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肥満は、心臓病などの生活習慣病を誘発する危険因子です。食事による摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る状態が長く続くと、余ったエネルギーは脂肪として体内の脂肪細胞に蓄えられます。それが一定の限度を超えた状態が肥満です。肥満かどうかの判定基準としてBMI(Body
Mass
Index)が用いられており、BMI=25を超えると肥満とみなされていました。一方で、BMIの判定基準作成に用いられたデータには偏りがあり、主にヨーロッパや北アメリカのデータが用いられ、アジアなどのデータが少ないため、肥満の程度と心臓病発症のリスクとが相関していないのではないかと考えられ、再定義する必要があるとされていました。
そこでYusuf博士を中心とした研究チームが52カ国27,098人を対象に調査した結果、BMI値(BMI)よりもウエスト/ヒップ比(ウエストをヒップで割った値)を測定する方が心臓病発症のリスク判定に有効であると医学雑誌Lancetに発表しました。
研究では心筋梗塞になった人と健康な人を比較したところ、心筋梗塞にかかった人は、健康な人に比べてBMI値は少し高い値でしたが、中東と南アジアの人では差がありませんでした。一方、ウエスト/ヒップ比は、心筋梗塞になった人は、健康な人と比べてきわだってその数値が高いことが分かりました。さらに、男女差、地域間差に関係なくリスクを一貫して判定できることが明かとなりました。
また、腹部の脂肪の量を反映しているウエストサイズは大きくなると心筋梗塞のリスクが高まり、逆にヒップサイズは大きくなると心筋梗塞のリスクが減じることも分かりました。ウエスト/ヒップ比が男性で0.9、女性で0.83以上であると以下の人に比べて男性では1.73倍、女性では1.90倍に心筋梗塞のリスクが高まりました。例えば、男性ではウエスト81cm、ヒップ90cmのウエスト/ヒップ比は0.9です。女性ではウエスト78cm、ヒップ94cmのウエスト/ヒップ比は0.83です。
以上の結果から、著者らはウエスト/ヒップ比はBMIより心臓病発症のリスクを正確に反映していると結論づけています。
BMIは、どれくらい太っているかを表していますが体の形はわかりません。BMIが同じ人でもウエストが太い人もいればヒップが大きい人もいます。それに対して、ウエスト/ヒップ比は体の形が分かります。ウエスト/ヒップ比が大きい、すなわち上半身(腹部)に脂肪が蓄積している内蔵型肥満は、上記論文でも分かるように心臓病など生活習慣病発症の原因となります。
上半身(腹部)肥満は、食事療法や運動療法によく反応するので下半身(ヒップ)肥満に比べて減量しやすいという特徴があります。従って、果物(「毎日くだもの200グラム以上」)、野菜、低脂肪食品を主体に摂取して、飽和脂肪、コレステロール、総脂肪を減らす食事に換えて腹部の肥満を解消しましょう。
【文献】 Yusuf,
S., et al.: Obesity and the risk of myocardial infarction in 27000 participants
from 52 countries: a case-control study. Lancet 366: 1640-1649. (2005)
[DOI:10.1016/S0140-6736(05)67663-5]
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