|
すい臓は胃の後ろにある長さ20cmほどの細長い臓器です。すい臓の主な働きは、大きく二つに分けられます。その一つは、外分泌機能で、アミラーゼなどの消化酵素を大量に含んだすい液を一日に約2リットル十二指腸へ流し込みます。食物は、これらの消化酵素によって分解・吸収されて私たちが生きていくためのエネルギー源となります。
もう一つの働きは、内分泌機能です。血糖を下げるインシュリンや逆に血糖を上げるグルカゴンなどのホルモンを血液中に分泌し、血糖値を調整しています。
すい臓から発生したガンのうち90%以上は外分泌に関係した細胞、特にすい液を運ぶすい管の細胞から発生します。すい臓ガンは、我が国のガンによる死因の6.8%を占めており、肺ガン、胃ガン、大腸ガン、肝ガンに次いで第5位です。すい臓が体の奥深くにあるため検査がしにくく、特有の症状が現れにくいため、すい臓ガンの早期発見が簡単にはできないため治療困難なガンの一つとなっています。
最近、果物などに豊富に含まれている葉酸をたくさん摂取するとすい臓ガンの発症リスクが下がることが、スウェーデンに住む81,922人(男性45,306人、女性36,616人)を対象とした研究から明らかになりました。この研究以前にもフィンランドで行われた男性の喫煙者に対する葉酸の効果等が明らかになっていましたが、今回のような大規模な調査結果はありませんでした。
研究は1997年に開始され6.8年間追跡調査が行われました。その結果、葉酸の摂取量が最も高いグループ(1日あたり350μg以上)は、最も低いグループ(1日あたり200μg以下)と比較してすい臓ガンの発症リスクが75%も低いことが分かりました。しかし、サプリメントから摂取した葉酸には、すい臓ガン予防効果は認められませんでした。
以上の結果より著者らは、果物など葉酸を豊富に含む食品を長期に継続的に摂取することがすい臓ガンのリスクを下げると結論づけています。また、サプリメントの摂取は推奨できないとしています。この結果は、果物の摂取はすい臓ガンの予防に有効であるとする今までの疫学調査の研究結果を支持しています。
果物に含まれている葉酸の量は、200g当たりで、イチゴには180μg、サクランボには76μg、スモモには74μg、キウイフルーツには72μgなどと豊富です。上記のスウェーデンの研究には、1日当たり葉酸の摂取量が200μg以下のグループと200-249μgのグループの比較も示されており、1日当たりの摂取量が200-249μgになるだけでもすい臓ガンのリスクが半分になるとしています。従って、毎日くだもの200g以上の摂取は、すい臓ガンのリスクを下げるのにたいへん有効です。
【文献】 Larsson,
S. C. et al.: Folate Intake and Pancreatic Cancer Incidence: A Prospective Study
of Swedish Women and Men. J. Nat. Cancer Inst. 98: 407-413. (2006)
|
|
|