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 フルーツ・エピソード No.5
      

□ ビタミンCの発見



 果物に含まれている成分といえばビタミンCを連想する方が多いのではないでしょうか。ビタミンCは、オレンジには80mg/200g、レモンには200mg/200g、甘ガキには140mg/200g、キウイフルーツには138mg/200g含まれています。ビタミンCの一日の栄養所要量は、100mgですので、甘ガキなら果実半分程度で十分にまかなえます。

 大航海時代のヨーロッパの船員たちが最も恐れていた病気が「壊血病」です。壊血病は、歯茎が腫れ、目が乾燥し、皮膚に青アザのような出血を伴い、最終的に死に至る病です。バスコ・ダ・ガマのインド航路発見の際には、160〜170人(文献により数値が異なる)の乗組員のうち約100人が壊血病で死亡したと伝えられています。彼らは、1497年7月にポルトガル・リスボンを出航し、1498年5月にインドのカルカッタに達しました。

 壊血病の原因を世界で最初に科学的に解明したのがイギリス海軍の船医ジェームス・リンド(James Lind)です。リンドは、スコットランドの裕福な商人の家庭に生まれ、外科医に弟子入りをして医学の道を進み、軍医として軍艦ソールズベリー号に乗船しました。リンドを乗せたソールズベリー号では、壊血病で多くの船員が亡くなりました。彼は、病気の原因として食事内容に注目し、1747年5月に、壊血病予防のための実験を行いました。航海中と同じ環境になるようにして、2人ずつ6種類の献立を2週間食べさせたところ、オレンジとレモンを与えた2人は、一週間後には病状が回復しました。この実験結果を1753年に報告しましたが、イギリス海軍がレモンやライムジュースなど柑橘類の摂取を決めたのは1795年になってからでした。このカンキツ類の摂取は壊血病を劇的に予防しました。そのため、イギリス人のニックネームがLimey(ライミイ:ライムを食べる人、俗語)となったとのことです。

 リンドは、ビタミンC発見への道しるべを残したばかりでなく、世界で初めてヒト介入研究(臨床実験)を行った科学者として賞賛されています。その後、セントジェルジ(ビタミンCの父)が、ビタミンCを発見し、ノーベル賞(1937)を受賞しました。我が国におけるビタミンC摂取への寄与度は果物が他の食品を押さえて第1位です(表)。

表 ビタミンCへの寄与度
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順位 食 品      R2
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1  果物類     0.2526
2  緑黄色野菜   0.1343
3  その他の野菜  0.0521
4  いも類     0.0066
5  調味嗜好飲料  0.0067
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