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 ■ 果物摂取で認知症の予防
      
果物摂取でアルツハイマー型認知症の予防

果物摂取で認知症予防

 
      
□ 果物摂取でアルツハイマー型認知症の予防

 わが国では、高齢化が急速に進んでいます。しかし、いくら寿命が長くなっても、認知症状態では本人も周りの人も喜べません。そのため、「死ぬまで元気でいること」が、最高のことだと言われています。近年、わが国では、アルツハイマー型認知症が多くなってきていると報告されています。

 脳が病的に萎縮し、高度の知能低下や人格の崩壊がおこるアルツハイマー型認知症は、ゆっくりと発症し、徐々に悪化していきますが、初期の段階では運動麻痺や感覚障害などの神経症状はおきません。また、本人は病気だという自覚がないのが特徴です。

 症状としては、まず「もの忘れ」があげられます。最初、古い記憶は比較的保たれていますが、新しい出来事が覚えにくく、忘れやすいという特徴があらわれます。病気が進むと、もの忘れのために生活に支障をきたすようにさえなります。また、「判断力の低下」もみられ、さらに時間、場所、人物の判断がつかなくなります。

 アルツハイマー型認知症の患者を対象とした食事調査によると、肉は食べるが、果物や野菜、魚を食べず、好きなものを食べ続ける。小食で、食事の代わりにお菓子を食べる人に多いという結果がでています。

 オランダで行われた疫学調査(55才以上、5,395人)によれば、食事からビタミンEやCを多く摂取しているグループと少ないグループと比較した時、アルツハイマー型認知症の発症が少ないと報告されています。アメリカで行われた調査(815人、65才以上)でも食事からのビタミンEの摂取はアルツハイマー型認知症のリスクを下げると報告されました。さらに、アメリカで行われた2,889人(65-102才)の疫学調査の結果、ビタミンEの摂取は老人の記憶力減退を軽減すると報告されています。また、小規模ですが、スペインで行われた男性34人、女性86人(65-91才)を対象とした研究では、血液中のビタミンE含量と認識力との間には正の相関が認められたことから、ビタミンEの摂取が推奨されています。さらに、葉酸の摂取量が少ないと血液中のホモシステイン濃度が高まり、アルツハイマー型認知症になるリスクが上昇することから、アルツハイマー型認知症の予防には葉酸の摂取が必要であるとしています。

 アルツハイマー型認知症についての研究をレビューしたフランスのボンヌフォア(Bonnefoy)博士は、「現在のところ厳密な科学的証明はされていないが、果物の摂取は推奨されて良い」と述べています。なぜなら、果物には、アルツハイマー型認知症に効果的なビタミンCやE、葉酸を豊富に含むからです。




 
      
□ 果物摂取で認知症予防

 高齢になると発症する認知症は、加齢とともに増加する酸化ストレスや炎症反応が関係していると考えられています。果物にはビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化ストレス成分や抗炎症成分が豊富に含まれています。すでに、果物を多く摂取すると心血管疾患など生活習慣病に関わる疾病の死亡率が低いことが明らかになっています。しかし、果物の摂取と認知症との関係はまだよく分かっていませんでした。

 そこで、記憶・健康・加齢に関するCache Country Studyの研究を行っているアメリカ・ユタ州立大学の科学者は、高齢者の認識力と食事(果物と野菜)との関係を調べました(文献1)。この研究では、1995年の時点で65才以上であった男女5092人を追跡調査し、食事内容についてインタビューを行い摂取状況を調べ、3632人から有効な食事のデータ(男性1566人、女性2066人)を得ました。認識力の調査はModified Mini-Mental State Examination (3MS)の最新版を用いて、1996-1997年、1998-1999年、2002-2003年の3回調べました。果物と野菜の摂取量は1日当たりのサービング単位で5段階に分類しました。

 その結果、認識力に影響を与える因子の影響を除いたあと、果物と野菜の摂取量の最も多いグループと最も低いグループとを比較したところ、果物と野菜の摂取量が多いグループの得点が統計的に有意に高いことが分かりました(有意差p=0.01)。果物だけで比べた場合も果物の摂取量が多い人は少ない人より高い得点でした。

 以上の結果より、果物と野菜を多く摂取すれば男性、女性にかかわらず高齢者の認知機能の低下を防ぐことができると研究者らは結論づけています。

 また、南フロリダ大学の研究チームは、ワシントン州シアトルに住む65歳以上の日系人男女1836人を7〜9年間にわたり追跡調査を行いました(Kame Project cohort)(文献2)。その結果、コップ1杯(約240ml)の果物・野菜ジュースを週に最低3回飲む人は、週1回未満の人に比べて、アルツハイマー病の発症リスクが73%低く、週1-2回でも32%発症リスクが低いことを見いだしました。

 以上の結果から、果物や野菜に含まれている成分が神経細胞の保護やタンパク質の酸化を防ぐためアルツハイマー病を予防できるのではないかと研究者らは考えています。

 動物実験などから果物が認知症に有効であると示唆されていましたが、人でも果物を多く摂取すればアルツハイマー病など認知症を予防できることが科学的に明らかになりました。

【文献】
1) Wengreen, H.J., et al.: Fruit and Vegetable Intake and Cognitive Function in the Elderly: The Cache County Study on Memory, Health and Aging. Alzheimer's Asso. Int. Conf. Prev. Dementia. O2-03-06. (2005)

2) Borenstein,A.R., et al.: Consumption of fruit and vegetable juices predicts a reduced risk of Alzheimer's disease: The Kame project. Alzheimer's Association Int. Conf. Prev. Dementia.. P-161 (2005)




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