツ「不知火(デコポン)」

○ デコポンと春雨の酢の物

材料(4〜5人分)
 コポン(中) 1/3個、春雨 20〜30g、きゅうり(中) 1本、デ味付酢 1/6カップ、白砂糖、しょう油、ラディッシュ

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.hakata-genki.com/recipi/
kaji/kankitu/recipi1.html


○ デコポンピールショコラ

材料
 デコポンの皮(柑橘系なら何でも) 3個分、砂糖 100g、ミルクチョコレート 50gくらい

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/ringo/recipe/343759/

○ デコポン酒

材料
 デコポン 1.5キログラム、デコポンの皮 150グラム(実の約1割程度)、35度 甲類焼酎(ホワイトリカー) 1.8リットル

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.shochu.or.jp/kajitsushu/
homemade/winter/dekopon.html





□ エネルギー密度の低い果物で肥満解消

 肥満はメタボリックシンドロームの検査項目であるばかりでなく、ガンや心臓病などの生活習慣病の危険因子です。そのためメタボリックシンドロームと診断された人に対してカロリー制限による栄養指導が行われています。

 しかし、人に対する臨床実験から、人は毎日摂取する食事のおおよその量が決まっていることが明らかになっています。そのため、ダイエットのためにカロリー制限に取り組んだ初期には効果を上げますが、やがて満たされない食欲や空腹感に悩まされ長続きしません。

 一方、1997年にデンマークで行われたヒト介入無作為化比較試験から、カロリー制限による減量効果は大きいが、その維持が難しく、脂肪を減らし炭水化物を増やすダイエット法は減量速度は遅いが、減量を維持できることが明かとなりました(文献1)。

 この研究は無理のないダイエット法として注目されました。この方法の特徴はカロリーの高い脂肪を減らし、カロリーの低い食品を増やす点です。この方法だと摂取量が変わらないため人への負担が少なくなります。このことを表す食品の単位としてエネルギー密度という概念が生まれました。

 エネルギー密度とは、ユニット当たりのエネルギー量で、100グラムあたりのカロリー量で示されます。その基礎となるのが各栄養素のカロリーです。炭水化物とタンパク質のグラム当たりのカロリーは約4kcal、脂肪は9kcal、アルコール飲料中のエタノールは7kcalです。また、食物繊維は1.5kcal、水は実用上0kcalです。

 それぞれの食品のエネルギー密度は、各栄要素の含有率によって決まります。一般に、低エネルギー密度の食品は、食物繊維と水分が多く含まれています。低エネルギー密度の代表的な食品は、果物と野菜、水と一緒に調理される穀類(粒)です。こうした食品は、ビタミン、ミネラルのほか生物活性成分が多く含まれています。

 一方、高エネルギー密度の食品は、水分や食物繊維が少なく、脂肪を多く含む加工食品、菓子などです。肉のエネルギー密度は、その肉が含む脂肪の量と関係しています。こうした食品は微量栄養素が少ないことが知られています。また、エネルギー密度の高い食品を摂取したとき、多量の水を飲むと低いエネルギー密度になるとの説には科学的証拠が全くありません。

 アメリカで行われたヒト介入無作為化比較試験では、脂肪の摂取量を高、中、低の3段階とカロリー制限区に分け1年間試験が行われました。その結果、低脂肪食のグループとカロリー制限のグループで統計的に有意に減量効果が認められました(文献2)。さらに、両区とも総コレステロール、中性脂肪の減少が認められました。この結果は、低エネルギー密度食でも十分にダイエット効果があることを示しています。

 アメリカで7万4063人の女性の看護師(38-63歳)を対象に、肥満及び体重増加のリスクと、果物・野菜の摂取量との関係を12年間にわたり追跡調査が行われました(文献3)。その結果、年を重ねるにつれて太る傾向にありましたが、果物と野菜の摂取が最も大きく増加したグループでは体重が減少していました。逆に、最も果物と野菜の摂取量が減少したグループでは肥満体(BMI>=30)になるリスクが24%高くなりました。体重が大きく増加した人(=>25kg)では、果物と野菜の摂取量が低いことが分かりました。果物と野菜を別々に分析しても同様の結果でした。

 以上の結果から研究者らは、果物と野菜の摂取量を増やすことは中年女性の肥満のリスクと体重増加のリスクを減らせると述べています。

 こうした研究を精査した報告(「食品、栄養、運動とガン予防」)では、ダイエットにエネルギー密度の低い食品の摂取を推奨しています(文献4)。従って、良質の食物繊維を多く含む果物は肥満解消に推奨されます。

【文献】
1. Toubro, S. and Astrup, A.: Randomised comparison of diets for maintaining obese subjects weight after major weight loss: ad lib, low fat, high carbohydrate diet v fixed energy intake. BMJ, 314: 29-34. (1997)

2. Fleming, R.M.: The effect of high-, moderate-, and low-fat diets on weight loss and cardiovascular disease risk factors. Preventive Cardiology, 5 : 110-118. (2002)

3. He. K. et al.: intake of fruits and vegetables in relation to risk of obesity and weight gain among middle-aged women. Int. J. Obes., 28: 1569-1574. (2004)

4. World Cancer Research Fund / American Institute for Cancer Research: Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer: a Global Perspective. Washington DC: AICR, (2007)




□ 品種紹介:カンキツ「陽香」

 「陽香(ようこう)」は「清見(きよみ)」と「中野3号ポンカン(なかの3ごうポンカン)」を交配して出来た品種です。果実は250〜300g、マンダリンとしては最も大きい部類にはいります。。果皮は薄く、じょうのうの形がわかる程です。糖度は13度以上となる高糖系カンキツです。品種の名前は、果実の形、色から「太陽」をイメージし、また、この品種のもつ良い香りに因んでつけられました。

「陽香」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://ss.fruit.affrc.go.jp/kajunoheya/
ikuseihinsyu/data/hinsyu/cu-yoko.html





□ 文献紹介:血圧とLDLコレステロールの低下で心疾患予防

 2型糖尿病患者で血圧とLDLコレステロールを目標値以下まで下げた人は頸動脈壁の肥厚が低下したと、アメリカの研究グループが発表しました。

 糖尿病患者は、心血管疾患と冠状動脈性心臓病のリスクが高く、主な死亡原因です。研究では、2型糖尿病のアメリカインディアンの男女499人を対象に、血圧を115mmHg以下、LDLコレステロールを70mg/dL以下になるように指導したところ、目標値に達した人の頸動脈壁肥厚が有意に低くなりました。

 以上の結果から、研究者らは2型糖尿病患者の心疾患予防には血圧とLDLコレステロールの制御が有効と示唆しています。

【文献】
Barbara V. Howard, B. V. et al.: Effect of Lower Targets for Blood Pressure and LDL Cholesterol on Atherosclerosis in Diabetes. JAMA, 299: 1678-1689. (2008)




□ 果物の小話:リンゴ雑学−その3

 中国では、果樹の総称といえばモモであり、ヨーロッパではリンゴと言われています。このように、ヨーロッパにおけるリンゴは、果物の代表と考えられることから、17世紀頃のヨーロッパのリンゴがどのような品質のものであったか興味がわきます。

 当時のリンゴを知る上で、わが国にもニュートンの家の裏庭に植えられていたリンゴの木の複生樹がありますので、その果実品質を紹介します。

 ニュートン(1642〜1727)は、リンゴの落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見したことで有名です。このリンゴは「フラワー・オブ・ケント」という品種で、当品種は接ぎ木で増殖され、世界各地に植えられています。日本には昭和39年、英国国立物理学研究所から柴田雄次日本学士院長に苗木が送られ、東京大学付属植物園小石川本園に植えられています。その他、秋田県果樹試験場などにもニュートンのリンゴの木は栽植されています。

 秋田県果樹試験場の調査によると、果実重122g程度と小さく、円〜長円形、果皮は暗赤色で縞があり、甘味は少なく酸味が強く、果肉が軟らかでボケやすく、さらに、収穫前落果が多く、現在なら経済栽培品種にはなり得ません。余談ですが、「フラワー・オブ・ケント」が落果しにくい品種であれば、ニュートンの万有引力の法則の発見は遅れていたかも知れません。この情報からも、現在の私達がいかに美味しいリンゴを食べていることか・・・幸せではありませんか。

 リンゴには多くの神話、伝説があります。『旧約聖書』の、アダムとイブが禁断の木の実を食べてエデンの楽園から追放されたという話は多くの方がご存じでしょう。アダムが禁断の木の実を食べようとした時、神様から声をかけられ、あわてて飲み込もうとして喉にひっかかり、喉仏になったという話から、喉仏のことを英語でAdam's appleといいます。ただ、禁断の木の実がリンゴであったか否かは、明らかではありません。 (間苧谷)




□ 読者から:白米のグリセミックインデックスについて

 「果物でメタボ予防」興味深く拝読しました。食品別のGI値の中に一番知りたい白米が含まれていないのが片手落ちのような気がしました。外国の文献に基づいたものであることはわかりますが、参考として注)にでも添えてほしかったです。(G)


【編集部より】
 メールありがとうございました。グリセミックインデックスについて、我が国では科学的とはいえない紹介があったため、一部に混乱があります。現在でもウェブ上に誤った数値があり、その混乱が続いています。そのため、今回は白米などの値を意識的に避け、果物のグリセミックインデックス値が低いことだけを紹介しました。

 機会をみてグリセミックインデックスのそうした歴史を踏まえながら全体像を紹介したいと思います。




□ 読者から:「清見」、「はるみ」の情報

 果物&健康NEWS Vol.192に東京都・薫風さんから、「清見」と「はるみ」、どこで手に入りますかというお便りに、編集部さんからの返事が載っていましたが、私が住む柏崎市の街外れにある小さなスーパーでも、静岡産の「清見」が一個売りしていましたよ(ネット袋販売では高いということなのでしょうね)。

 「はるみ」は、三年ほど前から愛媛県大三島で柑橘栽培をしている友人が、伊予柑などと一緒に少し送ってくれています。今年は「まりひめ」という新顔も送ってもらいました。

 「清見」、「はるみ」、「まりひめ」。一度に食べ比べたことはありませんが、それぞれ甘さと酸味のバランスが微妙に違っていて、いずれも甲乙付けがたく美味しいばかりです。友人の話では新品種への切り替えがかなりのスピードで進んでいるそうです。

 柑橘類に限ったことではありませんが、開発する研究者やそうした新たなものに切り替えていく生産農家の努力と苦労に感謝しながら戴いています。(新潟・果物大好き人)

【編集部より】
 「清見」と「はるみ」の情報ありがとうございました。地方独特の果物情報や美味しかったメールなど、皆様からのお便りをお待ちしています。




□ 文学の中の果物:ジャン・クリストフ(ロマン・ローラン)

 カヴァレリア・ルスチカナを小声で歌ってる自分自身にふと気づいて驚いた。旅の目的はまったく忘れてしまっていた。早く目的地へ着いてグラチアに会いたいことも、すっかり忘れていた……。

 そしてついにある日、なつかしい彼女の面影が浮かんできた。そ
れを描き出したのは、往来で出会った一つの眼差(まなざし)だったか、荘重な歌うような一つの声の抑揚だったか、それを彼は覚えなかった。しかしそのときは、橄欖樹(オリーヴ)に覆(おお)われた四方の丘、濃い影と強い日光とにくっきり浮き出されてるアペニン連山の高い光った頂、香橙(オレンジ)の林、海の深い呼気など、周囲のすべてのものから、女の友のにこやかな顔が輝き出した。空気の無数の眼によって、彼女の眼は彼をながめていた。あたかも薔薇(ばら)の木から一輪の花が咲き出すように、彼女はその土地から咲き出していた。  (豊島与志雄訳)



ロマン・ローラン(Romain Rolland)
 1866年1月29日-1944年12月30日。フランスの作家。著書「ジャン・クリストフ」などにより「真実への共感と愛による理想主義」への貢献として1915年にノーベル文学賞を授与された。2つの世界大戦では反戦平和を訴え、スイスのジュネーヴで「戦いをこえて」(1914年)を著した。他に「魅せられたる魂」。「ベートーベンの生涯」などがある。




□ 今週の果物

 東京の大田市場と大阪の中央卸売市場本場の青果物市況から、カンキツは、甘夏ミカン、サンフルーツ、はっさく、「清見」、「不知火(デコポン)」などが、リンゴは「ふじ」、「ジョナゴールド」、「王林」などが堅調です。イチゴは大田市場では「とちおとめ」、大阪本場では「女峰」、「とよのか」、「さちのか」などが順調に入荷しています。また、メロン(「アールス」、「アンデス」など)やスイカ、ビワの入荷量が増えてきています。

 生鮮食料品のマーケット・レポート(小売業情報)は3月下旬で終了しました。




□ ウメの旬はいつ頃

 ウメの花が終わったばかりですが、生育期間が短いウメは5月下旬から出荷が始まります。6月が最盛期で、7月になると出荷量が大幅に減少します。そろそろ梅干しや梅酒作りの準備の時期となりました。主産県は、和歌山県、群馬県などです。




□ 今日のフォト

 農研機構果樹研究所ではニホンナシが満開です。写真は「豊水」、「長十郎」などです。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News40.html
  (掲載は次号まで)





■ 「果物&健康NEWS」登録依頼パンフレット

 「果物&健康NEWS」登録依頼パンフレットを新しく作り替えました。お使いいただければ幸いです。
 http://www.kudamononet.com/kkr/index.html




☆ 編集部より ☆

 ある時、「果物&健康NEWS」のようなメルマガ(条件:読者数1万人以上、毎週発行)を受注するとしたらと聞いたことがあります。そうしたら、私の年収の数倍の費用になると聞いて驚いたことがあります。編集担当、ライター、営業担当が必要で、営業経費や機器保守費などだそうです。(tnk)


 兄弟会のため伊豆に一泊してきた親が、小ぶりで皮がまっ黄色なみかんを買ってきました。小皿に3〜4個入れて食卓に置いてみるとなかなか。しばらく置きっぱなしです。(KT)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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