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第243回 糖尿病専門医に紹介したくだものの働き
   (その11) 果物の果糖と蛋白糖化(グリケーション)との関係

  




■□ 果物&健康N8WS Vol.243
□■  2009年4月24日(金)


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「糖尿病専門医に紹介したくだものの働き(その11)」です。
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毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp

::■ 本日のメニュー ■::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ◇ 梅−新古今集
 ◇ 今週のレシピ:パインアップル
 ◇ 糖尿病専門医に紹介したくだものの働き
   (その11) 果物の果糖と蛋白糖化(グリケーション)との関係
 ◇ 品種紹介:パインアップル「N67−10」
 ◇ 文献紹介:運動中の脂肪燃焼を促進する朝食
 ◇ 文学の中の果物:正義と微笑(太宰治)
 ◇ 果物花便り:弘前りんご公園(青森県)
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◆ 「読者から」への投稿方法がかわりました
 ◇ 編集部より



□ 梅−新古今集

  大空は梅のにほひに霞みつつ くもりもはてぬ春の夜の月

      − 藤原定家 新古今集 −




□ 今週のレシピ:パインアップル

○ ハワイ風そうめん

材料(そうめん 4人分)
 フルーツつゆ:パイナップル 50g、豚ひき肉 100g、マカデミアンナッツ 20g、コンソメスープ 2カップ、しょうゆ 大さじ1杯、な


作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.bob-an.com/recipe/OutputMain.asp?KeyNo=
10131&PG=86681105&ST=&Z=01&CTop=0&D=3&RC=%
82P%82O&cnt=1&sch=%83p%83C%83i%83b%83v%83%8B


○ パインアップルのコンポート紅茶風味

材料
 パインアップル 1/4個、紅茶のシロップなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.ja-okinawa-fm.net/recip/008/post_7.html




□ 糖尿病専門医に紹介したくだものの働き
  (その11) 果物の果糖と蛋白糖化(グリケーション)との関係


【専門医からの質問】
 糖尿病の合併症や病状悪化の原因となる蛋白糖化(グリケーション)に果糖摂取が原因の一つであることが知られている。果物には果糖が含まれているが問題ないか?

【回答】
 糖尿病は血液中のブドウ糖(血糖)が高い状態になって持続する代謝異常の疾患です。血糖検査で、1)随時血糖値が200mg/dL以上、2)空腹時血糖値が126mg/dL以上、3)75gブドウ糖負荷試験で2時間値が200mg/dL以上のいずれかに該当すると糖尿病型と判定されます。そして、蛋白糖化の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c:用語解説1)が6.5%以上で、のどの渇きや多飲・多尿、体重減少など糖尿病に特徴的な症状や、合併症があれば糖尿病と診断されます。

 私たちは、食物中の栄養素である炭水化物、脂質、タンパク質を消化・吸収し、生命を維持し活動するためのエネルギーを得ていますが、そのうち最もよく使われるのが炭水化物です。炭水化物は消化・吸収された後、ブドウ糖となって肝臓へ送られ、その一部が脳や筋肉で利用され、残りが肝臓内にグリコーゲンとして蓄えられます。そして、 さらに余った分は脂肪になります。従って、糖質を主なエネルギー源としているヒトなどの生物は、代謝過程で蛋白糖化の影響を受けます。

 蛋白糖化の代表的なヘモグロビンA1c(HbA1c)は血糖値の指標として糖尿病治療で臨床応用されています。また、糖尿病では様々な蛋白質糖化反応生成物が合併症の進行に関与していることが明らかになり、病態生理機構の解明、予防、治療の研究が行われています。さらに近年、蛋白質糖化反応は老化、認知症、ガン、高血圧、動脈硬化などにも関与していることが明らかなってきました。

 こうした研究の一環として蛋白糖化と果糖との関係が調べられ、果糖を摂取した動物で蛋白糖化反応が起きることが知られています。しかし、こうした研究は食餌の炭水化物源として果糖のみとするケースや果糖の過剰投与などで、生体内で異常な糖代謝が起きていると考えられます。過剰投与すればビタミンでも生理障害が起きます。従って、ヒトの日常生活における摂取量と蛋白糖化との関係を明らかにする必要があります。

 私たちの食生活の中で果糖が含まれている代表的な食品は、果物、ハチミツ、砂糖、果糖の添加された飲料などです。そこで、イギリスの研究チームが。純粋な果糖(トウモロコシから作られた高果糖シロップ)のデータを除いた8つの研究論文のデータを用いて果糖と蛋白糖化との関係についてメタアナリシス(用語解説2)分析を行いました(文献1)。

 分析の結果、食事の中に含まれている果糖は、蛋白糖化の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)の濃度を下げる効果があることが分かりました。対象研究において果糖の摂取量が1日当たり88gの場合は60gの場合よりもヘモグロビンA1cの濃度が低いことが分かりました。実験データの摂取量と摂取日数を統計処理した結果、この蛋白糖化抑制効果は果糖の用量依存性を示しました。

 この蛋白糖化抑制結果に対して研究者らは、果糖が血糖値を上げないためではないかと考察しています。果物には果糖が含まれていますが、100g当たり多いものでブドウの10g、リンゴの5-6gです(表、文献2)。以上のことから果物の摂取が蛋白糖化に結びつくことはないと考えられます。

 さらに、近年の蛋白糖化の研究の進展により、果物などに多く含まれているフラバノールやアントシアニン、プロアントシアニジン、レスベラトロールなどポリフェノールが蛋白糖化にかかわる作用を阻害することも明らかになってきました。こうしたことから果物を含む栄養バランスの良い食事が糖尿病予防に有効であると考えています。


表 果物の糖組成 (g/100g果肉)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         ショ糖  ブドウ糖  果糖
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アンズ      〜5〜  〜2〜   少量
ウンシュウミカン 5〜6  1〜2   1〜2
カキ       〜7〜  〜4〜   〜2〜
キウイフルーツ  〜0.5〜  〜4〜  〜4〜
オウトウ     〜05〜  4〜5   2〜5
ニホンナシ    2〜5  1〜2   3〜5
ブドウ      〜0.5〜 5〜10  6〜10
モモ       5〜7  1〜3   1〜3
リンゴ      2〜3  2〜4   5〜6
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 
【用語解説】
1) ヘモグロビンA1c(HbA1c)とは、血管内でブドウ糖がヘモグロビンに結合してグリコヘモグロビン(HbA1c)を形成している状況を示しています。ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白質で、身体の隅々に酸素を運搬する役割を担っています。

2) メタアナリシスとは、過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを統合して、統計処理を行う手法です。採用するデータは、信頼できるものに限り使用します。そのため、この手法で得られた結論の信頼性は高いと考えられています。

【文献】
1) Livesey, G. and Taylor, R.: Fructose consumption and consequences for glycation, plasma triacylglycerol, and body weight: meta-analyses and meta-regression models of intervention studies. Amer. J. Clinic. Nutr. 88: 1419-1437. (2008)

2) 間苧谷徹・田中敬一:くだものの働き.日園連.東京.(2005)

(つづく)




□ 品種紹介:パインアップル「N67−10」

 パインアップル「N67−10」は、アメリカ・ハワイ州から導入した品種群の中から栄養系分離により選抜された品種です。果実の大きい省力多収型の加工用品種です。夏実着生時に、えい芽は1本程度、吸芽も1本程度発生します。夏実の熟期は中熟性で中生の品種です。果実は1600g程度でやや円錐形です。果皮は黄橙色、果肉は黄白色で果肉の硬さは中程度、果汁が多く含まれています。夏実の糖度は14%程度、酸度は0.7%程度です。夏実以外の春実、秋実、冬実ほど糖度が低く、酸度が高くなる傾向にあります。

「N67−10」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/kajunoheya/ikuseihinsyu/
data/hinsyu/pr-n67-10.html





□ 文献紹介:運動中の脂肪燃焼を促進する朝食

 小規模な研究ですが、仕事や生活が座業中心の場合、リンゴやモモのような食物繊維が多く、グリセミック・インデックス(GI)値の低い食品を朝食に摂取すると脂肪の酸化(燃焼)が促進されると、イギリス、ノッティンガム大学の研究チームが「栄養学雑誌」の2009年5月号に発表しました。

 研究では、8人の健康な女性(平均24歳)を対象に、GI値の低い朝食か、GI値の高い朝食のどちらかを食べてもらった後、運動を行い、運動中の脂肪の酸化(燃焼)量を測定しました。被験者に提供されたどちらの朝食も炭水化物、タンパク質、脂肪の量は同じです。運動は、朝食を食べてから3時間後に60分間歩いてもらいました。

 GI値の低い朝食は、ミューズリー(小麦・カラス麦・大麦などのシリアルにナッツやドライフルーツがブレンされたもの)、ミルク、ヨーグルト、モモ缶詰、リンゴジュースでした。この朝食には3.5グラムの食物繊維が含まれています。一方、GI値の高い朝食は、コーンフレーク、ミルク、白パン、ジャム、炭酸ブドウ糖飲料でした。この朝食には1.5グラムの食物繊維が含まれていました。

 運動中の1時間当たりの脂肪の酸化(燃焼)量は、低GI値の朝食では7.4g、高GI値の朝食では3.7gでした。一方、炭水化物の1時間当たりの酸化(燃焼)レベルは、低GI値の朝食で42.5g、高GI値の朝食で51.6gでした。

 以上の結果から食物繊維を多く含む低GI値の朝食は高GI値の朝食より脂肪の燃焼量が多いことが分かりました。この研究結果は、ダイエットや体重管理のために有用と考えられることから、今後、より大規模な研究が行われることが期待されています。

【文献】
Stevenson, E. J. et al.: Fat Oxidation during Exercise and Satiety during Recovery Are Increased following a Low-Glycemic Index Breakfast in Sedentary Women. J. Nutr. 139: 890-897. (2009) [doi: 10.3945/jn.108.101956]




□ 文学の中の果物:正義と微笑(太宰治)

 今夜は、兄さんと、とてもつまらぬ議論をした。たべものの中で、何が一番おいしいか、という議論である。いろいろ互いに食通振(しょくつうぶ)りを披瀝(ひれき)したが、結局、パイナップルの鑵詰の汁にまさるものはないという事になった。桃の鑵詰の汁もおいしいけど、やはり、パイナップルの汁のような爽快さが無い。パイナップルの鑵詰は、あれは、実をたべるものでなくて、汁だけを吸うものだ、という事になって、
「パイナップルの汁なら、どんぶりに一ぱいでも楽に飲めるね。」
と僕が言ったら、
「うん、」と兄さんもうなずいて、「それに氷のぶっかきをいれて飲むと、さらにおいしいだろうね。」と言った。兄さんも、ばかな事を考えている。

 たべものの話をしたら、やけにおなかが空(す)いて来たので、食通ふたりは、こっそり台所へ行って、おむすびを作ってたべた。非常においしかった。

 ニヒルと、食慾と、何か関係があるらしい。
 兄さんは、いま、隣室で、小説を書いている。もう五十枚以上になったらしい。二百枚の予定だそうだ。雪が降りはじめた時に、という書出しから始まる美しい小説だ。僕は十枚ばかり読ませてもらった。出来上ったら、文学公論の懸賞に応募するんだそうだ。兄さんは以前、懸賞の応募を、あんなに軽蔑していたのに、どうしたのだろう。
「懸賞に応募するなんて、自分を粗末にする事じゃないのかな。作品が、もったいない。」と僕が言ったら、
「でも、あたったら二千円だ。お金でも、とれるんでなかったら、小説なんて、ばからしい。」と、とても下品な表情をして言ったが、兄さんは、このごろ、ずいぶんお酒も飲むし、なんだか、堕落しているんじゃないかしら、と心配だ。

 いずれを見ても、理想の喪失。
 今夜は、ばかに眠い。




□ 果物花便り:弘前りんご公園(青森県)

 りんごの生産量が日本一の青森県弘前市にある弘前りんご公園のりんごの花の見頃は例年なら5月中旬です。天気が良ければ、りんごの花の向こうに美しい岩木山を見ることができます。品種別の例年の花の見頃は、「王林」が5月12〜18日頃で、そのあと「陸奥」、「ジョナゴールド」、「つがる」と続き、「ふじ」の花は5月14〜20日頃とのことです。

弘前りんご公園のホームページは下記です。
http://www.hi-it.net/~ringo-kouen/




□ 今週の果物

 今週は大阪市の青果物市場に入荷している果物について紹介します。取扱量の多い果物は、リンゴ、イチゴ、スイカ、メロンに、「清見」、デコポン、甘ナツミカンなど雑柑類です。産地別では青森、熊本、和歌山、鹿児島、愛媛、長崎、三重産などです。

「清見」は和歌山産、デコポンは熊本、鹿児島産、甘ナツミカンは鹿児島、和歌山、三重産、ハッサクは和歌山産、 ウンシュウミカンは大分、徳島産、ネーブルオレンジは和歌山産、サンフルーツは和歌山、広島産などです。  

リンゴ「ジョナゴ−ルド」、「王林」、「ふじ」は青森産です。

ビワは長崎、鹿児島産、サクランボは長野、山形産です。モモは福岡産、ブドウ「デラウェア」は山梨産、「巨峰」は長野産などです。キウイフ−ルツは徳島産などです。

イチゴ「あまおう」は福岡産、「とよのか」は長崎、熊本産、「さちのか」は 長崎、徳島、和歌山産、「女峰」は香川産などです。

スイカは熊本産などです。

メロンは熊本産(「アンデスメロン」、「プリンスメロン」、「アムスメロン」、「ホームラン」)、高知産(「アールスメロン」)、静岡産(「アールスメロン」)、鹿児島産(「アンデスメロン」)などです。 




□ 今日のフォト

 つくばではリンゴの花が咲いています。北の産地青森県に比べて半月ほど早く咲きます。つぼみの時にあったピンク色は開花すると純白に変わります。ナシの摘花作業が終盤になりました。夜、自転車で水田の脇を通るとカエルがゲロゲロとうるさいくらいに鳴いています。もうすぐ田植えです。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News85.html
  (掲載は次号まで)





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☆ 編集部より ☆

 長く続いてきました糖尿病と果物との関係のシリーズも終わりに近づいてきました。果物にこだわり日本人の食生活と健康を考えました。「果物を食べてみたい」と思っていただければうれしいのですが。(tnk)

 最近イチゴの値段が落ちています。皆さまこの機会に生で食べるだけでなく、ジャムにしてみてはいかがでしょうか。普通にパンにぬってもいいし、ナポレオンパイなどお菓子に使うこともできるので、便利ですよ。(KT)





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