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 ■ キッズQ:イチゴが果物ならトマトだって果物じゃないの?


      
 イチゴは消費者に近い分類では果物でした(キッズQ No.5)。では、トマトはどうでしょうか。「赤くてかわいいから」「生でそのまま食べられるから」と考えれば、イチゴと同じでトマトも果物ではないでしょうか。「果物でも野菜でもどっちだっていいや」と思っている人もいるかも知れません。ところが、歴史上「トマトは野菜か果物か」について裁判で争われたことがあります。

 南北戦争(Civil War:1861年-1865年)が終わった19世紀末の1883年にアメリカ合衆国で、野菜の輸入に対して10%の関税(税関で徴収する税)をかけました。ただし、この法律では未熟、成熟、乾燥した果物は除外されました。また、法律には野菜とは何かが記載されていなかったので争いになりました。

 1886年の春に西インド諸島から輸入され、ニューヨークの港で徴収された関税に対して、1887年に訴訟が起こされました。トマトは果物なので支払った関税を返してほしいと訴えました。皆さんが裁判官ならどう判断しますか。

 長く野菜と果物で商売している二人の証人が呼ばれ意見を述べました。最初の証人は、貿易や商売上で、野菜と果物を分ける明確な定義はないと証言しました。もう一人の証人も、貿易上では野菜と果物は区別していないと証言しました。ただ、果物には種が入っていると理解していると答えました。次に、いくつかの辞書の定義が読み上げられました。ウエッブスター大辞書では、野菜として「キャベツ、カリフラワー、カブ、ジャガイモ、エンドウ豆、インゲン豆およびこれらと類似したもの」と列挙されていました。

 以上のように、証拠調べは簡単に終わったのですが、判決が出されたのは1893年でした。裁判官も悩んだことと思います。判決は次のようになりました。「訴状では、トマトは種を含んでおり、水分が多いので果物であるとして、税の返還を求めている。しかし、トマトは野菜から区別して果物であることを示す証拠はない。また、植物学的につる性植物に実るものを果物と定義していると原告は訴えているが同じつる性植物のキュウリやそら豆などは、一般的に野菜と考えられている。さらに、トマトは、ジャガイモやニンジン、キャベツ、セロリなどと同様にスープの中に入れたり、肉や魚と一緒に食べているので、デザートとして食べている果物とは異なる。」とし、トマトは果物ではなく野菜であるとの判決を下しました。

 皆さんは裁判官の意見に同意しますか。トマトは野菜か果物かみんなで討論してみましょう。また、どのように法律が作られていたらこの裁判は防げたかについても考えてみましょう。それから、本文中にある「ジャガイモは野菜」についても話し合ってみましょう。

【参考】 ウエッブスター(Webster dictonary)は、言語学者Noah Webser (1758-1843)が1828年に公刊した大辞書です。



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