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第8回
□ ナシの収穫判定用にカラーチャートを開発
果実を適熟期に収穫する判定方法にはいろいろありますが、現在、多くの果樹で果色の変化を目安とする方法が採用されており、私たちの開発した果実カラーチャートが使われています。10種類のカラーチャートが作られていますが、ナシでは果実の表面の色と、表面を薄く剥がした緑の部分の色(これを地色といいます)の両方のカラーチャートがあります。
収穫期を判定するには、果色の変化を細かく分けすぎても見分けにくく指標として具合が悪いことが分かりました。そこで、誰にでも判断しやすいように、未熟から成熟、過熟までの色の変化を1〜6の段階に分けて色の指標が作成されました。実際に使用されているのは栽培地域による色の差が比較的少ない地色が用いられています。
カラーチャートが作られたきっかけは、今ではその栽培面積が激減し、三水の呼び名からも忘れられている‘新水’です。‘新水’が登場し‘豊水’が世に出た当時は、‘幸水’を含め三水と称して、美味しいナシの代表選手でした。この頃、それまで80年近い栽培の歴史のある‘長十郎’‘二十世紀’を中心として経験的に確立されていた収穫期判定方法では、これら三水の収穫適期と一致しないなど不都合な点が明らかとなりました。特に、真夏に成熟する‘新水’で問題となりました。非常に美味しい状態で収穫された果実が、市場で荷を開けて見ると、果実が黒くなっている「黒玉果:黒変現象」が発生しました。そのため、生産現場に大きな打撃を与えました。
そこで「黒玉果」の防止方法についての試験を始めました。その結果、‘新水’の収穫期は、‘長十郎’などの収穫期とは異なることが分かりました。そこで、この収穫時期を誰が見ても分かるように開発されたのが果実カラーチャートです。開発された果実カラーチャートは、日本園芸農業協同組合連合会から売り出され、一般農家にも普及し、‘新水’の「黒玉果」を防げただけでなく、品質の良い果実を出荷するための基準ともなりました。
カラーチャートには植物の栄養状態を判定する葉色カラーチャトや花の色を表すためのカラーチャートなどもあります。皆さんも庭に植えられている果樹について、熟期の異なる果実の写真を撮り、収穫時期の判定基準を作ってみてはいかがでしょうか。きっと翌年には、美味しい果物が食べられると思います。
(2005/7/29記)
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