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わが国の果物摂取量は世界的に見て非常に少ないのが現状です。なぜ、日本人は果物を食べないのでしょうか。いろいろな理由があると思われますが「果物には果糖が多く含まれているため、中性脂肪が増えるのが怖い」という健康知識も、大きな理由の一つです。先週号のメルマガ「果物&健康NEWS」の読者からのメールにもありました。
そのため、果糖を含む果物と中性脂肪との関係について果樹研究所を中心とした研究グループは、果物の中では比較的果糖を多く含むリンゴと中性脂肪との関係を探るためのヒト介入研究を行いました。
試験ではボランティアに、リンゴを1日420g(1個半から2個)、3週間、毎日摂取してもらい、血液中の中性脂肪を測定しました。食べていただいたリンゴ(全部)には、果糖が31g含まれていました。果糖を含む糖全体では62g含まれていました。
結果は予想以上で、14名のボランティアのうち、12名で中性脂肪の低下が確認されました。リンゴを摂取する前のボランティアの血液中の中性脂肪値は110
mg/dlでしたが、リンゴを摂取した後では87
mg/dlと、統計的に有意に21%も減少していました。
このことは、よく言われていた「果物は、果糖が多いので中性脂肪を増やす」とする説をくつがえす結果で、果物を摂取すると中性脂肪はむしろ下がることを示しています。
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また、果物に含まれている糖類(特に、果糖やショ糖)は、肥満や糖尿病の原因となるので、果物は体によくないと記述されることがあります。そこで、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、食品から供給される甘くて栄養になる糖類(ショ糖、果糖、ブドウ糖など)に関する1000以上の文献を精査し、糖類の健康面における評価を行いました。
その結果、一般に言われている疾病(肥満、糖尿病、冠動脈心臓病、高血圧など)について糖が直接的な原因であるという明確な証拠はないと結論づけ栄養学雑誌(全216頁)に発表しました(文献1)。
この報告は、従来信じられていた糖類に対する認識を変更するものとして、医師や栄養関係の研究者たちを驚かせました。そこで、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関:国連の専門機関)の両機関は、FDAが出した結論は正しいかについて再度検討を行いました(文献2)。
その結果、「糖類の摂取は肥満を促進する」という考えは誤りであり、果糖やショ糖などの糖類が生活習慣病に直接結びつくことはないとし、FDAの報告の結論を支持しました。同時に、この委員会では、果物、穀類、牛乳(乳糖を4〜5%含む)などから供給される糖類(炭水化物)は、生命を維持し、健康に活動するためのエネルギーの供給源とし最も重要な栄養素であると結論づけました。
以上のことから、「果糖やショ糖など糖類を含む果物についての有害論争」には、科学的な終止符が打たれたものと考えています。
【文献】 1)
Glinsmann, W.H. et al.: Evaluation of health aspects of sugars contained
in carbohydrate sweeteners. Report of Sugars Task Force, 1986. J. Nutr. 116:
S1-S216. (1986)
2) FAO Food and Nutrition Paper No 66. Carbohydrates in Human Nutrition.
Report of a Joint FAO/WHO Expert Consultation. FAO Rome (1998)
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