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昭和40年(1965)、「にほんのうた」シリーズの第一弾として作られた、永六輔作詞、いずみたく作曲の「十和田の底に」では、「湖の底に沈んだリンゴ 愛の深さに寂しさに ・・・」と歌われました。青森県の、そしてリンゴのイメージにぴったりした美しい歌で当時ヒットし、今も歌い継がれている名曲です。
ただ、現在この歌の歌詞は「湖の底に沈んだあなた」と変更されています。そうなのです。リンゴは残念ながら水に沈みません、浮くのです。理由は、リンゴの比重が水よりも軽いためです。
比重とは、「ある物質の密度と標準物質の密度(普通は4℃の水)との比」と定義されています。水の中に入れたとき、それが浮かぶか、沈むかはその物質の比重によります。氷が浮くのは、水の時よりも比重が軽いからです。
比重は、アルキメデスが、王冠の金の純度を調べるよう命じられたとき、良い考えが浮かばず疲れてお風呂に入ったとき、体が軽くなっていることに気づき、思いついたと言われています。うれしさのあまり裸で街に走りでたとの逸話があります。
美味しいリンゴを選ぶとき、ずっしりと重い果実がおすすめですが、これは果実の中の成分が充実しているため相対的に比重が大きいことを示しています。この原理を利用した独創的な研究が志村勲東京農工大名誉教授らによって行われました。食塩を水に加えて、比重1.01〜1.15の食塩溶液を作り、収穫した鬼皮付きのクリを、この比重の分かった食塩溶液に順番に入れていき、クリが浮かんだところをその果実の比重とする方法を開発しました。この方法を用いて、たくさんの品種を調らべてみると比重1.06以上の果実の肉質は粉質で、デンプンが多く含まれていることが、比重1.03以下では、粘質で、デンプン含量が少なく、水分含量が多いことが分かりました。そして、比重が大きいクリほど美味しいことが分かりました。そのため、比重はクリの品質指標の一つとなっており、クリの育種に応用されています。
皆さんも、色々な果物の比重を測って美味しさと比べてみて下さい。
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