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第37回
□ 嫁と姑
私の姑は,5男3女を育てた。
夫は,彼女の8番目の子。
末っ子だ。
新婚旅行に向かう列車の中で,姑からの手紙を読んだ。
息子と結婚したことへの感謝と祝福と,
「これからは,○○のことを貴女に託します。」というものだった。
読んでいて,自然と涙が流れた。
嫁と認められ,新しい家族を創った瞬間だった。
フルタイムで働く私をいたわり,土曜日には食事に招いてくれた。
しばしば,お小遣いもいただいた。
時々訪れる,他の子供たちが義母に贈った金を貯めたものだった。
そのときの私は,若く,
親は,「自分より資産を持っているもの,」
「現金を持っているもの、」とばかり信じていた。
しかし,農家に嫁ぎ,年老いた彼女には,現金収入の道はなかった。
着物の上に着る毛糸の羽織を作った。
姑に贈ったものは,その羽織と読みたいと言った源氏物語だけだった。
私と彼女は,嫁と姑。
静かに菩提を弔っている。
(2005/09/09)
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