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 ■ サクランボ
      
サクランボの健康機能性

サクランボと痛風

サクランボの健康機能性に関する科学的根拠(研究論文等)


 
      
□□ サクランボの健康機能性 □□

 サクランボは、江戸時代初期に中国から伝来しましたが、寒さに弱く品質も劣ることから一部地域で栽培されるにとどまりました。現在の品種は、明治初年に、アメリカ、フランスから導入されました。山形県が全栽培面積の60%を占めています。そのほか、北海道(14%)、青森県、山梨県などで栽培されています。

 サクランボ(オウトウ)には、難消化性の糖アルコールであるソルビトールが、4.6g/200gと豊富に含まれています。ソルビトールには、便のpHを下げる働きと便の量を増す効果が認められています。また、食物繊維も豊富なことから便秘に悩む人に最適な果物です。

 便秘になると便が腸内に長く止まるため、腐敗産物や細菌毒素などの有害物質の濃度が高くなり腸管に悪影響が及びます。このため便秘になると、肌荒れ、吹き出物、肩こり、頭痛を誘発するだけでなく、大腸ガンや乳ガンなどの疾病の原因となります。

 また、ソルビトールは、さわやかな冷涼感があり、後味がすっきりするのが特徴の甘味料ですが、虫歯に対する予防効果も知られています。虫歯は、虫歯菌が食物に含まれている砂糖などを餌として成育し、分泌物として、グルカンと呼ばれる粘着性物質と乳酸を作ります。このグルカンが歯に歯垢を付着させ、乳酸が歯のエナメル質を溶かします。ソルビトールは、虫歯菌の糖代謝を阻害するため、乳酸ができるのを防ぐ働きがあります。

 最近注目されている話題は、サクランボの果実中にメラトニンが発見されたことです。メラトニンは、人の脳の内部、松果体で作られる睡眠のサイクルをコントロールする神経ホルモンの一種です。規則正しく、暗い所で睡眠を取っていればメラトニンの分泌量は増し、不規則な睡眠は、その分泌量を減少させます。最近の研究によれば、メラトニンは、睡眠を促進し、時差ぼけを和らげ、しかも睡眠薬のような危険性や副作用がないとされています。

 さらに、サクランボの特徴として、グリセミック・インデックス(GI)が21とかなり低いので、血糖値の上昇を気にすることなく摂取することができます。




 
      
□□ サクランボ摂取と痛風 □□

 サクランボ(オウトウ)は、可憐な姿と甘酸っぱい味で親しまれている初夏の果物です。植物学的には「セイヨウミザクラ」といい、バラ科サクラ属に分類されています。ウメやモモも同じサクラ属です。

 カルフォルニア大学デービス校のグループは、サクランボ摂取による痛風予防効果について、昨年発表を行いました(2003年)。痛風はかつてぜいたく病と考えられていましたが、食事の欧米化が進み、近年ではごく一般的な病気となり、痛風患者は、50〜60万人いると言われています。痛風は「風が吹いただけでも激痛を感じる」ことからその名がつけられました。足の親指の付け根が赤く腫れ、激しい痛みを感じるのが特徴です。

 痛風の直接的な原因は、血液中に存在する尿酸です。尿酸は、血液を循環し、その大部分が尿として、残りは便として排出されますが、何らかの原因により、血液中の尿酸濃度が高くなり、体内に蓄積されると血液中で溶けきれない尿酸がナトリウムと結合し、結晶となります。尿酸の濃度が高い状態が続くと、尿酸塩の結晶が関節や腎臓に沈着します。特に蓄積しやすいのが足の親指の付け根です。結晶が沈着すると異物を排除する働きのある白血球が、この結晶を攻撃するため発作が起こります。

 適切な治療を行わず放っておくと、再び痛みの発作が起こります。初めは年に1〜2回程度ですが、次第にその間隔が短くなっていきます。痛風のもとである「高尿酸血症」を放っておくと、腎臓障害を起こす事が知られていますが、その他、心疾患、脳卒中、尿路結石などの合併症を引き起こしやすくなります。

 カルフォルニア州デービス周辺はサクランボの産地です。そこでは、サクランボを食べていると痛風にならないとの民間伝承があるそうです。最近、サクランボに含まれているアントシアニンの一種であるシアニジンが、痛風などと関係する炎症反応を強く抑制することがわかりました。また、臨床試験でサクランボを摂取すると痛風が軽減すると報告されていました。

 そこで、カルフォルニア大のグループは、10人にサクランボを2単位(280g)摂取してもらい、血液中の尿酸の濃度を調べたところ最初214μmol/lだったのが、摂取後183μmol/lに減少したことと、炎症の指標であるCRP(C反応性タンパク質)とNO(一酸化窒素)の減少を確認しました。また、尿中に排泄された尿酸値は202μmol/mmol creatinineから350μmol/mmolcreatinineへと増加したと報告しています。以上の結果から、サクランボの摂取は痛風予防に有効であると結論づけています。




 
      
サクランボの健康機能性に関する科学的根拠(研究論文等)

Burkhardt S, Tan DX, Manchester LC, Hardeland R, Reiter RJ.
Detection and quantification of the antioxidant melatonin in Montmorency and Balaton tart cherries (Prunus cerasus).
J Agric Food Chem. 49(10): 4898-4902. (2001)

Wang H, Nair MG, Strasburg GM, Chang YC, Booren AM, Gray JI, DeWitt DL.
Antioxidant and antiinflammatory activities of anthocyanins and their aglycon, cyanidin, from tart cherries.
J Nat Prod. 62(5): 802. (1999)

Jacob RA, Spinozzi GM, Simon VA, Kelley DS, Prior RL, Hess-Pierce B, Kader AA.
Consumption of cherries lowers plasma urate in healthy women.
J Nutr. 133(6): 1826-1829. (2003)

Lederle FA, Busch DL, Mattox KM, West MJ, Aske DM.
Cost-effective treatment of constipation in the elderly: a randomized double-blind comparison of sorbitol and lactulose.
Am J Med. 89(5): 597-601. (1990)

Agostini L, Down PF, Murison J, Wrong OM.
Faecal ammonia and pH during lactulose administration in man: comparison with other cathartics.
Gut. 13(11): 859-866. (1972)




      
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