Home page > サイエンス >
 ■ 果物の加工技術
      
内 容

  シラップ漬缶詰

  果実飲料

  ジャム類

  砂糖漬け

  ドライフルーツ

  ワインなど果実酒


  
シラップ漬缶詰

 シラップ漬缶詰の原料として、ウンシュウミカン、モモ、オウトウ、セイヨウナシ、クリ、ビワ、ブドウ、アンズ、スモモ、イチジク、ナツミカン、リンゴなどがある。

ウンシュウミカン缶詰:
 製造工程は、ほとんどが機械化されている。果実を水洗・洗浄し、剥皮しやすくするため果実を 90℃程度の熱湯に1分間浸潰してからロール剥皮機によって果皮をはぐ。かたまっているじょうのうをバラバラにする(身割り:ほろ割り)ため、強圧水で噴流を果肉にあて、水圧で分離する。その後、じょうのう膜を塩酸溶液、水酸化ナトリウム溶液によって可溶化し、除去して脱皮した果肉を得る。肉詰後、糖液を注入した缶詰を脱気・密封してあと、殺菌、冷却し製品化される。

モモ缶詰:
 わが国の消費者の嗜好は白肉桃にあるため、‘大久保’が原料として用いられ、黄肉缶詰はわずかである。白肉桃は果肉が軟らかいので加工には注意が必要で、核(種子)周辺にアントシアンが着色したものは加熱後変色の原因となるので、原料としては不適である。モモ果実の剥皮は、完熟した果実では熱湯または蒸気処理によって行われるが、ゴム質の黄肉桃では2%程度の熱湯カセイソーダ溶液(沸騰水、30〜50秒)で剥皮する。次いで、果実の中央(縫合線)に沿って半割し、除核後、ブランチング、肉詰め、巻締め、殺菌して製品化する。 (2004/09/09記)




Copyright 2004 Keiichi Tanaka. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

 
果実飲料

 果実飲料のJAS法(平成10(1998)年)は国際基準にあわせて改正された。その日本農林規格は、下記の通りである。

 古い規格では、果汁の割合によって「天然果汁」(果汁含有率100%)、「果汁飲料」(50〜100%未満)「果汁入り清涼飲料」(10〜50%未満)と分類されていた。新規格では、果実の搾汁を使用した「○○ジュース」または「○○ジュース(ストレート)」と、果汁の使用割合を表わした「果汁入り飲料」の二通りに分類される。

 また、新表示は、@品名、A原材料名、B内容量、C賞味期限(品質保持期限)、D保存方法、E製造業者(輸入業者)等の氏名・名称または住所が表示される。

 品名表示では、1.果実の搾汁だけを使用したものは「○○ジュース」、それに糖類・食品添加物を加えていないものでは「ストレート」とし、糖類を加えたものは「加糖」と表示する。原料に濃縮果汁や還元果汁使用のものには「濃縮還元」糖類を加えたものは「濃縮還元・加糖」と表示する。顆粒入り果実ジュース、果実・野菜ミックスジュースにおいても同様である。2.果汁入り飲料では、果汁の使用割合を最初にもってきて、「○○%△△果汁入り飲料」となる。

 「濃縮還元」とは、元の果汁の水分をいったん蒸発させ、果実の種類により異なるが、1/4~1/6程度に濃縮する。この濃縮された果汁の状態でドラム缶などに密封し、保存する。そして、製品化する時、この濃縮果汁を原料として蒸発させた分の水分を補い元の搾汁の状態(果汁100%)に戻したものが、天然果汁(濃縮還元)となる。蒸発させる方法には@真空にすると、低温でも蒸発しやすくなることを利用するA凍らせ氷の結晶にして水分を取り除くB半透膜の原理を利用する――などがあり、これらを組み合わせることもある。濃縮還元の過程を経ることで、果汁の重量、容積を大幅に減らして運ぶことが可能になり、輸送費を削減することができる。

 ストレート製品とは、果実を搾った状態で18リットル缶やドラム缶に密封し低温保存し、濃縮工程を通さない果汁を原料として製造した製品である。ストレート果汁は、濃縮工程がないため、熱による品質への影響が少ないことから、生産量が増えてきているが、このストレート果汁のうち、果実が搾汁されると同時に製品化される物が「シーズンパック」である。

 また、改正されたJAS法では、「生,フレッシュ」、「天然,自然」の用語は表示禁止となった。しかし、「純正,ピュアー」は許される場合がある。原材料に果汁飲料だけを使用したもの(化学合成品でない香料使用のものも可)には純正,ピュアーと表示することができる。果実ミックスジュース、顆粒入り果実ジュース、果実・野菜ミックスジュース及び果汁入り飲料では純正,ピュアーの用語は禁止されている。また、内容と異なる果実や果汁の絵、ラベルの表示も禁止されている。

 一方、果汁の透明度、すなわち清澄度から分類すると、次の2種類に分別できる。

透明(清澄)果汁:
 果汁を混濁させているペクチンをペクチン分解酵素(ペクチナーゼ)を用いて分解して遠心分離などによって除去して透明化したもので、リンゴ、ブドウなどで商品化されている。

混濁果汁:
 果汁中のペクチン、パルプなどがコロイド状をなして混濁している果汁で、カンキツ、リンゴなどで商品化されている。

果実飲料製造法:
搾汁方法:
 果実の種類によって果実の構造が異なるため、これらに適した搾汁方法が採用されている。その主な方法としては、@搾りとる(リーマー型)、A圧搾して搾汁する(油圧プレス型、ローラー型、全果搾汁インライン型)、B遠心分離する(バスケット型)、C破砕して裏ごしする(パルパーフィニシャー型)方法がある。ウンシュウミカンでは全果搾汁のインライン搾汁機が用いられる。得られた果汁はろ過され、ストレート果汁では調合工程に、濃縮果汁工程では殺菌工程に移る。

調合:
 果汁原料は、産地、気象条件で成分が異なるため、製品として一定の味を保つため、異なる産地・種類の果汁混合し、必要により糖類(砂糖、蜂蜜)や酸味料(クエン酸、リンゴ酸)を加える。

脱気・殺菌:
 調合の終わった果汁は脱気・殺菌後、容器に充填して、冷却する。

濃縮:
 1/4〜1/6に濃縮し、冷却充填して、-18℃以下で冷凍保存し、必要に応じて解凍・希釈して果汁原料として利用される。 (2004/09/09記)




Copyright 2004 Keiichi Tanaka. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

 
ジャム類

 果実中にはペクチンが多量に含まれ、これが酸および糖の共存のもとで脱水作用を受けるとゲル化現象を起こし、軟らかいゼリーを形成する。この性質を利用して製造する加工品がジャム類である。ジャムに用いられる果実としては、リンゴ、アンズ、スモモ、ブドウ、ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー、グーズベリー)、カンキツ(ウンシュウミカン、スイートオレンジなど)がある。

 一般には製品中にペクチン質が0.7〜1.5%、糖が60〜65%、酸が0.4〜0.6%前後で存在すると適当な硬さのゼリーが得られる。ゼリー化は、pHが低くなるほど早くなる性質があり、pH3.1〜3.5が最適である。上記の三成分のどれかが不足する時は、ペクチン粉末、砂糖、クエン酸あるいはリンゴ酸を添加して調製する。(2004/09/09記)



Copyright 2004 Keiichi Tanaka. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

 
砂糖漬け

 砂糖漬けは果実の形状を壊さないように、また、果肉が収縮して硬くならないように糖液を浸透させる。そのため、40%位の糖液から徐々に濃度を上げ、最終糖度を60〜70% にした後、乾燥して製品化したものであり、保存性が高いのが特徴である。ブンタン果皮の砂糖漬け、マロングラッセ、クリ砂糖漬けなどがある。 (2004/09/09記)



Copyright 2004 Keiichi Tanaka. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

 
ドライフルーツ

 ドライフルーツ(乾燥果実)は果実中の水分を種々の方法で乾燥し、微生物の活動と酵素作用を抑えて、糖濃度を高め、長期の保存が可能にした製品である。乾燥方法には、自然乾燥と人工乾燥があり、さらに、加圧、常圧、真空乾燥に細分される。リンゴ、アンズ、スモモ(プルーン)、カキ、ブドウ(レーズン)、イチジク、バナナ、などの製品がある。わが国では干しガキの生産は多いが、その他の乾燥果実の製造は少なく、多くは海外から輸入されている。(04/09/09記)



Copyright 2004 Keiichi Tanaka. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

 
ワインなど果実酒

果実酒
 果実酒は果実を原料とした酒類で、中でもワインは最も馴染みが深く、製造の歴史も古い飲料である。果実の種類 製造法により風味やアルコール含量の異なる製品が製造されている。

ワイン(ブドウ酒):
 諸外国でワインと称されるものはすべてブドウを原料としているが、わが国の酒税法では、果実を用いた酒を果実酒類と分類し、果実名をつけ○○ワインと称しているため、ブドウを原料としたアルコール飲料はブドウ酒とされている。国際的な評価を得ているワイン用ブドウは欧州種である。わが国で用いられているワインの原料は米国種、欧米雑種が多く、特有の強い香り(狐臭)を有する。この香りをもつワインの国際的な評価は低いが、我が国では生食やジュースでこの香りに親しんできたので、人気は高い。

 ワイン製造におけるアルコール発酵では、おおよそ糖分の1/2がアルコールに転換する。糖度が24%であれば、アルコール分12%程度のワインが出来る。しかし、わが国のブドウの糖度はこれほど高くないため、補糖がおこなわれており、酒税法でも認められている。

赤ワイン(赤ブドウ酒)製造法:
 赤ブドウの果梗を除去したあと、果皮、種子、果汁を粉砕し、一緒にタンクに入れ、有害菌の繁殖を抑制し、褐変を防ぎ、色素の溶出をよくするため亜硫酸100ppmを加える。糖度が低いときは26°になるまで砂糖を補てんする。これに培養したワイン用酵母を1〜3%加えて、20〜25℃で4〜5日発酵させた後、液部を抜き、果皮部を圧搾して搾汁液とあわせて再度発酵させる。糖分がなくなり発酵が終了したらおり引きし、ワインをナラ樽などに入れ12〜15℃で1〜3年貯蔵する。樽貯蔵が終わったワインはろ過、ビン詰めし、12〜15℃で数年間貯蔵・熟成する。赤ワインは白ワインよりも酸度が高く、糖分が少なく、タンニンなどのポリフェノールが多い。我が国の赤ワインの原料は‘マスカット・ベーリーA'が多い。収量はブドウ原料100kg当たり75〜80lである。

白ワイン(白ブドウ酒)製造法:
 ブドウを除梗後、破砕したあと、圧搾して果汁だけをとり、これに亜硫酸50ppmとワイン用酵母を添加して15〜20℃で7〜10日間発酵させる。辛口にする場合は糖分がなくなるまで発酵させるが、甘口の場合は残糖が2〜4%になったとき、5〜10℃に冷却または遠心分離などで発酵を停止する。おり引き、熟成は赤ワインと同じであるが樽貯蔵は通常半年〜1年間と短い。白ワインは低温発酵させることと果皮、種子が入っていないので、赤ワインに比べて風味が爽快である。我が国のワインの原料は主として‘甲州'を用いるが‘セミヨン'、‘デラウェア'なども使われている。収量はブドウ原料100kg当たり60〜65lである。
蒸留酒: 果実酒を蒸留して製造したものがブランデーである。一般には、ブドウ酒を蒸留したものをブランデーといい、他の果実酒は果実ごとにアップルブランデー、チェリーブランデーなどと呼ぶことになっている。アルコール含量は40〜50% である。

果実酢:
 果実酢とは、果実を原料として作られた食酢で、果汁自体の酸味を利用する天然果汁酢と破砕果肉や果汁をアルコール発酵させた後、酢酸発酵させてつくる発酵果実酢とに分けられる。 天然果汁酢の原料としては、ユズ、スダチ、カボス、ウメ果実が用いられる。発酵果実酢には、リンゴ酢、ブドウ酢、カキ酢などがある。



Copyright 2004 Keiichi Tanaka. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.


      
ご愛読に感謝申し上げます。

 無断転載は、引用を含めて、お断りします。 ご協力に感謝いたします。


Copyright 2004 Keiichi Tanaka. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.





サイエンスへ戻る



ホームページへ戻る