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人が食事を終えるのは、摂取した総カロリーが十分量に達したときではなく、空腹感が満たされ満腹と感じた時です。なぜ人は満腹を感じるかについて科学的な調査が行われた結果、摂取した食事のボリューム(体積)に関係することが分かりました。
ボリュームを増やす最も効果的な成分は食品に含まれている水です。水は、カロリーを増やすことなくボリュームを増やすことができます。また、立体的な三次元構造を持つ食物繊維は、水を吸収するとゲル化しボリュームが非常に大きくなります。
例えば、リンゴの食物繊維は水を吸収すると体積が12〜38倍にも大きくなります。このように食物繊維は、ボリュームを大きくする力が強いため、相対的にカロリーを減らす働きがあります。
従って、水分と食物繊維の多い食品は、ボリュームが大きく、カロリーが低くなります。そのため、こうした食品を摂取すると満腹感が得られ、その結果として摂取カロリーを減らすことができます。水分が多く食物繊維も多い代表的な食品は果物です。
リンゴ丸ごと、リンゴのピューレ、リンゴジュースを用いた比較試験から食品中の水分・食物繊維と満腹感との関係が明らかになりました(文献1)。食物繊維を2.9%含むリンゴを丸ごと食べたときの満腹感は、食物繊維の三次元構造が崩れたピューレや食物繊維をほとんど含まないジュースよりも高いことが分かりました。
また、オレンジとグレープフルーツの試験でも、食物繊維を1.5%含むオレンジ、1.3%含むグレープフルーツをそのまま食べた方が、食物繊維をほとんど含まないジュースを飲んだときよりも満腹感が高いことが分かりました(文献2)。
こうした研究から、満腹感は、食物繊維の含有率、水分含量、摂取した食事のボリュームと明確に関係することが分かりました。このことは、食事のメニューに果物を加えると満腹感が高められることと、結果として摂取カロリーが減ることを示しています。
さらに、食物繊維は、体重とも関係しています。食物繊維の摂取量と体重との関係を調査した22論文中20論文で、食物繊維の摂取量が多い人ほど体重が軽いことが分かりました(文献3)。さらに重要な点は、摂取カロリーを制限しなかった11の論文をまとめた結果から食物繊維の摂取量が多いグループは、摂取量の少ないグループより統計的に有意に体重が減少していたことです。
この結果は、食物繊維の摂取量が多いと満腹感が得られ、結果として摂取カロリーが減るとした前述の結論と一致します。
こうした食物繊維と体重との関係を調査した研究から、食物繊維の摂取量を1日あたり14g増やすと3.8カ月後には体重が平均で1.9kg減少するとしています。
以上の科学的根拠から、ダイエットには、水分や食物繊維を豊富に含む果物まるごとの摂取が効果的です。同時に、この結果は、サプリメントで摂取してもダイエットに効果がないことも示しています。
毎日の食事のメニューに200g以上の果物を加えてみませんか。中くらいのリンゴなら1個、ミカンなら2個です。
【文献】 1)
Haber, G.B. et al.: Depletion and disruption of dietary fibre. Effects on
satiety, plasma-glucose, and serum insulin. Lancet 2: 679-682. (1977)
2)
Bolton, R.P. et al.: The role of dietary fiber in satiety, glucose, and insulin:
studies with fruit and fruit juice. Am. J. Clin. Nutr. 34: 211-217.
(1981)
3) Howarth, N.C. et al.: Dietary fiber and weight regulation.
Nutr. Rev. 59: 129-139. (2001)
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