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□ 果物摂取で認知症予防
高齢になると発症する認知症は、加齢とともに増加する酸化ストレスや炎症反応が関係していると考えられています。果物にはビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化ストレス成分や抗炎症成分が豊富に含まれています。すでに、果物を多く摂取すると心血管疾患など生活習慣病に関わる疾病の死亡率が低いことが明らかになっています。しかし、果物の摂取と認知症との関係はまだよく分かっていませんでした。
そこで、記憶・健康・加齢に関するCache Country Studyの研究を行っているアメリカ・ユタ州立大学の科学者は、高齢者の認識力と食事(果物と野菜)との関係を調べました(文献1)。この研究では、1995年の時点で65才以上であった男女5092人を追跡調査し、食事内容についてインタビューを行い摂取状況を調べ、3632人から有効な食事のデータ(男性1566人、女性2066人)を得ました。認識力の調査はModified
Mini-Mental State Examination (3MS)の最新版を用いて、1996-1997年、1998-1999年、2002-2003年の3回調べました。果物と野菜の摂取量は1日当たりのサービング単位で5段階に分類しました。
その結果、認識力に影響を与える因子の影響を除いたあと、果物と野菜の摂取量の最も多いグループと最も低いグループとを比較したところ、果物と野菜の摂取量が多いグループの得点が統計的に有意に高いことが分かりました(有意差p=0.01)。果物だけで比べた場合も果物の摂取量が多い人は少ない人より高い得点でした。
以上の結果より、果物と野菜を多く摂取すれば男性、女性にかかわらず高齢者の認知機能の低下を防ぐことができると研究者らは結論づけています。
また、南フロリダ大学の研究チームは、ワシントン州シアトルに住む65歳以上の日系人男女1836人を7〜9年間にわたり追跡調査を行いました(Kame
Project cohort)(文献2)。その結果、コップ1杯(約240ml)の果物・野菜ジュースを週に最低3回飲む人は、週1回未満の人に比べて、アルツハイマー病の発症リスクが73%低く、週1-2回でも32%発症リスクが低いことを見いだしました。
以上の結果から、果物や野菜に含まれている成分が神経細胞の保護やタンパク質の酸化を防ぐためアルツハイマー病を予防できるのではないかと研究者らは考えています。
動物実験などから果物が認知症に有効であると示唆されていましたが、人でも果物を多く摂取すればアルツハイマー病など認知症を予防できることが科学的に明らかになりました。
【文献】 1)
Wengreen, H.J., et al.: Fruit and Vegetable Intake and Cognitive Function in the
Elderly: The Cache County Study on Memory, Health and Aging. Alzheimer's Asso.
Int. Conf. Prev. Dementia. O2-03-06. (2005)
2) Borenstein,A.R., et al.:
Consumption of fruit and vegetable juices predicts a reduced risk of Alzheimer's
disease: The Kame project. Alzheimer's Association Int. Conf. Prev. Dementia..
P-161 (2005)
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