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近年、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、花粉症などアレルギー性疾患が増加しており、日本人の約3割の人が、何らかのアレルギーに関係があると言われています。アレルギーとは、身体を守るための免疫機能に異常が生じて起こる疾患です。アレルギー性患者が増えた原因は、栄養バランスの偏りが大きく関与しており、食事内容が、低脂肪食型から、欧米型の高脂肪食型に変化したためと推定されています。
イギリスでは、子供に気管支ぜん息やアトピー性疾患の患者が増加しています。そのため、子供の発育を対象とした疫学調査が行われました。1958年3月に生まれ、33才になった男性5582人と女性5770人を対象に気管支ぜん息症状発症と生鮮果実の摂取量について長期間の追跡調査を行った結果、生鮮果物を摂取しているグループでは、摂取していないグループと比較して、気管支ぜん息のあえぎ症状の発生回数が35%軽減され、発声障害発作が54%軽減されました。このことから、気管支ぜん息の症状改善には、生鮮果物を多く摂取することの重要性が明らかとなりました。
上記の報告を受け、リンゴが気管支ぜん息と関係するかについてイギリスの南ロンドン地区で気管支ぜん息患者1471人と健常者2000人についての疫学調査を行った結果、1週間に2回以上リンゴを摂取すると気管支ぜん息に罹病するリスクが32%も減少していました。また、リンゴ摂取による気管支ぜん息発生抑制効果は、15才より前に発生する気管支ぜん息に対してより強く関係していると報告されています。
アレルギー性疾患発症にはヒスタミンが重要な役割を果たしています(用語解説参照)。ヒトの体の中にある肥満細胞からヒスタミンなどが、細胞の外に放出されるとアレルギーが発症します。そこで、果樹研究所では、リンゴペクチンと血液中のヒスタミンに着目し、アレルギー予防効果についてヒト介入研究を行いました。健康な被験者14人(平均47才)を対象に、リンゴペクチン顆粒を摂取していただき、血液中のヒスタミン濃度を調べました。その結果、リンゴペクチン摂取後、ヒスタミン濃度が平均値で0.70ng/mlから0.53ng/mlへと統計的に有意に24%減少しました。また、被験者14人中13人でヒスタミンの減少が認められました。
アレルギー患者のヒスタミン濃度は健常人に比べ有意に高いことが報告されていること、および、リンゴペクチンによりヒスタミン濃度が低下することから、リンゴペクチンにはアレルギー性疾患に対する予防効果があると考えられました。今回のリンゴペクチン摂取によるヒト介入研究と、イギリスの疫学調査とを重ね合わせて考えると、リンゴを毎日摂取することによりアレルギーが予防できると期待されます。
□ 用語解説−ヒスタミン
ヒスタミンとは、アミノ酸のヒスチジンから合成され、外敵から身体を守る免疫系においてメジャーな役割をする生体アミンの一種です。血液中に遊離されたヒスタミンは、各器官のヒスタミン受容体と結合し、気管支ぜん息、花粉症などアレルギー性疾患をひきおこす引き金になる物質です。 また、ヒスタミンは、睡眠・覚醒リズムの調節、食欲の調節、痛みの感受性などを制御している神経伝達物質としても知られています。
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