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 ■ ブドウ
      
ブドウ摂取で動脈硬化予防

ブドウと長寿の関係

ブドウに含まれているレスベラトロール

ブドウの健康機能性に関する科学的根拠(研究論文等)


 
      
□ ブドウ摂取で動脈硬化予防

 ブドウは世界で最も生産量の多い果物です。その生産量の半分以上はワイン用ですが、わが国では生食用がほとんどです。ぶどうは、軸が緑色で太く、果皮に白い粉がふいているものが良品です。この白い粉は果粉(ブルーム)といって、果皮のクチクラに含まれる成分で、植物自体が作り出し、細菌から身を守ったり、鮮度を保つ働きがあります。これは農薬ではないので、安心して食べられます。ブドウの房は、肩の部分が一番甘く、房の先端ほど酸味が強くなります。

 ブドウは、ポリフェノール(アントシアニン、カテキンなど)を豊富に含んでいます。とくに、果皮にはアントシアニンが多く含まれています。ポリフェノールは、抗酸化作用があるため、動脈硬化の原因となる活性酸素を除去する作用があります。

 本来の動脈壁は弾力性がありますが、動脈壁に脂肪などが沈着したり、動脈壁中に弾力のない線維が増えたりすると、硬くなったり、壁が厚くなったりして動脈硬化となります。動脈硬化で内壁が厚くなり内径が狭くなると、血液の流れが悪くなります。動脈硬化は、体中のどの動脈でも起こりますが、特に起こりやすいのは、脳動脈、頸動脈、冠動脈などです。血管の老化現象ともいわれ、何年もかけて進行し、40歳以上の人のほとんどに、多かれ少なかれ動脈硬化がみられます。

 血管の内壁にLDL-コレステロールが入り、LDL-コレステロールが活性酸素によって酸化型LDL-コレステロールに変化すると、これをマクロファージが取り込み泡沫細胞に変わります。さらに粥状の塊になるとアテローム(粥状の黄色い盛り上がり)となり血管を狭くします。アテロームが進行すると、アテロームの表面に血栓が付着し、動脈硬化がいちだんと進行します。

 ブドウでは、試験管レベルの研究だけでなく、ヒトレベルでもLDL-コレステロールの酸化抑制効果が報告されています。冠動脈疾患(心臓病)の患者に2週間ブドウジュースを飲用してもらったところ、飲用前より血液中のLDL-コレステロールの酸化が遅延されることが明らかとなりました。また、血小板が凝集し血栓ができると血流が妨げられますが、ブドウジュースの飲用で血液中の血小板凝集活性が低下したと報告されました。さらに、血管拡張率が改善されたとする報告もあります。これらの報告は、ブドウの摂取は、動脈硬化の予防を通して心臓病や脳卒中などの循環器系疾患の予防に効果的であることを示しています。




 
      
□ ブドウと長寿の関係

 秦の始皇帝は中国を統一し、中央集権的な統治体制を確立したあと、不老不死に憧れ、方士や道士に不老不死の秘薬を探させたそうです(司馬遷の「史記」)。我が国の神話にも不老長寿の薬の探索の話があります。

 最近では長生きの人が多い地域の食生活に関心が集まっており、果物などが注目されています。一方、長寿についての科学的研究も進んでおり、寿命を決めると考えられているテロメアDNAに注目が集まっています。テロメアとは、染色体末端部位のことで、その部分にある特殊なDNA配列があります。このテロメアDNAは、細胞分裂のたびに少しずつ短くなっていき、それに伴って細胞分裂の間隔も長くなっていきます。そして、最後に、それ以上テロメアDNAが短く出来なくなると細胞分裂が止まります。細胞分裂が行われなくなると老化が始まり、やがて細胞は死んでしまいます。そのため、テロメアDNAをいつまでも長くしておけば、細胞は死なないで分裂を続け、長生きできるはずと考えられています。

 染色体末端にあるテロメアDNAは、ヒストンと呼ばれる蛋白質に囲まれています。このヒストンがアセチル化されるとテロメアDNAは表面に露出するので、酵素の働きによって短くなってしまいます。ところが、sir2と呼ばれる酵素は、このアセチル化を防ぎ、テロメアDNAを露出しにくい構造にするため、テロメアDNAが短くなるのを防ぎ、寿命をのばすことが出来ます。

 米ハーバード大学医学部の研究チームは、ブドウに含まれているポリフェノール成分の一つであるレスベラトロールが、このsir2酵素に作用し寿命を伸ばす働きがあることを突きとめました。レスベラトロールを酵母に作用させたところsir2酵素が活性化され、酵母の寿命が70%伸びたと報告しています。従って、レスベラトロールは、sir2酵素を通して寿命に関係する酵素や遺伝子に関与して寿命を伸ばす働きがあると考えられます。

 今までに、ネズミなど多くの実験生物は、カロリーを制限した食餌で育てると寿命が延びることが明らかにされていました。このことについての研究チームの分析結果は、興味深いことにカロリー制限した酵母と同じように、レスベラトロールを与えた酵母は長生きしたとしています。このことから、カロリー制限をしなくても細胞の寿命を伸ばすことが出来ると分かりました。

 また、レスベラトロールには及びませんが、他のポリフェノール成分にも寿命延長効果が認められています。こうしたポリフェノールはブドウなど果物に多く含まれていることから、長寿の人たちはそうした食物をバランスよくとっているのではないかと考えられます。この研究はこうした食生活の重要性を遺伝子・酵素レベルで説明しているものと思います。

原著:Howitz KT, et al., Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan. Nature. 425: 191-196. (2003)



 
      
□ ブドウに含まれているレスベラトロール

 ブドウには健康機能性成分として注目されているレスベラトロールが含まれています。レスベラトロールはポリフェノールの1つですが、カテキンやフラボノイドなどと少し構造が異なっているポリフェノールでスチルベン骨格からできています。レスベラトロールは、ブドウの果皮に含まれています。そのため、ブドウから作られる赤ワイン、白ワインにも含まれています。

 すでにレスベラトロールと長寿との関係は果物健康NEWS第26回でお伝えしましたので、今回は生活習慣病予防効果について紹介します。最初、レスベラトロールは菌の侵入を防ぐファイトアレキシンとして見いだされました。その後、動脈硬化防止作用や抗ガン作用が発見され、健康機能性に優れた成分であることが分かりました。

 血液中のLDL-コレステロールが酸化され、酸化型LDL-コレステロールが蓄積すると動脈硬化の原因となります。レスベラトロールは、1ml当たり2.2μlでヒトのLDL-コレステロールの酸化を70-80%抑制します。また、血液中の血小板が異常に凝集すると血管内に血栓ができるため心筋梗塞などの原因となりますが、レスベラトロールは血小板の凝集を抑制すると報告されました。さらに、コレステロール入りのコーン油を食べさせたラットにレスベラトロールを与えたところ肝臓でのコレステロールの蓄積が抑制され血液中のLDL-コレステロールが減少しました。このように、レスベラトロールは動脈硬化や血栓形成を防ぐ作用を通じて心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げる働きがあります。

 レスベラトロールはガンを抑制することも明らかとなっています。ガンの発生は、DNAに突然変異が起きるイニシエーション、細胞が異常をきたすプロモーション、異常が発生した細胞が増殖し、最終的に他の臓器にまで転移するプログレッションの三つの段階があります。レスベラトロ−ルは、ガンになる三つの過程のいずれにおいても抑制的に作用することが分かってきました。マウスを用いた実験ではレスベラトロールを週2回塗布したところ皮膚ガンを98%抑制したと報告されています。

 ガン細胞が増殖し、ガン組織が形成される過程では、さまざまな防御機構によって、ガンの発生・発達を妨げようとします。異常が発生した細胞を自ら死に至らしめる作用(アポトーシス)もその一つです。このアポトーシスに関する遺伝子の活性が、レスベラトロ−ルによって高められ、ガン細胞を死に至らしめることが明らかとなりました。

 以上のようにレスベラトロールは、血管系の疾患やガンの予防に有効な健康機能性成分です。




 
      
ブドウの健康機能性に関する科学的根拠(研究論文等)

Chou EJ, Keevil JG, Aeschlimann S, Wiebe DA, Folts JD, Stein JH.
Effect of ingestion of purple grape juice on endothelial function in patients with coronary heart disease.
Am J Cardiol. 88(5): 553-555. (2001)


Howitz KT, Bitterman KJ, Cohen HY, Lamming DW, Lavu S, Wood JG, Zipkin RE, Chung P, Kisielewski A, Zhang LL, Scherer B, Sinclair DA.
Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan.
Nature. 425(6954): 191-196. (2003)


Keevil JG, Osman HE, Reed JD, Folts JD.
Grape juice, but not orange juice or grapefruit juice, inhibits human platelet aggregation.
J Nutr. 130(1): 53-56. (2000)




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