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大腸ガンのほとんどは、結腸と直腸の粘膜の分泌腺組織にできる腺ガンです。初め結腸や直腸の粘膜に腫瘍ができて、ガンが進行すると結腸壁や直腸壁に浸潤していきます。
我が国では、大腸ガンが増加していますが、発生には遺伝的因子よりも環境的因子の比重が大きく、食生活の急激な欧米化、特に動物性脂肪やタンパク質のとり過ぎが原因ではないかと考えられています。40歳以降から多くなり、60〜75歳で最も多く発症します。
大腸ガンと食事パターンとの関係について男性の自衛隊員1,341人を対象に解析した結果、果物と野菜を多く摂取しアルコールの飲用が少ない人は、そうでない人と比較して大腸ガンになりにくいことが九州大学と自衛隊病院との共同研究から明かとなりました(文献)。
研究では、1)果物、野菜、乳製品、デンプンを多く摂取し、アルコールの摂取量が少ない食事パターン(DFSA食事パターン)、2)動物性食品の多い食事パターン(欧米型食事パターン)、3)果物の摂取量の少ない伝統的な日本型食事パターンを特定しました。
DFSA食事パターンの特徴は、他の2つのパターンに比較して果物の摂取量が多いことです。また、DFSA食事パターンと伝統的な日本型食事パターンにおける野菜の摂取量はほぼ同等量でした。
これら3つの食事パターンについて解析したところ、DFSAパターンの食事をしている人は、そうでない人と比較して大腸ガンの前駆体である腫瘍ができるリスクが38%少ないことが分かりました。少し専門的になりますが、4分割したオッズ比は、1.00、0.97、0.71、0.62で、p値は0.003と統計的に有意な逆相関を示しました。一方、他の2つの食事パターンではこうした傾向は認められませんでした。 この研究の優れている点は、研究の開始前にすべての被験者に対して結腸鏡検査で大腸の全域を調べ、腫瘍がないことを確認していることです。そのため、この研究は他の大腸ガンに対する疫学調査と比較してその精度が高いと考えられます。
大腸ガンと果物、野菜との関係、あるいは大腸ガンと食物繊維との関係については様々議論されており、効果は低いとの報告もあります。しかし、今回の研究結果は、大腸ガン予防に果物の摂取が有効であるとする有力な証拠です。
また、2003年の世界保健機構(WHO)と食糧農業機関(FAO)が公表した果物と野菜の摂取は予防的であるとする報告、及び、国際ガン研究所(IARC)の果物摂取は大腸ガンのリスクを下げる可能性があるとする報告を強く裏付ける成果です。
【文献】 Mizoue,
T. et al.: Dietary Patterns and Colorectal Adenomas in Japanese Men - The
Self-Defense Forces Health Study. Amer. J. Epidemiol. 161: 338-345. (2005) [doi:
10.1093/aje/kwi049]
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