くだもの・科学・健康ジャーナルHP > 果物&健康NEWSトップ >
  ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第266回 リポフル閑談:ガン予防の科学的パラダイム−その6
      動物実験、サプリメント、食事-4

  





□■□ 果物&健康NEWS Vol.266
■□□ 2009年10月30日(金)配信
□□◇ <創刊日2004年2月26日>



みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「リポフル閑談:ガン予防の科学的パラダイム−その6」です。
科学を生活に! 科学技術立国の一翼を担う「果物&健康NEWS」
──────────────────────────────
毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<<■ 本日のメニュー >>>>

 ◇ 季節のたより
 ◇ 今週のレシピ:リンゴ
 ◇ リポフル閑談:ガン予防の科学的パラダイム−その6
          動物実験、サプリメント、食事-4
 ◇ 品種紹介:リンゴ「ノースクィーン」
 ◇ 文献紹介:高齢者の骨折は死亡リスクを高める
 ◇ 文献紹介:DASH食はカルシウム代謝を改善し骨を丈夫にする
 ◇ 新型インフルエンザ情報13
   −正確な知識で冷静な対応−
 ◇ 文学の中の果物:三つのなぜ(芥川龍之介)
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より



□ 季節のたより

旬の果物:リンゴ、ミカン、カキ

今が旬のリンゴ品種は「紅玉」、「千秋」、「北斗」、「ふじ」、「王林」、「ジョナゴールド」、「シナノゴールド」などです。

名古屋市10月31日
日の出  6:12  日の入り 16:59
夜明け  5:39  日暮れ  17:32
月の出 15:12  月の入り  3:19  月齢 12.4

たまに来た古郷の月は曇りけり 
      − 小林一茶

10月30日は十三夜です。

名古屋市11月の過去3年間の気候
       06年   07年   08年
平均気温   13.2   12.5   12.2    ℃
降 水 量   59.0    18.0   41.0    mm
相対湿度   65    61    62    %




□ 今週のレシピ:リンゴ

○ 肉巻きリンゴ・アップルソース

材料
 リンゴ 適量、牛肉または豚肉(うす切り) 適量、塩・コショウ少々、貝割菜 適量、アップルソース(リンゴ中1/4個、玉ねぎ 中1/4個、など

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.nn.zennoh.or.jp/recipe/kudamono/recipe11.html#reci01

○ リンゴと豚肉の小鉢蒸し

材料 (4人分)
 リンゴ 1個、豚肉 100g、生椎茸 4枚、みつば 1/3束、ゆず、など

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.nn.zennoh.or.jp/recipe/kudamono/recipe11.html#reci05

○ リンゴと豚肉のカレーピラフ

材料 (4人分)
 米 2カップ、スープ 2カップ、リンゴ 1個、豚肉 100g、玉ねぎ 60g、バター 20g、パセリなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.nn.zennoh.or.jp/recipe/kudamono/recipe11.html#reci07




□ リポフル閑談:ガン予防の科学的パラダイム−その6
         動物実験、サプリメント、食事-4


リ  ポ:皆さんこんにちは。今年もあと2ヶ月となりました。
     今日は大きなナシを食べてきました。「新高」と書いて
     ありました。
フルッタ:こんにちは。「にいたか」ですね。晩熟のナシ品種です。

リ  ポ:前回、β-カロテンが喫煙男性の肺ガンを促進するとの
     ことでしたが、これは特殊な例ではありませんか。
フルッタ:そうではありません。マルチビタミンの投与についても
     有効であるとの証拠はありません。

リ  ポ:治療でビタミン剤を飲まれている場合はどうですか。
フルッタ:医師の指導で服用している適切な量のビタミン剤は問題
     ありません。その理由は次回の「食品と医薬品の違い」
     で説明します。

リ  ポ:果物がガン予防に有効だという証拠は何ですか?
フルッタ:ガンは生活習慣病です。生活環境因子を適切にコント
     ロールすれば、ガンを防げるか、発症を遅らせることが
     でき、そのため、世界ガン研究基金の報告では、生活環
     境因子に関わる科学的エビデンスを調査し、ガン予防に
     有効かどうか判定しています(文献)。

リ  ポ:人を対象とした科学論文があれば良いのでは?
フルッタ:そうではありません。科学論文は、実験条件を設定し、
     その条件下で起きる現象を解析する研究の報告なので、
     条件が異なれば矛盾した結果が出ることもあります。

リ  ポ:なるほど。数多くの再現実験が必要なわけですね。
フルッタ:その通りです。そのことを追試実験といいます。そのた
     め、特定の食品の摂取を人に勧めるためには科学的に十
     分信頼できる必要があります。

リ  ポ:果物を勧める判断基準を教えてください。
フルッタ:判断基準は、科学的に十分に強い証拠があり、原因との
     関係が明確で、少なくとも2件以上の独立したコホート
     研究、5件以上の症例対照研究が必要です。

リ  ポ:かなり厳しい基準ですね。
フルッタ:それだけではありません。さらに、関連性があると判定
     されたデータにバイアスなどがなく、系統的で、生物学
     的に十分な論理的な結論であることを判断基準としてい
     ます。

リ  ポ:具体的に教えてください。
フルッタ:胃ガンと果物摂取に関するコホート研究は9件でした。
     症例対照研究は29件です。この中には胃ガン予防と果物
     摂取との間には関連が見られないとする報告も含まれて
     います。

リ  ポ:判定結果は?
フルッタ:ガンの専門家により、科学論文を再検討した結果、果物
     の摂取量とガン予防効果の対応関係は一致しており、証
     拠として十分であることが分かりました。また、果物が
     胃ガンを予防するメカニズムに関する証拠も科学的論理
     性があるので、「果物は胃ガンを予防する」と判定され
     ました。

リ  ポ:果物は胃ガン以外でも有効と判断されたのですか。
フルッタ:はい。果物は胃ガンも含めて4つのガン、口腔・咽頭・
     喉頭ガン、食道ガン、胃ガン、肺ガンに対する予防効果
     が認められました(表)。

リ  ポ:野菜はどうですか。
フルッタ:野菜は口腔・咽頭・喉頭ガン、食道ガン、胃ガンの3つ
     です。ネギとニンニクを野菜のカテゴリーに含めると、
     果物と野菜以外で科学的にガン予防に有効とされた食品
     はありません。

リ  ポ:ちょっと待ってください。果物と野菜以外では科学的根
     拠は十分ではないのですか。
フルッタ:その通りです。果物と野菜以外の食品、抗酸化成分など
     のサプリメントも推奨できるレベルにはありません。

リ  ポ:すぐには信じられないお話です。
フルッタ:そうかもしれません。科学情報の伝え方に課題があると
     考えています。機会があれば、世界ガン研究基金などが
     まとめた「政策と行動」の中にある情報の伝え方につい
     て紹介したいと思います。

リ  ポ:ぜひお願いします。今回もとても驚かされました。次回
     は「食品と医薬品の違い」です。シャキシャキとしたナ
     シ、ガン予防効果もありますよ。

    (つづく)


表 ガン予防のためにレポート作成者(パネリスト)が勧める食品
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
品目     ガンの部位
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
果物     口腔・咽頭・喉頭ガン、食道ガン、胃ガン、肺ガン
非デンプン性
の野菜    口腔・咽頭・喉頭ガン、食道ガン、胃ガン
ネギ類    胃ガン
ニンニク   大腸ガン

上記以外食品 該当なし
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



【用語解説】
コホート研究
 コホート研究は、現在から未来に向かって調査する研究手法で、る危険因子にさらされた人とそうでない人が将来どのような疾病に罹患するかを解析する研究。

症例対照研究
 症例対照研究は、ある疾患に罹患した人と、そうでない人が過去においてどのような危険因子にさらされていたかを調べ、因果関係を解析する研究・


【文献】
World Cancer Research Fund / American Institute for Cancer Research: Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer: a Global Perspective. Washington DC: AICR, (2007)




□ 品種紹介:リンゴ「ノースクィーン」

 「ノースクィーン」は「ふじ」と「つがる」を交雑して育成された品種です。熟期は北海道では10月中旬です。リンゴの早生品種「つがる」の後に収穫される品種です。果実は黄色で、陽向面がうっすらと赤色に色づき外観は美しく、食味は甘酸適和でバランスがとれています。特産的なリンゴとして栽培されています。

「ノースクィーン」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/kajunoheya/ikuseihinsyu/data/hinsyu/
pr-northqeen.html





□ 文献紹介:高齢者の骨折は死亡リスクを高める

 オーストラリアの研究チームは、高齢者の骨折は死亡リスクを高めると「アメリカ医学会雑誌」に発表しました。

 研究では、オーストラリアに住む60才以上の男女を対象に16年間の追跡調査が行われました。その結果、どの部位の脆弱性骨折でも、骨折後5年間の死亡リスクは高くなりました。さらに、骨折が頻発した場合は、さらに死亡リスクがが高くなりました。

【文献】
Bliuc, D. et al.: Mortality risk associated with low-trauma osteoporotic fracture and subsequent fracture in men and women. JAMA, 301: 513-521. (2009)




□ 文献紹介:DASH食はカルシウム代謝を改善し骨を丈夫にする

 アメリカ、デューク大学メディカルセンターなどの研究チームは、生活習慣病予防に有効なDASH食(果物、野菜などの摂取量を増やし、食塩や加工肉などを制限する食事)の摂取はカルシウム代謝をを改善すると「栄養学雑誌」に発表しました。

 研究では、成人186人(23-76歳)を対象に骨とカルシウム代謝を解明する目的で2つの食事法(DASH 食とアメリカで一般的なコントロール食)と3段階の濃度のナトリウム(50、100、150mmol/日)の摂取の効果を調べました。

 その結果、ナトリウムの摂取量が少ないDASH食は骨のターンオーバーをかなり抑制し、骨の状態を改善しました。ナトリウムの摂取が少ないDASH食を摂取した人は、コントロール食を摂取した人よりカルシウムの排泄が抑制されました。

 以上の結果から、研究者らはナトリウムの摂取量が少ないDASH食は骨の健康維持に有効であると述べています。

【用語解説】
 DASH食
 DASH食は、高血圧など生活習慣病の予防と治療のために開発された食事摂取法です。果物、野菜、ナッツ、低脂肪乳製品、全粒粉食品の摂取量を増やし、食塩、赤肉や加工肉の摂取を制限する食事法です。1日当たりの果物の推奨摂取量は320kcal〜400kcalです。リンゴに換算すると毎日3個〜4個です。

【文献]
Lin, P.H. et al.: The DASH diet and sodium reduction improve markers of bone turnover and calcium metabolism in adults. J. Nutr. 133: 3130-3136. (2008)




□ 新型インフルエンザ情報13
  −正確な知識で冷静な対応−


◇農林水産省:新型インフルエンザ関連情報

最新商法
大阪府の養豚農場における新型インフルエンザの清浄性確認について

 新型インフルエンザの感染が確認された大阪府の養豚農場における飼養豚の臨床検査及び遺伝子検査を実施した結果、清浄性が確認されました。このため、当該農場に対する飼養豚の移動の自粛要請を解除しました。世界保健機関(WHO)等の国際機関によれば、適切に処理された豚肉を人が食べてインフルエンザに感染することはありません。

上記の情報は下記のサイトにあります。
 http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/shininful.html

◇国立感染症研究所・感染症情報センター

国内の状況

 感染症発生動向調査によるインフルエンザの報告は増加傾向にあり、第41週(10月5日から11日)の1週間に61,583例で、定点あたりの報告数(1週間の1医療機関当たりへの受診患者数)は12.92で39週(4.25)と比べて増加しました。

上記の情報は下記ののサイトにあります。
 http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html

◇厚生労働省:新型インフルエンザ対策関連情報
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-
kansenshou04/index.html





□ 文学の中の果物:三つのなぜ(芥川龍之介)

 一 なぜファウストは悪魔に出会ったか?

 ファウストは神に仕えていた。従って林檎(りんご)はこういう彼にはいつも「智慧(ちえ)の果」それ自身だった。彼は林檎を見る度に地上楽園を思い出したり、アダムやイヴを思い出したりしていた。

 しかし或雪上りの午後、ファウストは林檎を見ているうちに一枚の油画を思い出した。それはどこかの大伽藍(だいがらん)にあった、色彩の水々しい油画だった。従って林檎はこの時以来、彼には昔の「智慧の果」の外にも近代の「静物」に変り出した。

 ファウストは敬虔(けいけん)の念のためか、一度も林檎を食ったことはなかった。が或嵐の烈(はげ)しい夜、ふと腹の減ったのを感じ、一つの林檎を焼いて食うことにした。林檎は又この時以来、彼には食物(くいもの)にも変り出した。従って彼は林檎を見る度に、モオゼの十戒を思い出したり、油の絵具の調合を考えたり、胃袋の鳴るのを感じたりしていた。

 最後に或薄ら寒い朝、ファウストは林檎を見ているうちに突然林檎も商人には商品であることを発見した。現に又それは十二売れば、銀一枚になるのに違いなかった。林檎はもちろんこの時以来、彼には金銭にも変り出した。

 或どんより曇った午後、ファウストはひとり薄暗い書斎に林檎のことを考えていた。林檎とは一体何であるか?――それは彼には昔のように手軽には解けない問題だった。彼は机に向ったまま、いつかこの謎(なぞ)を口にしていた。
「林檎とは一体何であるか?」

 すると、か細い黒犬が一匹、どこからか書斎へはいって来た。のみならずその犬は身震いをすると、忽(たちま)ち一人の騎士に変り、丁寧にファウストにお時宜(じぎ)をした。――

 なぜファウストは悪魔に出会ったか?――それは前に書いた通りである。しかし悪魔に出会ったことはファウストの悲劇の五幕目ではない。或寒さの厳しい夕、ファウストは騎士になった悪魔と一しょに林檎の問題を論じながら、人通りの多い街を歩いて行った。すると痩(や)せ細った子供が一人、顔中涙に濡(ぬ)らしたまま貧しい母親の手をひっぱっていた。
「あの林檎を買っておくれよう!」

 悪魔はちょっと足を休め、ファウストにこの子供を指し示した。
「あの林檎を御覧なさい。あれは拷問(ごうもん)の道具ですよ。」
 ファウストの悲劇はこういう言葉にやっと五幕目の幕を挙げはじめたのである。




□ 今週の果物

 今週は名古屋市の青果物市場に入荷している果物について紹介します。地元愛知産はナシ、カキ、イチゴなどです。取扱量の多い果物はミカン、リンゴ、カキなどです。産地別では和歌山、長野、三重、熊本、青森、岐阜、静岡産などです。

ウンシュウミカン(早生温州)は熊本、三重、和歌山産などです。
 

リンゴ「つがる」は青森産、「ジョナゴ−ルド」は青森、岩手産、「王林」は長野産、「ふじ」は長野産などです。

甘ガキは岐阜、三重、愛知産、渋ガキは和歌山産などです。旬の品種は「富有」、「次郎」、「平核無」、「刀根早生」などです。

ニホンナシ(「幸水」、「新高」など)は秋田、新潟、長野、愛知産などです。セイヨウナシ(「ラ・フランス」など)は山形、長野産などです。

ブドウ(「巨峰」など)は長野産などです。 キウイフルーツは福岡産です。クリは茨城産などです。イチジクは愛知産です。スモモは北海道産です。

イチゴは岐阜、長野、愛知産などです。メロンは北海道、静岡、茨城、島根、山形産などです。スイカは熊本、高知産などです。




□ 今日のフォト

 朝夕冷え込む季節になりました。圃場のカキの樹は、果実だけでなく葉も色づいています。

  かぶりつく 熟柿や髯を 汚しけり
            − 正岡子規

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News108.html
  (掲載は次号まで)





   ■ いつでも、どこでも、果物&健康NEWS
     携帯webメールの仮登録サイトは下記です。
     http://www.kudamononet.com/kkr/registory.html


☆ 編集部より ☆

 正岡子規のようにがぶりも美味しいのですが、熟しガキのへたを上にして、ヘタを取り除き、お皿においてスプーンで食べると、スイーツを食べているような感じです。熟しガキが苦手な方にお勧めです。(tnk)

 近所のスーパーでみかん1個10円のセールをやっていました。規格外品だとは思いますが、この値段はすごい!とりあえず20個ほど買っておきました。(KT)





メルマガ果物&健康NEWS登録




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

 無断転載はお断りします。 リンクは自由です。

 詳しくは、著作権、リンクについて に記載しています。

 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

Copyright 2004-2009 All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.


果物&健康Newsへ戻る
果物&健康Newsへ戻る
くだもの・科学・健康ジャーナルへ
くだもの・科学・健康ジャーナル
ホームページへ戻る

果物と糖尿病予防