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□ 疾病予防における科学的根拠とは
健康志向が高まっていますが、何をどのように食べたら良いのかわからず、氾濫する情報に惑わされ、必要でもないサプリメントなどにお金をかけるような状況が生まれています。その一方で、我が国の健康づくりは停滞し、生活習慣病も増加しています。健康21の中間評価では、食生活の改善など70項目の目標値に対して20項目で悪化しています。この矛盾の一因として、健康情報をめぐる混乱が関与していると思われます。
そのため、科学的に信頼できる健康情報を伝えることの重要性が再認識され、科学的根拠(エビデンス)の啓蒙の必要性が高まってきています。科学的根拠とは、科学研究によって有効性が確かめられた証拠のことです。科学研究には、大きく分けると実験系の研究と疫学系の研究の二つがあります。さらに、実験系の研究には、信頼性の高い順に、ヒト介入研究、動物実験、試験管内実験などがあり、疫学系の研究には、コホート研究、症例対照研究、断面研究などがあります。最も科学的信頼性が高いのは、ヒト介入研究の結果とコホート研究の結果とが一致したときですが、健康食品ブームの中で科学的証拠として提示されているデータには、試験管内実験レベルの情報が多く見受けられます。
人の健康の維持増進を目的とする科学研究分野では、人を対象とした研究は欠くことができません。従って、科学的根拠においては、試験管内実験レベルや動物実験レベルの研究よりも、人を対象として行われた疫学研究やヒト介入研究の結果が重んじられます。
疫学研究の代表的な例が、ガンに対する食品などの評価を行った「Food,
Nutrition and the Prevention of Cancer: a global
perspective(1997)」の報告です。世界中の4500以上の論文を調べ、ガンのリスクを下げるか、上げるかについて科学的に検討し、ガン予防のためには果物と野菜を摂取する必要があることを明かにしました。この報告は、アメリカで行われている「5
A
DAY運動」を科学的に裏付けています。
また、ヒト介入研究により、食塩を減らし、果物と野菜を多く摂取すると高血圧を予防できることが明らかとなり、高血圧予防のためのDASH摂取プランが作成され、高血圧予防のための啓蒙運動が進められています。このヒト介入研究の成果は、アメリカだけでなく、我が国でも「日本人の栄養摂取基準2005」の科学的裏付けとして採用されています。
以上のように、疾病予防には信頼性の高い科学的根拠に基づいた食品の摂取が大切です。健康の維持・増進に果物の摂取が重要であるとする「毎日くだもの200グラム」は、人を対象とした信頼性の高い科学的根拠に基づいています。
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