くだもの・科学・健康ジャーナルHP > 果物&健康NEWSトップ >
  ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第209回 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その1

  



■□ 果物&健康N8WS Vol.209
□■  2008年8月8日(金)


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その1」です。
メルマガをゆっくりとお楽しみください。
────────────────────────
毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp

:::■ メニュー ■::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ◇ 文献紹介:肥満などが遺伝子発現、インスリン抵抗性に関与
 ◇ 今週のレシピ:モモ・ネクタリン
 ◇ 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その1
 ◇ 品種紹介:モモ「あきぞら」
 ◇ EU学校フルーツ計画:果物と野菜を児童に無料配布
 ◇ 文学の中の果物:水菓子屋の要吉(木内高音)
 ◇ 農林水産省子ども見学デー
 ◇ 夏休み特集:果物と理科自由研究
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より



□ 文献紹介:肥満などが遺伝子発現、インスリン抵抗性に関与

 フィンランド・ヘルシンキ大学などの研究チームが、肥満や運動不足が遺伝子発現に関与し、インスリン抵抗性を導くことが双子の研究から明かとなり「アメリカ生理学・内分泌学および代謝作用雑誌」に発表されました。

 肥満はインスリン抵抗性を誘導し、糖尿病や心臓病の発症のリスクが高まることが知られています。今回の研究から後天的な肥満や運動不足は、細胞内のエネルギー代謝に関与する遺伝子の発現を抑制することが分かりました。

 フィンランドに住む一卵性双生児24組を対象に、片方が肥満で、もう片方が肥満でない組み合わせや二人とも同じ体重などを調査しました。それぞれ、運動習慣や血液成分、脂肪組織、インスリン抵抗性などが測定されました。

 一卵性双生児の研究から、肥満や運動不足になると、細胞内にあるミトコンドリアの酸化的リン酸化に関与する遺伝子の発現が抑制されることが分かりました。また、ミトコンドリアの酸化的リン酸化として知られるエネルギー代謝過程に関与する遺伝子発現が抑制されるとインスリン抵抗性が誘導されることが明かとなりました。

 この研究は、遺伝子が同じ一卵性双生児の研究であることから、肥満や生活習慣などの環境が遺伝子の発現に影響を及ぼすことを示していると述べています。言い換えると、心臓病や糖尿病などは生活習慣病であることを示す結果です。

【文献】
Mustelin, L. et al.: Acquired obesity and poor physical fitness impair expression of genes of mitochondrial oxidative phosphorylation in monozygotic twins discordant for obesity,Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab., Online May 6, (2008) [doi: 10.1152/ajpendo.00580.2007]




□ 今週のレシピ:モモ・ネクタリン

○ 魚のネクタリン入りドレッシング
○ 黄桃と豚肉のカレーあん
○ モモのヨーグルト入りゼリー
○ モモのごま酢和え
○ ピーチゼリー
○ ネクタリンの白酢和え
○ ネクタリンと鶏肉のあんかけ
○ スパゲッティフルーツソース


作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.nn.zennoh.or.jp/recipe/kudamono/recipe19.html




□ 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その1

 20世紀の2型糖尿病予防食における果物は、なるべく食べないように指導されてきました。例えば、『果物にはブドウ糖や果糖が含まれているので、食べるならお菓子の代わりに間食で』とされていました。

 一方、21世紀に入って2型糖尿病について大規模な疫学研究や臨床研究など医・科学研究が行われ研究が急速に進展しました。その結果、果物は糖尿病予防に必須な食品と位置づけられました。例えば、アメリカ糖尿病協会の食事指針では果物の摂取量は1日当たり2〜4サービングとされ、ミカンなら2〜4個、大きなリンゴなら1〜2個です。

 2型糖尿病予防に対する果物の効果が明らかとなりましたが、『果物だけ食べていればいい』、『今までの食事に果物を追加すればいい」分けではありません。どちらも誤りです。単独で2型糖尿病予防に有効な食品はありません。

 すなわち2型糖尿病予防にはバランスの良い食事が重要です。「バランスの良い食事」なんて20世紀の昔から耳がたこになるほど聞いたとお思いでしょう。しかし、その中身が問題で、21世紀の研究の中心は「バランスの良い食事とは何か?」なのです。

 アメリカやヨーロッパで行われた研究の一例を紹介します。この研究は23年間の追跡調査のデータをもとにしています。フィンランドで男女4,304人を対象に追跡調査が行われました(文献1)。対象者の食習慣から、果物と野菜を多く摂取し、肉類などが少ないバランスの良い食事パターンの人たちと、バター、じゃがいもなどの摂取で特徴づけられるフィンランドの伝統的な食事パターン(欧米型食事)の人たちに分類されました。調査の結果、バランスの良い食生活の人は2型糖尿病のリスクが低く、フィンランドの伝統食の人は2型糖尿病のリスクが高いことが分かりました。

 こうした研究結果は、アメリカやヨーロッパの糖尿病予防食に影響を与え、果物と野菜の摂取量を増やし、赤肉や脂肪の摂取量を減らす食事バランス食が推奨されています。

 一方、我が国では、欧米の研究結果に対して、「欧米人と日本人では基礎代謝が違うので欧米の説をそのまま日本に当てはめることはできない」と説明されていました。

 2008年に行われた九州大学などによって報告された研究によれば、日本人と欧米人との違いはないことが分かりました(文献2)。九州大学と自衛隊病院とが共同して疫学調査を行いました。自衛隊員を対象に、3つの食事パターンと2型糖尿病発症との関係を調べた研究です。

 1)果物、野菜、乳製品、デンプンを多く摂取し、バランスの良い適度な食事パターン、2)動物性食品の摂取が多い欧米型の食事パターン、3)果物や乳製品の摂取の少ない我が国の伝統的な食事パターンのうち、1)のバランスのよい食事パターンの人は、そうでない人に比べて49%、2型糖尿病の発症リスクが低いことが分かりました。 他の2つの食事パターンは2型糖尿病のリスクを高めました。

 そして、この1)のバランスの良い食事パターンは、高血圧や高血糖が危険因子の脳卒中や心臓病予防のためにアメリカ国立衛生研究所などが提唱している「DASH食事摂取プラン」と類似していることも分かりました。DASH食では、1日の食事全体が2000kcalの場合、果物の摂取は320kcal〜400kcalです(ミカン44kcal/100g、リンゴ54kcal/100g)。

 こうした結果は、果物を食べると2型糖尿病予防に有効であることを示しています。 (つづく)

【文献】
1) Montonen, J. et al.: Dietary patterns and the incidence of type 2 diabetes. Am. J. Epidemiol. 2005,161: 219-227.

2) Mizoue, T. et al.: Dietary patterns and glucose tolerance abnormalities in Japanese men. J. Nutr. 136:1352-1358. (2006)




□ 品種紹介:モモ「あきぞら」

 「あきぞら」は「西野白桃(にしのはくとう)」と「あかつき」を交雑して育成されました。満開から140日後に収穫される晩生品種です。果肉は白色で、肉質は溶質・緻密で日持ち性が良好です。粘核で、糖度は14〜15%余りと極めて高く、酸味がわずかにあり、濃厚で優れた食味が特徴です。

「あきぞら」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/
kajunoheya/ikuseihinsyu/data/hinsyu/cu-akizora.html





□ EU学校フルーツ計画:果物と野菜を児童に無料配布

 EU(欧州連合)の行政府・欧州委員会は、EU域内の小学校の児童の健康を維持し肥満を減らすために、果物と野菜を無料で配布する食育構想・学校フルーツ計画(School Fruit Scheme)を発表しました。

 研究によると、健康的な食習慣は幼年期に形成されること、また、幼年期に果物や野菜を多く摂取している人は、成人してもそのまま良い食習慣が継続します。一方、果物や野菜の摂取量が少ない人は、その後も摂取量はあまり増えません。また、摂取量の少ない親の子供の摂取量も少ない傾向があります。さらに別の研究から、低所得世帯は、果物と野菜の摂取量が少ない傾向にあることを示しています。

 専門家は、健康によい食習慣は成人後の肥満のリスクが低下するため、心血管疾患や2型糖尿病などの重篤な生活習慣病のリスクを減らせると述べています。世界保健機関(WHO)は、果物と野菜を1日当たり400グラム摂取することを勧告していますが、若年層の摂取量が不足していることに苦慮しています。

 一方、小学校で行われた研究から、学校で果物と野菜の摂取の必要性を学習した家庭では、学習後摂取量が増える傾向にあることが分かりました。欧州委員会では、学校フルーツ計画により、果物と野菜のおいしさを知らない子どもに。幼年時から果物と野菜を食べる食習慣を身に付けさせることを目的としています。そのため、果物と野菜を児童に無料で学校に配ることを提案しています。欧州委員会では購入や配布などの費用は年間9000万ユーロ(約150億円)と見込んでいます。

上記情報のEUサイトは下記です。
http://ec.europa.eu/agriculture/
markets/fruitveg/sfs/index_en.htm





□ 文学の中の果物:水菓子屋の要吉(木内高音)

 そうすると、おかみさんは、要吉をにらみつけていいました。
「生意気おいいでないよ。なんにもわかりもしないくせに。そうそう安売りした日にゃあ商売になりゃあしないよ。」
「でも……」要吉は、もじもじしながらいいました。
「すてっちまうくらいなら、ただでやった方がまだましですね。」

 要吉は、それをいったおかげで、晩の食事には、なんにももらうことができませんでした。要吉は、お湯にもいかずに、空(す)き腹をかかえて、こちこちのふとんの中にもぐりこまねばなりませんでした。

 要吉は、その晩、ひさしぶりにいなかの家のことを夢に見ました。ある山国にいる要吉の家のまわりには、少しばかりの水蜜桃(すいみつとう)の畑がありました。梅雨があけて、桃の実が葉っぱの間に、ぞくぞくとまるい頭をのぞかせるころになると、要吉の家の人びとはいっしょになって、そのひとつひとつへ小さな紙袋をかぶせるのでした。要吉の家では、その桃を、問屋や、かんづめ工場などに売ったお金で一年中の暮しをたてていたのです。夏の盛りになると、紙袋の中で、水蜜桃は、ほんのりと紅く色づいていきます。要吉たちは、それをまた、ひとつひとつ、まるで、宝玉ででもあるかのように、ていねいに、そっともぎとるのでした。ですから、自分の家の桃だといっても、要吉たちの口にはいるのは、虫がついておっこったのや、形が悪いので問屋の人にはねのけられたのや、そういった、ほんのわずかのものでした。

 要吉は、ある年、近所へ避暑にきていた大学生たちが、自分の家のえんがわへ腰をかけて、一粒よりの水蜜桃をむしゃむしゃと、まるで馬が道ばたの草をでもたべるようにたべちらすのを見た時の、うらやましい驚きをいつまでも忘れることができませんでした。

 ――あんなに大事にしてそだてあげた水蜜桃も、こうした東京の店へくれば、まるで半分は、箱づみのままにくさっていくのだ。

 要吉はくやしさに思わず、太ったおかみさんのからだをむこうへつきとばした夢を見て目をさましました。

 と思うと、今度は、やぶの中へすててきた、ネイブルだの、バナナだの、パイナップルだのが、ひとつひとつ、ぴょんぴょんととび上がって、要吉の胸の上で、わけのわからないダンスをはじめました。そうすると、いつのまにか、いなかのおとうさんや妹たちの顔が、それをとりまいてめずらしそうに見物しています。

 ――ほんとうに、家の人たちは、まだバナナさえも見たことがないのだ。要吉は、夢の中で、そういいながら、ごろんとひとつ寝がえりをうつと、昼間のつかれで、今度は夢もなんにも見ない、深い眠りにおちていきました。



木内 高音(きうち たかね)
 1896年-1951年6月7日。長野県佐久市志賀出身。早稲田大学卒業後「赤い鳥」社社員となり、鈴木三重吉に学んで「赤い鳥」に作品を発表した。




□ 農林水産省子ども見学デー

 農林水産省は、平成20年度子ども霞が関見学デーの一環として下記の日程で子供達に公開します。皆様のおいでをお待ちしています。

日  程:平成20年8月20日(水)、21日(木)10時〜16時まで
受付場所;本館正面玄関

 詳細は下記のサイトで発表される予定です。また、平成18、19年度の子ども霞が関見学デーの様子もご覧いただけます。
http://www.maff.go.jp/j/kids/k_d/index.html




□ 夏休み特集:果物と理科自由研究

○ 「果物で電気を作ろう!」 小学部6年
http://www.jsscn.org/science/contents/200604.htm

○ 「木以外でも炭はできるのか?」 小学部6年
http://www.jsscn.org/science/contents/200606.htm

○ 「野菜や果物にデンプンがあるか調べよう」 小学部6年
http://www.jsscn.org/science/contents/200706.htm

○ 「酸素の発生」 中学部2年
http://www.jsscn.org/science/contents/200701.htm




□ 今週の果物

 今週は広島市への果物の入荷状況を紹介します。現在、地元産のブドウ「デラウェア」が多く流通しています。

 ブドウ「デラウェア」は広島、山形産、「巨峰」は福岡産などです。ニホンナシは福岡、佐賀産の「幸水」などです。

 モモは長野、和歌山、岡山産、スモモは福岡、長野、山形産、サクランボは兵庫産です。

 イチゴは兵庫、奈良産などです。メロンは静岡、高知産の温室メロンなどです。スイカは山形、北海道産です。 

 ミカンは大分産などで、ネーブルオレンジなどは大分、京都、兵庫産です。リンゴ(「ジョナゴールド」など)は青森産です。




□ 今日のフォト

 西遊記に登場する孫悟空は、仙人のもとに弟子入りし、筋斗雲(きんとうん)など72の術を習得しました。その後、天界の桃園の管理を任されましたが、管理を怠けた上に栽培されている仙桃である蟠桃(ばんとう)を食べ尽くしてしまいました。写真は孫悟空が食べたといわれる蟠桃です。円盤みたいな形をしています。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News53.html
  (掲載は次号まで)





☆ 編集部より ☆

 日中が暑いだけでなく暑い夜も続いており疲れがたまる頃ではないでしょうか。また、北京オリンピックが始まるので寝不足にご注意ください。そんな時、果物を食べるとビタミンがたっぷり補給できますよ。(tnk)

 私の好きな果物の2トップであるナシとモモがとってもおいしい時期になりました。寝起きの水分補給にナシ、風呂上りの熱さましにモモ。毎日のささやかな幸せです。(KT)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

 無断転載はお断りします。 リンクは自由です。

 詳しくは、著作権、リンクについて に記載しています。

 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

Copyright 2004-2008 田中敬一. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.



メルマガ果物&健康NEWS登録




サイト案内




くだもの
はたらき



果物と糖尿病予防


果物&健康Newsへ戻る
果物&健康Newsへ戻る


くだもの・科学・健康ジャーナルへ
くだもの・科学・健康ジャーナル
ホームページへ戻る