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■□ 果物&健康N8WS Vol.220
□■ 2008年10月24日(金)
みなさん、こんにちは。お元気ですか。 特集は「果実成分とその変化」です。
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◇ クリの名句
◇ くだもの健康豆知識:三内丸山遺跡とクリ
◇ 今週のレシピ:クリ
◇ 果実成分とその変化
◇ 読者から:果物の酸味の必要性について
◇ 品種紹介:クリ「伊吹」
◇ 読者から:交配と交雑の違いについて
◇ 文献紹介:果物を含むバランス食で心臓発作の予防
◇ 読者から:カキの記事への乾燥
◇ 文学の中の果物:決戦川中島(坂口安吾)
上杉謙信の巻―越後守安吾将軍の奮戦記―
◇ 今週の果物
◇ 読者から:岡山のブドウ
◇ 今日のフォト
◆ 広告
◇ 編集部より
□ クリの名句
行く秋や 手をひろげたる 栗の毬
(ゆくあきや てをひろげたる くりのいが
松尾芭蕉
「行く秋」は、離別を含んでいる表現で、「毬」は「伊賀」にかけています。「手をひろげる」は栗の毬の開いた状態のこと。伊賀門人に対する別れの句です。
□ くだもの健康豆知識:三内丸山遺跡とクリ
クリは大昔から日本人に食べられていました。縄文時代の遺跡である青森市の「三内丸山遺跡」(約5500年前)では大量のクリ果実の痕跡が見つかっています。
縄文時代の三内丸山遺跡には大規模なクリ栽培の跡があることから、そのころ食べられていたクリは野生種ばかりではなかったと考えられています。クリは良質なデンプンに富み、長期保存が可能なので古くから日本の食生活・食文化の形成に深く関わっていました。
縄文前期・中期には現在の気温と比べて、平均気温で2度ほど高いと考えられています。そのため、温暖であった東北地方が文化の一大中心地であったと考えられています。
□ 今週のレシピ:クリ
○ 栗鹿の子
○ 栗大福
○ 丹波くりのスピードおこわ
○ 丹波くりの渋皮煮
材料、作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.jakyoto.com/modules/
weblinks/viewcat.php?cid=22
□ 果実成分とその変化
果物には多種多様な成分が含まれています。こうした成分の多くは、生育中や収穫後も変化しています。この変化が私たちに望ましい場合と、望ましくない場合とがあります。
○ 色の変化
色とりどりの果物は私たちを楽しませてくれます。果実は生育中は果皮が緑色(葉緑素)が一般的ですが、成熟するに従って緑色が消失します。そして、アンズ、カキ、カンキツ類などは黄色や橙色などの色素であるカロテノイドが増加します。グレープフルーツの
赤い色はカロテノイドの一種であるリコピンです。
カロテノイドのうち、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンはプロビタミンAと呼ばれ、人の体内では分解してビタミンAとして働きます。
リンゴやサクランボ、赤肉のオレンジなどの赤色や、ブドウ、ブルーベリーなどの紫色はアントシアニンです。アントシアニンは抗酸化成分として健康の維持・増進に役立っています。
○ 糖質成分の変化
果実の甘味は、ショ糖(スクロース)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)や、糖アルコールであるソルビトールなどから構成されています。こうした糖類は果実が成熟するに従って増加します。
収穫されると、果物に含まれている糖の質と量が変化します。収穫後、ウメやスモモなどでは糖含量が大きく減少しますが、他の果実は一般的には糖の全体量はあまり大きく変化しません。一方、糖の組成も貯蔵中に変化します。一般的にショ糖が分解してブドウ糖と果糖に変わることが知られています。
ショ糖は、自然でソフトな甘みで、甘みが舌に持続します。ブドウ糖の甘味度はショ糖の0.64〜0.74倍で、さわやかな甘みがあります。果糖の甘味度は1.15〜1.73倍で、糖類の中で最も高い部類に属しており、あっさりした甘みがあります。
糖組成は果実の種類によって異なり、その違いが味の違いを構成しています。ウンシュウミカン、バナナ、モモなどではショ糖が多く、ウメ、キウイフルーツなどではブドウ糖が多く、セイヨウナシ、ニホンナシ、リンゴなどでは果糖が多く、ブドウなどではブドウ糖と果糖がほぼ等量含まれています。
○ 有機酸の変化
果物に含まれている酸味成分である有機酸は生育途中で多く、成熟に従って減少します。有機酸組成は果実の種類によって異なり、その違いが風味に影響します。
有機酸含量は果物の種類や品種によって異なりますが、同じ品種でも産地や年次によって左右されます。一般に冷涼な年や地域の果実に比べて、温暖な年や地域の果実は有機酸含量が少ないことが知られています。
また、収穫後、果実に含まれている有機酸は呼吸の基質として使われるので貯蔵中に減少します。カンキツなどでは、有機酸が糖より呼吸の基質として早く使われることを利用して酸味を減らすこともできます。
有機酸の酸味度はクエン酸を1とするとリンゴ酸は1.1〜1.2で、酒石酸の酸味度は1.1〜1.3です。クエン酸が多い果実はウメ、カンキツ類など、リンゴ酸が多い果実はリンゴ、アンズ、ニホンナシなど、酒石酸が多い果実はブドウなど、クエン酸とリンゴ酸がほぼ等量の果実はセイヨウナシなどです。
□ 読者から:果物の酸味の必要性について
お世話になります。
いつもメルマガ楽しく拝見しておりますFです。基本的なことか判断もできないのですが不躾ながら質問のメールを送信させていただきます。
果物を食べるのに、甘いことを期待するのですが、酸味が強いものがあります。最近はこの酸味が体によいことを知り受け入れていますが、ブドウやスモモなど種の廻り、皮の近くなど強く感じます。
そもそも、この酸味、どうしてこの部分に多く、なんで果物に必要なのでしょうか。 (フル太)
【編集部より]
メールありがとうございました。果物の酸味を構成している成分はクエン酸やリンゴ酸などの有機酸です。果物は他の食材と比べて有機酸含量が多いことが特徴の1つです。しかし、なぜ、果物に多く含まれているのかは、よく分かっていません・
有機酸は生物の基本的な代謝経路であるTCAサイクル(クエン酸回路)の重要な成分です。果物の有機酸含量は、生育途中で高く、成熟するにつれて減少してきます。通常であれば酸味を感じないモモなど有機酸含量の少ない果物でも、成熟しても有機酸含量が残っていると酸味を感じます。
□ 品種紹介:クリ「伊吹」
「伊吹(いぶき)」は「銀寄(ぎんよせ)」と「豊多摩早生(とよたまわせ)」を交雑して育成された早生品種で、9月上中旬に収穫することができます。果実は25g程度で果形は帯円短三角形で果頂部はやや尖っています。果肉は淡黄白色です。果肉はやや粉質で甘味は中程度、香気は多くありませんが、早生品種としては双子果、裂果が少なく、品質が優れています。
「伊吹」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/kajunoheya/
ikuseihinsyu/data/hinsyu/cu-ibuki.html
□ 読者から:交配と交雑の違いについて
柿の季節です。小さい頃から毎年渋柿のへたに焼酎を付けてビニールに入れ縛って2週間位だったか待ち遠しかった思い出があります。会津の山奥でしたから柿も「見知らず柿」と呼ばれるほど(身の程知らずに身を付ける意味だと思います)渋柿の実を付けていました。会津若松市に高校時代下宿していた大きな屋敷の中庭に大きな柿の木があり小学校に上がる前の小さい子供二人に木によじ登って取ってあげた思い出があります。
さて本号の中について質問です。
品種紹介のところで「交雑して育成された」との表現がありますが、昔(私は58歳)は「交配」という言葉で植物も動物にも使われていたとおもうのですが。今新型インフルエンザウイルスに関する本を読んでいるのですが、H5N1ウイルスはDNAではなくRNAなので非常に不安定で「交雑」しやすい との表現が使われていて交配とは1度も使っていません。「人の手による操作」のような何か使い分けの原則のようなものがあるのでしょうか?
それと文献紹介のところで、かっこ閉じ )はあるのですが、前かっこがありません。カロテノイドのすぐ後に入るのでは?
この果物ニュースのおかげで果物を欠かさず食べています。20代、30代は忙しく1週間に1度も食べないことがしょっちゅうでした。たまに間苧谷さんの署名があり何と読むのか分からなかったのですが、昨日食品開発展で『果物の真実』化学工業日報社という本を見つけ著者が「まおたに」間苧谷さんになっていました。
今後もいい分かりやすいニュース期待しています。
by 砂町隆(ぺんねーむ)
【編集部より]
メールありがとうございました。交雑と交配の使い分けに明確な区別はありません。ただ、園芸分野では交雑を使うのが一般的です。その理由は、果樹栽培で人工交配(花粉を人工的にめしべに受精)と区別するためなどによります。
□ 文献紹介:果物を含むバランス食で心臓発作の予防
世界の共同研究チームは、52ヵ国の調査結果から欧米型食生活は、心臓発作のリスクを高め、果物や野菜などを多く摂取するバランス型の食生活はリスクを減らすと、アメリカ心臓病協会の「循環器」のオンライン版(10月20日)に報告しました
研究では、世界52カ国の1万6000人を対象に食習慣を調べ、食事パターンごとに心臓発作との関係を解析しました。食事パターンは3つに分類されました。1)果物や野菜を多く摂取することに特徴があるバランス型食事パターン、2)油で揚げた食品、塩辛いスナックや卵、肉の摂取が特徴の欧米型食事パターン、3)豆腐や醤油などの摂取が特徴の東洋型食事パターンです。
調査の結果、果物や野菜を多く食べる人は、ほとんど食べない人に比べて、心臓発作のリスクが30%低いことが分かりました。一方、欧米型の食事をする人は、揚げ物や肉をほとんど食べない人より、心臓発作のリスクが35%高い結果となりました。また、東洋型の食事パターンは、心臓発作のリスクとの関係は見いだされませんでした。
以上の結果から、果物と野菜を多く摂取する食事パターンはグローバルな観点からみても推奨できると研究者らは述べています。
【文献】
Iqbal, R. et al.: Dietary Patterns and the Risk of Acute Myocardial Infarction in 52 Countries. Results of the INTERHEART Study. Circulation. online Oct. 20, (2008) [doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.107.738716]
□ 読者から:カキの記事への乾燥
> 編集部のコメント
> カキを好む人の割合は年齢と比例していて、若い人はあまり食べ
> ません。その理由ははっきりしませんが、庭からカキの木がなくな
> っていく速度と関係があるかも知れません。カキの木に触れる機会
> のない若い人はカキに対して特別な愛着や郷愁を感じないためでは
> ないか、と思っています。(tnk)
同感です。
私は柿が大好きな還暦一歩手前の果樹愛好者です。私の娘も柿にはほとんど見向きもしません。無理に食べろと言えば食べる程度です。
やはりご指摘のように、柿は餓鬼の頃自分で取り、自分で剥き食べた果物でした。
趣味で栽培している果樹の中では最も木の数が多く、多分3、40本はあります。ほとんど垣根ですが、種類は次郎・富有・禅寺丸・筆柿・渋柿3種・絵御所・甘百目などです。植えて10年ほどの木が数本あり、一本の木に数種類の柿が稔ります。新秋も欲しいのですが、植える場所がありません。接木の枝だけ欲しいのは贅沢ですかね。 以上 (遠山友樹)
【編集部より]
メールありがとうございました。カキについて、皆様の想い出、失敗談などのメールをお送り下さい。楽しみにしています。
□ 文学の中の果物:決戦川中島(坂口安吾)
上杉謙信の巻―越後守安吾将軍の奮戦記―
余の率いし兵一万三千なお二万の留守兵を春日山に残して敵の奇襲に備えしめた。
およそ戦は兵力の大に頼るべからざるものだ。各人それぞれバイたらんとすれば足る。いたずらに数の大なるものは機動力を失うのである。
しかし余が春日山に二万の留守兵を残したのは、単にそれだけの意味ではなかった。むしろ信玄の作戦に無言の牽制を加えることが第一の狙いだ。彼の如くに術策を事にするヤカラは人の術策を疑い怖れるもので、春日山にとどまる二万の留守兵の動向は、彼に不断の迷いと不安を与えるに相違ないからである。
余の選定せる戦場は川中島。そこには敵の誇る要害海津城がある。四囲の山と川を利用し、諸国の要塞の粋をとって築城したもので、当時は高坂弾正(だんじょう)が守備していた。
この城塞は規格が小であるから、中に収容しうる兵力はせいぜい二千足らずであるが、余が一万三千の兵力をもって突入をはかっても一朝一夕には抜きがたい要害であった。もとより余はこの小塁を抜くために多くの犠牲を払うが如き愚は考えていない。ただこれを攻めると見せて、信玄の出陣をうながすためであった。
余は途中一万三千の兵力を二手に分け、一は北国街道より、一は富倉峠より信濃に入り、善光寺に休憩。折から栗の季節であるから、栗ヨーカンを食ったのち、大荷駄と五千の兵を善光寺に残し、余は小荷駄と八千の兵を率いて川中島を横切り、妻女山に本陣を構えたのである。
松代方面からの山脈が川中島の中央部に突入して終っているのが妻女山で、山脈の終点だから最も低い山ではあるが、川中島へ突入しているために川中島の全貌が手にとる如くに見分けられる。北方は遠く善光寺まで見通しだ。
☆
坂口 安吾(さかぐち あんご)
1906年(明治39年)10月20日 - 1955年(昭和30年)2月17日。本名は炳五(へいご)。代用教員を経て、東洋大学文学部印度哲学倫理科卒。純文学、歴史小説、推理小説、文芸エッセイなど、幅広く活動した。無頼派と呼ばれる作家の一人。
□ 今週の果物
今週は京都市の青果市場に入荷している果物を紹介します。この時期は、ミカン、リンゴ、カキが豊富に取り扱われています。産地別では和歌山産の果物が圧倒的に多く入荷しています。次いで、青森、長野、奈良、福岡産と続きます。
ミカンは和歌山、福岡産などです。
リンゴ「つがる」は青森産、「ジョナゴールド」は岩手産、「王林」は山形、福島産、「ふじ」は青森、山形産などです。
甘ガキは奈良、福岡産、渋ガキは和歌山、奈良産です。
ニホンナシは富山産の「新高」などで、セイヨウナシは長野、岩手産などです。ブドウは長野産の「巨峰」のほか岡山産の「ニューピオーネ」などです。
クリは愛媛産など、スモモは北海道産、イチゴは北海道産、メロンは北海道、茨城、静岡、山形産産などです。スイカは鳥取、高知産、キウイフルーツは福岡産です。
□ 読者から:岡山のブドウ
いつも果物&健康NEWSの配信ありがとうございます。毎回参考になることが多く楽しみにしています。
さて、Vol.218の今週の果物の項のブドウですが、「巨峰」は岡山にはほとんどありません。「ニューピオーネ」の間違いだと思いますので、参考までに連絡します。 (岡山:Y)
【編集部より]
ご指摘ありがとうございました。上記のように訂正させていただきました。
□ 今日のフォト
「かちかち山」など昔話にクリが沢山登場します。苗字や地名にも「栗」の文字がよく使われています。地名に大栗が使われているのは京都市などで沢山見つかります。昔々大きな栗の木があったのではないかと思われます。写真はクリの実が落ちたあとのイガ(毬)です。手のひらを広げているように見えます。
行く秋や 手をひろげたる 栗の毬 − 芭蕉
http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News64.html
(掲載は次号まで)
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☆ 編集部より ☆
出前講座を続けているフルーツルネッサンス21(略称;フルネ21)の200回記念の会に出席させていただきました。出前講座での経験や、有益なお話を伺えました。そのことについては次回紹介しますが、今回はカキについての情報をお知らせします。カキはニンジンの代わりに料理に使えるそうです。ネギとカキの油炒めは子供達にも好評とのことでした。(tnk)
庭でヤマボウシを植えており、父がその実を取って卓上においてありました。私はヤマボウシの実をよく見たこともなく、今回初めて食べてみました。皮はおいしくなかったのですが、完熟すると果皮も甘くなっておいしいそうです。しかし、残念ながら完熟したものは食べられそうにありません。鳥があっという間に取っていってしまいます。(KT)
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