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 ■ 果物摂取で心臓病予防
      
冠動脈疾患(心臓病)予防

子供のための食事摂取基準:アメリカ心臓病協会


 
      
□ 冠動脈疾患(心臓病)予防

 心臓の筋肉(心筋)に血液を供給している血管を冠動脈と言い、この冠動脈が動脈硬化などにより心筋に必要な血液を供給出来なくなると狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患(心臓病)となります。

 食物繊維を摂取すると、血圧が下がり、血液中の脂質やインシュリン感受性が改善されると報告されていることから、食物繊維は冠動脈疾患に有効であると考えられていました。そこで、アメリカやヨーロッパで行われている10件の疫学調査プロジェクトのデータをまとめて食物繊維の摂取量と冠動脈疾患との関係について分析が行われました。

 男性91,058人、女性245,186人あわせて約34万人を対象に6〜10年間追跡したところ、食物繊維を1日10グラム多く食べると、冠動脈疾患の罹病率が14%、死亡率が27%低くなることが分かりました。

 次に、食物繊維を、穀類由来、果物由来、野菜由来に分けて、冠動脈疾患との関係を調べたところ、1日あたりの摂取量が10グラム増えると、冠動脈疾患の罹病リスクは、穀類由来の食物繊維では0.90倍、果物由来では0.84倍、野菜由来では1.00倍でした(表)。また、冠動脈疾患の死亡リスクは、穀類由来の食物繊維では0.75倍、果物由来では0.70倍、野菜由来では1.00倍でした(表)。

 このことは、果物由来の食物繊維を摂取すると冠動脈疾患の罹病率では16%、死亡率では30%低下することを示しています。穀類由来の食物繊維も冠動脈疾患のリスクの低下(罹病率10%低下、死亡率25%低下)が認められましたが、野菜由来の食物繊維については、はっきりしたリスクの低下が認められませんでした。この結果から果物由来と穀類由来の食物繊維は、冠動脈疾患の予防に有効であると結論付けられます。

表 食品群ごとの冠動脈疾患の罹病リスクと死亡リスク
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             冠動脈疾患
          罹病リスク  死亡リスク
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穀類由来食物繊維    0.90     0.75
果物由来食物繊維    0.84     0.70
野菜由来食物繊維    1.00     1.00
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 現在、日本人の1日あたりの食物繊維の摂取量は14g(平成14年国民栄養調査)です。今より食物繊維を10g多く摂取するのはなかなか大変ですが、DASH摂取プラン(メルマガ「果物&健康NEWS」vol.17-19)などの摂取法を参考にすれば、カロリーを増やさずに食物繊維を増やすことが十分に可能です。

原著:Pereira MA, et al. Dietary fiber and risk of coronary heart disease: a pooled analysis of cohort studies. Arch Int Medicine 164: 370-376. (2004)




 
      
□ 子供のための食事摂取基準:アメリカ心臓病協会

 アメリカの心臓病協会は、アメリカ小児科学会の承認を得て子供のための食事摂取基準を公表しました(文献)。この科学的声明は、子供たちに対する心血管疾患予防のための食事の基礎的な摂取原理を示しています。

 最近、アメリカの子供たちに心血管疾患と関わる栄養状態などに大きな変化が起きています。子供たちに対する調査データの解析から、子供でも心血管疾患のリスクが増加していることや食事内容に問題があることが分かりました。

 心血管疾患の原因の75〜90%は、高脂血症、高血圧、糖尿病、喫煙、運動不足、および肥満が関連しています。アロテーム動脈硬化症は子供の頃から始まり、30〜40年かかって血管が硬化してきますが、栄養バランスの良い食事やアクティブなライフスタイルなどでリスクを下げることができます。

 そのため、アメリカ心臓病協会は子供たちに対する最適な心血管疾患予防のための食事摂取のガイドラインを提供しています(表)。科学的証拠を基礎としたこのガイドラインは、総カロリーの適切な摂取と栄養素をバランスよく摂取するためにどの食品をどのくらい摂取したらよいかを選択するための指針を示しています。

 アメリカ心臓病協会が推薦する食品は、果実、野菜、全粒穀類、低脂肪か無脂肪乳製品、豆、魚、脂肪のない肉です。また、飽和脂肪酸とトランス型脂肪酸、コレステロール、塩、あとから添加する砂糖の摂取を控えることとしています。特に、最近の子供たちは食物繊維の摂取量が非常に少ないことと、ナトリウムの過剰摂取、カリウムの不足に注意が必要であるとしています。

 子供たちに対するこの食事摂取基準では、果物を野菜と同等かそれ以上摂取することを勧めています。果物には良質な食物繊維やカリウムが豊富で、ナトリウムがほとんど含まれていないためです。


表 アメリカ心臓病協会が勧める食事摂取基準
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       1 歳    2〜3歳    4〜8歳
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カロリー   900 kcal 1000 kcal
女子                1200 kcal
男子                1400 kcal
脂肪     30%〜40%  30%〜35%  25%〜35%
(総カロリーに対して)
牛乳/乳製品  2 cups   2 cups   2 cups
赤身の肉/豆  1.5 oz   2 oz
女子                 3 oz
男子                 4 oz
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果物      1 cup  1 cup   1.5 cups
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野菜     3/4 cup  1 cup
女子                 1 cup
男子                 1.5 cup
穀類      2 oz    3 oz
女子                 4 oz
男子                 5 oz
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食物繊維     19g(1-3歳)     25g
カリウム    3000mg(1-3歳)    3800mg
ナトリウム  1500mg以下(1-3歳)   1900mg以下
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【文献】
Endorsed by the American Academy of Pediatrics, et al.: Dietary Recommendations for Children and Adolescents. - A Guide for Practitioners: Consensus Statement From the American Heart Association. Circulation. 112: 2061-2075. (2005)




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