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イチゴは果実か野菜か、疑問に思われたことはありませんか。皆さんは、「生で食べるのが果物、油炒めなど料理をして食べるのは野菜」、「食後のデザートとして食べるのは果物、副食は野菜」としてイチゴは、果物と思っているのではないでしょうか。でも、「木に成るものは果物、苗を植えてから1年以内に収穫するのが野菜」としたらイチゴは野菜になりませんか。
政府機関での分類ではどうでしょうか。野菜生産出荷統計(農林水産省)では、「一般に、野菜とは、食用に供し得る草本性の植物で、加工の程度の低いまま副食物として利用されるもの」とし、イチゴは「果実的野菜」としています。国内の植物に被害をもたらす海外からの病害虫を未然に防ぐ仕事をしている植物防疫所(農林水産省)の統計でもイチゴは野菜です。
一方、農林水産省でも青果物卸売市場調査報告の統計では、イチゴは果物としています。その理由は昔、出荷先が主に果物店であったことに由来しています。日本食品標準成分表(文部科学省)ではイチゴは果物に、また、成分表を基礎としている国民栄養調査(厚生労働省)でも果物です。家計調査(総務省)、日本貿易統計(財務省)もイチゴは果物に分類されています。
学問的にはどうでしょうか。園芸学では、主として植物としての特性と栽培の観点からイチゴは野菜と定義・分類しています。そのため、私たち果樹研究所ではイチゴの研究はしておらず、野菜茶業研究所が野菜として研究を担当しています。野菜園芸ハンドブックでは、野菜を「副食物として利用する草本類の総称」と定義し、イチゴを野菜に分類しています。食品としての利用部分による分類でもイチゴは果菜類で野菜です(野菜園芸大辞典)。
なんだか、大変ややこしいことになっているように思えます。でも、基本的な点を押さえるとイチゴの分類も分かりやすくなります。生産現場や生産現場に近い学問である園芸学ではイチゴは野菜で、流通関係や消費者の生活感覚をもとにした分類では果物となります。
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