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■ 果物摂取とぜん息予防


      
 我が国では現在、400万人の子供たちが気管支ぜん息といわれおり、その数は年々増加、低年齢化の傾向にあります。ぜん息とはある種の刺激に誘発されて気道が一時的に狭くなり、呼吸困難に陥る再発性の病気です。ぜん息はどの年代にも発症しますが、子供のときに始まるのが最も一般的です。

 ぜん息の原因として様々な因子が指摘されていますが、食生活が関係しており、新鮮な果物を含む食バランスの良い食事に改善すれば、ぜん息を予防できるとする科学的データが蓄積しています。

 リンゴがぜん息と関係するかについてイギリス南ロンドン地区でぜん息患者1471人と健常者2000人について追跡調査が行われました。その結果、1週間に5回以上リンゴを摂取するとぜん息発症のリスクが32%減少していました(文献1)。また、リンゴ摂取によるぜん息発生抑制効果は、15才より前に発生するぜん息に対してより強く関係していると報告されています。

 子供18,737人(6-7歳)を調査したイタリアの研究では、新鮮果物(特に、ビタミンCを多く含む果物)を多く摂取していた子供は、ぜん息症状(ぜん鳴)の発症が少ないことが分かりました(文献2)。それも、果物を1週間あたり1〜2サービング摂取していた子供は、1サービング未満の子供に比べてぜん鳴の発生率がおおよそ半分になりました。この結果は、ほんの少し果物の摂取を増加させるだけで有益な予防効果が得られることを意味しています。

 最近、イギリスで行われたぜん息に対する調査から、健常人に比べてぜん息患者は、果物、ビタミンCの摂取量が少ないことが明らかとなりました(文献3)。ぜん息と診断された515人と健常人515人の成人を対象に調査を行った結果、健常人は果物を毎日149.1グラム摂取していましたが、ぜん息患者の果物摂取量は132.1グラムでした。また、カンキツ類を毎日少なくとも46.3グラム摂取している人は、全く食べない人と比べてぜん息のリスクが半分でした。

 ぜん息患者の血液中のビタミンCの量は54.3μmol/lで健常人の58.2μmol/lに比較して統計的に有意に低いことも分かりました(p=0.003)。ぜん息患者でビタミンCが低いのは果物の摂取量が少ないためでした。一方、ぜん息患者も健常人も摂取したカロリーや脂肪の量は同じで、身体的活動、教育、過去の喫煙についても両者に差がありませんでした。

 これらの調査結果は、食事内容を改善すればぜん息を予防できることを示しています。アメリカ国立ガン研究所が作成したガイドラインでは、果物と野菜を毎日5サービングの摂取を推奨しています。この指導に従えば200mgを超えるビタミンCを摂取することが出来ると報告されています。

 こうした研究から新鮮な果物の摂取量(「毎日くだもの200グラム以上」)を増やして、バランスの良い食生活に改善するとぜん息予防に効果的です。

【文献】
1) Shaheen, S. O. et al.: Dietary antioxidants and asthma in adults: population-based case-control study. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 164: 1823-1828. (2001)

2) Forastiere, F. et al.: Consumption of fresh fruit rich in vitamin C and wheezing symptoms in children. SIDRIA Collaborative Group, Italy (Italian Studies on Respiratory Disorders in Children and the Environment). Thorax. 55: 283-288. (2000)

3) Patel, B. D. et al.: Dietary antioxidants and asthma in adults. Thorax 61: 388-393. (2006) [doi: 10.1136/thx.2004.024935]



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