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第237回 糖尿病専門医に紹介したくだものの働き
     (その7) 果物の糖分にはリスクがあるの?

  




■□ 果物&健康N8WS Vol.237
□■  2009年3月13日(金)


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「糖尿病専門医に紹介したくだものの働き(その7)」です。
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 ◇ 梅の花の句
 ◇ 今週のレシピ:ホワイトデー
 ◇ 糖尿病専門医に紹介したくだものの働き
   (その7) 果物の糖分にはリスクがあるの?
 ◇ 品種紹介:カンキツ「南香」
 ◇ 文献紹介:不健康な生活習慣は脳卒中のリスクが2倍に
 ◇ 読者から:旬の果物
 ◇ 文学の中の果物:二つの正月(寺田寅彦)
 ◇ 果物花便り:彦根城梅林(滋賀県)
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◆ 果物&健康NEWSをご紹介ください
 ◇ 編集部より



□ 梅の花の句

    春もややけしきととのう月と梅

      松尾芭蕉

 2009年3月13日(金) 月は丸く見えます。
 東京の月の出 20:14、月南中時 0:56、月の入り 6:35




□ 今週のレシピ:ホワイトデー

○ オレンジクッキー

材料
 オレンジピール 50g、オレンジエッセンス 少々、無塩バター 160g、卵 1/2個、生クリーム 大さじ2杯、薄力粉 200gなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.hokkaido-gas.co.jp/paradise/599.html

○ ブリオッシュ シュクレ

材料
 オレンジピール 70g、卵 150g、モルトエキス 3g、無塩バター 120gなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.hokkaido-gas.co.jp/paradise/725.html




□ 糖尿病専門医に紹介したくだものの働き
  (その7) 果物の糖分にはリスクがあるの?


 「果物にはショ糖や果糖、ブドウ糖などの糖分が含まれているから、摂取すると肥満や高脂血症、冠動脈心臓病、糖尿病などの原因となるので、果物の摂取は控えるように」と記述されることがあります。しかし、1986年、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、食品から供給される糖分(ショ糖、果糖、ブドウ糖など)と健康リスクとの関係について1,000以上の文献を検討し、研究結果の再評価を行いました。その結果、糖分は肥満、糖尿病、冠動脈心臓病、高血圧などの疾病については、糖が直接的な原因であるという明確な証拠はないと結論づけました(文献1)。その論文は「栄養学雑誌」に掲載されましたが全部で216ページとなり科学論文としては異例の長さでした。

 この結論は、おおよそ百年間信じられてきた糖分と健康に対する見解のコペルニクス的転回であったため世界の医師、栄養関係の研究者を驚かせました。そこで、1997年5月イタリアのローマでFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の両国際機関が合同して「FDAの結論は正しいか?」について、世界中から集めた専門家による再検討が行われました。その結果、「糖類の摂取は肥満を促進する」という考えは誤りであり、ショ糖や果糖などの糖分が生活習慣病に直接結びつくことはないとし、1986年のFDA報告の結論
を支持しました(文献2)。

 しかし、我が国ではその後も、「冠動脈疾患を発症しないために中性脂肪を減らすには、(1)脂質をとりすぎない、(2)糖分をとりすぎない、(3)アルコールを飲みすぎない、(4)果物を食べすぎない、(5)適度な運動をする。」との記述がマスメディアにしばしば登場し、果物に含まれている果糖など糖分が中性脂肪を増加させると疑われていました。

 そこで、日本人に対して農研機構果樹研究所(つくば)の研究チームは、果物の中では比較的果糖を多く含むリンゴと中性脂肪の増減との関係を調査しました(文献3)。その結果、リンゴを1日当たり1個半から2個(平均420g)を3週間摂取してもらったところ、摂取する前と比べて中性脂肪値が統計的に有意に21%減少しました。この結果は、よく言われていた、「果物は、果糖が多いので中性脂肪を増やす」、とする説をくつがえす結果でした。この成果が発表されてからは、「果物にはリスクがある」との説は急速に減りました。また、リンゴの消費の拡大にもつながりましたが、このことは果物に対する誤解の広がりと根深さを感じさせる結果となりました。

 また、果糖やブドウ糖を含む果物は血糖値を上げやすいと考えられていましたが、前回紹介したように果物は血糖値を上げにくい食品であることが分かりました。こうした研究の結果から糖尿病やガン、高血圧などの生活習慣病予防には果物の摂取が必須であるとし、果物を含む食生活体系の確立へと発展しました。従って、「果物の
糖分にはリスクがある」は誤解です。

(つづく)

【文献】
1) Glinsmann, W.H. et al.: Evaluation of health aspects of sugars contained in carbohydrate sweeteners. Report of Sugars Task Force, 1986. J. Nutr. 116: S1-S216. (1986)

2 FAO Food and Nutrition Paper No 66. Carbohydrates in Human Nutrition. Report of a Joint FAO/WHO Expert Consultation.
FAO Rome (1998)

3) 間苧谷徹・田中敬一.くだもののはたらき-改訂版-.(2005) 日園連.




□ 品種紹介:カンキツ「南香」

 「南香(なんこう)」は「三保早生(みほわせ)」と「クレメンティン」を交雑して育成された品種で、熟期は12月中旬頃です。果実はウンシュウミカンより丸みのある扁球形で果実重は130g程度です。果皮は濃橙色から淡赤橙色で、剥皮性はウンシュウミカンよりやや悪く、肉質はやや粗いのですが,糖度は13度程度で品質が優れています。品種の名前は育成地(長崎県南高来郡(みなみたかきぐん))一帯の呼び名「南高(なんこう)」とこの品種のもつ良香に因みます。

「南香」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/kajunoheya/ikuseihinsyu/data/
hinsyu/cu-nanko.html





□ 文献紹介:不健康な生活習慣は脳卒中のリスクが2倍に

 イギリスの研究チームは生活習慣と脳卒中との関係を調べ、不健康な生活習慣をしている人は健康的な生活習慣の人に比べて脳卒中のリスクが2倍以上にになると「イギリス医学雑誌」に発表しました。

 研究では約20,000人の成人を対象に脳卒中と生活習慣を11年間追跡調査したところ、喫煙、過度の飲酒、不十分な運動、果物や野菜の摂取不足などの不健康な生活習慣は脳卒中のリスクを高めることが分かりました。

 喫煙、飲酒などの生活習慣をポイント化し、最も健康的な場合を4ポイントとし、最も悪い場合を0ポイントとして比較しました。その結果。ポイント0の人は2.3倍も脳卒中のリスクが高いことが分かりました。

 これまで、個々の生活習慣(喫煙や飲酒など)の一つ一つについて脳卒中のリスクを高めることは報告されていましたが、不健康な生活習慣が組み合わされた場合の影響は明らかではありませんでし
た。

【文献】
Myint, P. K. et al.: Combined effect of health behaviours and risk of first ever stroke in 20,040 men and women over 11 years' follow-up in Norfolk cohort of European Prospective Investigation of Cancer (EPIC Norfolk): prospective population study. BMJ, 2009;338:b349, (2009) [doi: 10.1136/bmj.b349]




□ 読者から:旬の果物

 果物&健康NEWS メルマガ いつも楽しく読んでます。とても参考になります。今の時期、ハッサクをセッセと食べています。一日2〜3個。ミカンにはβークロプトキサンチンが多く含まれているのでガンの抑制作用があるとか。

 実は私事ですが、一昨年食道がんの手術をしまして今は普通どおりの生活をしてますがパンよりもコメのほうがカラダに合っているような気がします。なにか関係があるのでしょうか?果物はミカン以外にリンゴ、バナナ等を食べてますがこれらは喉の通りがよくカラダにいいような気がします。これからも旬の果物を食べようと思っています。   (大分県:豊後水道の関アジ)

【編集部より】
 メールありがとうございました。ガン予防の研究が進展・蓄積し、世界ガン研究基金では食品(食生活)のガン予防効果について科学的判定が行われました(「食品、栄養、運動とガン予防」2007年)。その結果、ミカンだけでなくリンゴやバナナなど季節ごとの様々な果物を食べることがガン予防及び再発予防に有効と判定されました。そして、果物を含むバランスの良い食事の摂取を推奨しています。なお、治療中は医師の指示に従って下さい。今後ともご愛読、お願いします。




□ 文学の中の果物:二つの正月(寺田寅彦)

 明治四十二年の暮には南ドイツからウィーンを見物してヴェニスに泊ったのがちょうどクリスマスであった。クリスマスは旅人を感傷的にする夕だと誰かが云った通りである。薄暗い狭い路地のような町をゾロゾロ歩いている人通りを見ただけでああた。フィレンツェ、ローマを経てナポリに着いたのが、ちょうど大晦日であった。妙に生温かい、晴れるかと思うと大きな低い積雲が海の上から飛んで来てばらばらと潮っぽい驟雨(しゅうう)を降らせる天候であった。ホテルのポルチエーが自分を小蔭へ引っぱって行って何かしら談判を始める。晩に面白いタランテラの踊りへ案内するから十時に玄関まで出て来いというらしかった。借りた室の寝台にはこの真冬に白い紗(しゃ)の蚊帳(かや)がかかっていた。日本やドイツの誰彼に年賀の絵端書を書きながら罎詰のミュンシナーを飲んでいるうちに眠くなって寝てしまった。

 明くれば元旦である。ヴェスヴィオ行きの準備をして玄関へ出ると、昨日のポルチエーが側へ来て人の顔を見つめて顔をゆがめてそうして肩をすぼめて両手の掌(てのひら)をくるりと前に向けてお定まりの身振りをした。

 ヴェスヴィオの麓までの馬車には年取った英国人の夫婦と同乗させられた。英国の婆さんは英語のわからぬ御者というものがこの世に存在し得るという事実だけは夢想することも出来ないように見えた。しかし裾野の所々に熟したオレンジの畑は美しく、また日本の南国に育った自分にはなつかしかった。フニクラレの客車で日本人らしい人に出会って名乗り合ったら、それは地質学者のK氏であった。このケーブル線路の上の方の部分は近頃の噴火に破壊されていたので徒歩の外に途はなかった。風があまりに強いために他の乗客は皆登山を断念して引返したので結局この二人の日本人だけが登ることになった。地理学書でもまた物語でも読んで知っていたアトリオ・デル・カヴルロとかソマムとか、こういう名前も何となく嬉しく、また地質学者から教わる色々の岩石の名前も珍しかったと見えてよく覚えている。紺碧のナポリの湾から山腹を逆様(さかさま)に撫で上げる風は小豆大(あずきだい)の砂粒を交えてわれわれの頬に吹き付けたが、ともかくも火口を俯瞰(ふかん)するところまでは登る事が出来た。下り坂の茶店で休んだときにそこのお神さんが色々の火山噴出物の標本やラヴァやカメーの細工物などを売付けようとしたが、こしらえもののいかものだけはわが地質学者を欺く訳に行かないのがおかしかった。片言のイタリア語でお神さんに「コレ、日本の地質学者。……ダメ」と云ったようなことを云ってやったつもりである。




□ 果物花便り:彦根城梅林(滋賀県)

 彦根城内にある、約400本の紅梅や白梅が咲き誇る梅林は、江戸時代には米蔵があった場所です。1950年、彦根城が新日本観光地百選に選ばれたのを記念して梅が植えられました。期間中の休日は「観梅会」と題され野点茶会や琴の演奏会なども開かれ、香りの高い梅の花を愛でる大勢の人々で賑わいます。

2009年3月5日の開花状況:ちらほら
今年は例年よりも少し早く花が咲きはじめました。見頃は3月中旬ごろです。

イベント名:春の訪れを感じる梅林
場 所:彦根城内梅林(滋賀県彦根市)
期 間:2007年3月15日〜3月31日

彦根城の梅林の開花情報は下記のサイトです。
http://www.hikoneshi.com/info/?itemid=510




□ 今週の果物

 今週は沖縄の青果物市場に入荷している果物について紹介します。地元産は晩柑類、ビワ、スイカなどです。取扱量の多い果物は晩柑類、リンゴ、イチゴなどです。産地別では沖縄、青森、宮崎、愛媛、熊本産などです。

甘ナツミカンは熊本産、イヨカンは愛媛産、ハッサクは福岡産と、その他沖縄産の晩柑類などです。

リンゴ「ジョナゴールド」、「王林」、「ふじ」はそれぞれ青森産です。

イチゴは宮崎、熊本産などです。
 
ビワは沖縄産です。キウイフルーツは愛媛、福岡産など、ニホンナシは大分産です。

メロンは宮崎、鹿児島産など、スイカは沖縄産です。




□ 今日のフォト

 いつもと違う道で、ほのかにただよう梅の香りを感じると心の緊張がほぐれ得をしたような気分になります。つくば市周辺ではあちこちで梅の花が満開です。桜と違って梅の花は長く楽しめます。写真はシダレウメです。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News79.html
  (掲載は次号まで)





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☆ 編集部より ☆

 最近発表された果物とリスクについての報告で、研究論文の意味やその社会的位置づけに疑問を感じました。研究者など専門家の社会的役割と責任とは何かについて考えさせられました。(tnk)

 父母が勝浦に旅行に行ってきました。おみやげはイチゴのとよのかでした。こんなに甘いイチゴがあっていいのだろうかと言いたくなるくらいおいしいイチゴでした。値段を聞いたところ、1パック1000円。そういうことかと妙に納得してしまいました。(KT)





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