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  ■ カキの渋抜き法・干し柿の作り方

      
 美味しそうに見える柿を食べたら渋かったとの経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。見ただけで甘渋を見分けられたらよいのですが、残念ながら甘ガキと渋ガキを外観や果肉から見分ける方法はありません。渋ガキの多い地域で育つと果肉にゴマ(褐斑)がないと渋ガキと思っておられる方が多いと思いますが、ゴマがなくても甘い品種もあります。

 柿は渋味、種子の有無、果肉の褐斑(かっぱん:ゴマ)の生成程度により次の4種類に分類されます。

1.完全甘ガキは、種子の有無にかかわらず全く渋味がないもので、少量の褐斑が生じるものもあります。品種として、「富有(ふゆう:褐斑が少しはいる)」、「次郎(じろう:褐斑が入らない)」、「伊豆(いず)」、「松本早生富有(まつもとわせふゆう)」、「大秋(たいしゅう)」があります。

2.不完全甘ガキは、種子が形成されると、その周囲に多量の褐斑が生じ甘ガキとなりますが、種子数が少ないと渋い部分が残ります。「西村早生(にしむらわせ)」、「禅寺丸(ぜんじまる)」、「赤柿(あかがき)」などがあります。

3.不完全渋ガキは種子が出来るとその周囲に褐斑を生じ、脱渋されますが、範囲は狭く食味的には常に渋ガキとなります。「平核無(ひらたねなし)」、「冨士(ふじ)」、「会津身不知(あいずみしらず)」などの品種があります。

4.完全渋ガキは、種子の有無にかかわらず強く渋味を感じ、褐斑を生じない渋ガキです。「西条(さいじょう)」、「愛宕(あたご)」などがあります。

 渋ガキはそのままでは食べられないので「渋を抜く」必要があります。「渋を抜く」というのは、本当に渋を取り除いてしまうのではなく、口の中の舌にある渋みを感じる器官と渋がふれないように渋を不溶化して、渋く感じるのを防ぐことです。渋ガキにアルコールをかけたり、炭酸ガスをかけるとカキの中にアセトアルデヒドという成分が出来ます。この成分が渋とくっついて水に溶けない形になります。

 渋柿の脱渋には様々な方法が用いられていますが、広く行われている主な方法は以下の通りです。

(1)アルコール脱渋
 25〜35%の焼酎を皿に入れ、果実のへたの部分を軽くつける程度に浸すか、吹きかけて、厚さ0.08mmのポリエチレンの袋に詰め、密封して室温に放置しておけば、約1週間で渋が抜けます。

(2)ドライアイス脱渋、炭酸ガス脱渋
 果実重の100分の1〜2のドライアイスを新聞紙に包み、厚さ0.1mmのポリエチレン袋に入れ、カキと一緒に密封しておくと5日程度で渋が抜けます。ドライアイスに果実が直接触れると傷みます。原理はドライアイスが気化するときに炭酸ガスが発生するためです。炭酸ガス脱渋は、定温条件に果実を置き、果実温度を均一にして100%の炭酸ガスを導入した後、果実を空気に触れさせ脱渋する方法です。商業的には炭酸ガスを使いますが、家庭ではドライアイスの方が手に入りやすいと思います。

 上記以外に、渋ガキの渋を抜く方法として昔から行われているのが干し柿です。秋が深まると庭先に渋ガキが干してある光景が、昔はよく見られました。干し柿の作り方のキーポイントは皮を剥くことです。皮を剥くと果肉表面が乾燥し、皮膜ができるため、果肉内が嫌気状態になるためアセトアルデヒドができて、渋と反応して渋が不溶化するためしぶを感じなくなります。

干し柿の作り方
 干し柿は、「あんぽ柿」と「ころ柿」に大別されます。前者は、50%前後の水分を含み、表面は乾いているものの、内部は生乾きのものを言います。後者は水分が25〜30%になるまで乾燥させたものです。干し柿の表面付いている白い粉は、果肉が乾燥するのに伴って、果肉の糖成分が表面に出てきたものでブドウ糖と果糖の混合物(6:1)です。

 干し柿の脱渋は、主に、渋味成分である可溶性タンニンがアセトアルデヒドの作用で不溶性タンニンに変わるためですが、水溶性ペクチンが作用するメカニズムについて山形大学の平教授が明らかにしています。皮を剥いて乾燥させる干し柿の場合には、乾燥に伴いタンニン細胞が崩壊し、タンニンが細胞外へ溶出され、細胞外に存在する水溶性ペクチンと複合体を形成し渋味が減少することを解明しました。また、このときアセトアルデヒドが共存するとタンニンの高分子化が促進されるとのことです。


      
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